保育の起源 保育を巡る今日的論考
2018年11月に出版された、保育の大切さを説かれる知の巨人「藤森平司」氏の著書です。
キンドル版で7,920円、印刷本は既にプレミアが付いてアマゾンでは24,800円(21年9月22日現在)からというとんでもなく凄い保育本です。
内容は藤森氏の教育保育理論をまとめるために、前半は人類学・民俗学・脳科学・住居学・社会学・心理学という様々な学問を保育と結びつけて考察されています。後半は発達や乳児保育、見守る保育など多岐にわたる専門的な切り口にて、保育に関する現代の課題と絡めて考察が続きます。まさに、保育を巡る今日的論考なのです。
ページをめくる度に押し寄せてくる知的興奮により、480ページの大作ですが、あっという間に読み終えることができます。
「保育とはあらゆるジャンルの叡智を一体的に取り込んだ総合芸術だと思っている」と言われています。改めて人の成長とは総合的なあらゆる要素が複雑に交わって促されるもので、保育関係者の高い専門性に気付かされます。保育に関わる方にはぜひ読んでいただきたい内容です。きっと今の自分の保育を考える上で、広範囲に思考をめぐらすことができて、明日のより良い保育につながっていくことでしょう。
専門家向けに書かれているように見えますが、最後に家庭での育児についても言及があります。親子の距離感や新しい学力についても詳しく書かれていますので、育児本としても読み応えがあり、秋の夜長におすすめの書物です。
株式会社くうねあ代表/堀江宗巨
◆藤森 平司(ふじもり へいじ、1949年-)
新宿せいが子ども園園長、(株)保育研究所ギビングツリー代表、新渡戸文化短期大学客員教授。本書を始め「21世紀型保育のススメ」「見守る保育」など著書多数。
◆保育の起源 保育を巡る今日的論考
「子どもは決して大人を小さくしたものではなく、大人より劣っているわけでもありません。子どもという存在そのものに意味があるのです。…」本書“はじめに”から抜粋。
「保育の起源 保育を巡る今日的論考」 藤森平司 著 世界文化社