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富士の高嶺から見渡せば

中国の海軍力増強の狙いは何か③

2017.04.06 06:40

<陸軍削減の一方で海軍力増強と近代化>

海軍陸戦隊は、もともと1950年代当時、国民党軍が押さえていた南部の島嶼を奪還するために創設された。従来は、中国沿岸エリアだけで活動し、人員や装備も劣っていたためその役割も限定的だった。対する台湾には、米軍に次いで世界第2の規模を誇る海兵隊(海軍陸戦隊)があり、その中には「蛙人(フロッグマン)」と呼ばれ獰猛、過酷な訓練で知られる特殊作戦部隊(水陸偵察部隊)があり、敵地での破壊工作や情報収集などに従事する。実は台湾の陸戦隊のほうが、実戦も訓練も格上だったのだが、近年、徴兵制から志願制への移行のなかで、人員規模は縮小傾向らしい。http://www.sankei.com/world/news/170113/wor1701130049-n1.html

習近平は30万人の兵力削減を公約しているが、削減されるのは地上戦を担う陸軍が中心で、海軍に関しては逆に現在23万5000人の兵力をさらに15%拡大すると消息筋の話としてSCMPは伝えている。その中で海軍陸戦隊は、台湾への侵略戦争、東シナ海や南シナ海の小島や環礁の略奪、軍事要塞化された人工島の防衛、さらには中国への物資の供給ルートとなるシーレーン・海上のライフラインの防衛、ジブチやグワダールなど海外の拠点や中国企業の権益確保、朝鮮半島有事や中国の安全保障にかかる事態への対処など、中共軍の海軍の役割、守備範囲は拡大の一途を辿っている。そして海軍が中共軍全体の中心を担う存在にもなっている。海軍力の拡大に伴い、より大規模な部隊をより遠方の戦場に展開できるようになった。

原油輸送ルートとなるペルシャ湾ホルムズ海峡に近いグワダールでは、中国の資金で港の建設が進み、中国企業によって港の管理運営が行われている。現在、中共軍は駐留していないが、将来的には海軍の艦船が定期的に寄港し・修理や点検でドック入りすることもあると見られている。中国企業と中国人労働者はパキスタンやアフガニスタンなどリスクの高い危険地域で活動している。グワダールに海軍陸戦隊が駐留するということは、原油輸送ルートのライフラインを守ると同時に、内陸地帯で中国人がらみの事件が起きた際には、救援・救出に対応できることを示す。

ところで、海軍の動きからは離れるが、アフガニスタンでは、中国人民解放軍の車両がわが物顔で動き待っているという情報(「選択」4月)や、中国の武装警察がアフガン軍と合同パトロールを開始し、テロリストの掃討に着手したという情報がある(楊海英「中国とアフガン軍が狙うウイグル人掃討作戦の脅威」Newsweek日本語版4・4)。

楊海英教授によると「ウイグル人は信教の自由を奪われ、女性は中国内地への人身売買で卑しい産業で働かされ、男たちはISISに出口を求めた。ISIS出現以前、ウイグル人はアフガンのイスラム原理主義勢力タリバンに希望を託し、肩を並べて戦った。タリバンの退潮に伴い、捕虜となったウイグル人は中国に強制送還され処刑された。NATOが軍を引き、米軍の駐留も不透明になった現在、中国は軍隊を越境させ、国連平和維持軍のマスクをかぶせようとしている。国連の看板を掲げて「反乱分子」ウイグル人を掃討しようとする意思の表れだ。」(引用終わり)。ISIS(イスラム国)は、ウイグル人を迫害する中共政権をターゲットにテロを起こし、あたりを「血の海にする」と脅す動画を、公開し、中国に対する聖戦を呼びかけた。(「ISISが中国にテロ予告」Newsweek日本語版2017/3/3)

アフガンで訓練を受けた新疆ウイグルの独立派が帰国し、テロを起こすことを中共は警戒している。中共軍が積極的に外に出ていく理由は、こんなところにもある。

(続く)