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Naoko Kotaniguchi Official Blog

しんどいきもち

2021.10.10 13:18

ある日。

電車に乗っていると、おばあちゃんに連れられてお出かけといったふうの兄妹が乗ってこられたので、私のお尻を少し右に譲って、そしたら3人ゆっくり座れそうなスペースができました。

おばあちゃんとおぼしきご婦人が私に明るくお礼を言って私の横に座られ、その向こうに、妹がちょんと座って、お兄ちゃんとキャッキャと仲良さそうに戯れながら、お兄ちゃんは結局ひとまず妹の膝の上に座って、2人とも嬉しそうにしていました。

まだ足腰にも内臓にも全く心配の無さそうな元気なおばあちゃんと、小学校1年生くらいの妹と、3年生くらいのお兄ちゃん(すごく推定)。こんな時期は、ほんとに、ほんの一瞬だなぁ、一瞬で通り過ぎて二度と戻ってこない、愛おしいひと時だなぁ、と、全然関係ないのに勝手にしみじみしてしまいました。


ダフニスの、第1組曲の、アラブかアラビアみたいな変な音階(←適当!)に苦しんでいます笑。

やっぱり、長音階と旋律的短音階と和声的短音階だけじゃなくて、中近東みたいなやつやら沖縄みたいなやつやら色んな音階も若い頃から叩き込んでおかないといけなかったか、むむ!とか何とか思いながら、隙あらば何か便利な替え指がないかいなぁと探してみたり、替え指だと余計にこんがらがって諦めたりしながら、家族より友達よりメトロノームと仲良く過ごしているここしばらくです(つらい)。

マーラーやワーグナーをやってる間にダフニスを練習できる器用さが私にあったならば。いや無かった。ムキー!



***

ワクチンの話は、いろいろデリケートなので、こんなところではすまいと思っていたのですが、望む人にはそれほど困難でなく叶う(叶った)状況になった気がするので、書きます。

私は打ちました。先月、ブラームスの前と、ワーグナーの後に。


で。

8歳の姪が、彼女は私のちいさな親友なのですけれど、すごくすごく心配してくれたんです。打った後も、その夜も、次の日も、その次の日も。

小さいながら、わからないなりに、コロナのことも、ワクチンのことも、大人が話しているのを聞いたり、テレビのニュースが言っているのを聞いたりして、知って、たくさん感じているんだなぁと、改めて思いました。

幸い私の副反応は大したことがなくて、大丈夫だよ、もう何ともないよと言いながら、ほとんど普段と変わらずに過ごしていたのですが、別れ際に、


「なおこねぇちゃん」


と呼ばれて、なぁに?と答えたら、


「しんどいきもち、隠さんといてね。」


しんどいきもち、隠さんといてね。

しんどいきもち。

しんどいきもち、を、かくさない。


…ふいにかけられたその言葉にびっくりして、しばらく頭の中で反芻した後、じわっと涙が出ました。

あぁ、この子は、優しい子に育ったんだな。この子に、こんな優しい言葉をかけてくれる人が、きっといたんだろうな。そして、この子も、もう既に、こんなちいさな心に、静かに、しんどいきもちを隠したことがあるんだろうな…


しんどいきもち。

しんどいきもちは、誰かに話せたら、きっと少しだけ楽になれる。

しんどいきもちを話せる、聞いてもらえる誰かがいたら、それだけで救われる。

たいせつな人には、それを隠さないで教えてもらいたい。今、しんどいよって、言ってもらいたい。たいせつな人が、しんどいまま、それを隠して笑っているなんて、それを知らないままいるなんて、つらい。

しんどいきもちを、自分ひとりで抱えてしまわずに、優しい誰かに話してみることも出来るようになりたい。

誰かのしんどいきもちを、すこし引き受けられる自分でいたい。



『しんどいきもち、隠さんといてね。』


すごい言葉だと思いませんか。

私がもらったこの優しい言葉を、おすそ分けしたくて、書かないつもりだったワクチンのことを書きました。



(夜道で、影絵をして遊び始めたちいさな手)