「NELLA NEBBIA DI MILANO」Bruno Munari
ブルーノ・ムナーリの絵本を手にとって開く時の、ワクワクする感じは他の絵本では味わえない気がします。
こちらはイタリアのグラフィックデザイナー/プロダクトデザイナーと言う肩書にとどまらず多彩な活動をし、デザイン/アートの境界を横断して素晴らしい仕事を幾つも残したムナーリの「NELLA NEBBIA DI MILANO」と言う絵本(イタリア語原書版)です。日本語版ではきりの中のサーカスと言うタイトルで出ていますね。
ムナーリのしかけ絵本の特徴は(それをしかけ絵本と言って良いのかはわかりませんが)「ページ」と言うものを効果的に使っていることだと思います。
あるページの切り抜かれた部分から次のページが覗き、それもあわせて絵が作られていたり、薄い紙が使われ次のページのイラストが薄っすらと見え、ページをめくるごとに(それは霧の中を歩いていくように)絵の中を進むことが出来たりと「アート」と言いたくなるような本を作っています。
ムナーリはこの「本」という物の基本的な仕組み、紙が重なって作られているものであるということ、そして紙をめくる毎に時間が進行していくという約束事、それらを意識し、効果的に利用しているのですね。
アート/デザインの境界についてはおそらく散々言及され、既に多くの方が書いているかとも思いますけれど、どちらも専門外で不勉強のためあまり知識がないので詳しく書くことが出来ません。
ですが個人的にはその要素のひとつとして「アート」と言うものは、その表現される媒体そのものの枠組み(その枠組みを形作っているコンテクスト)に言及する、というものがあると思っています。
表現物そのものがその表現ジャンルの枠組みを疑ったり、拡張したり、または強化したりするものが「アート」(それは「アート的」というべきかもしれませんが)と呼ばれるものの要素のひとつなのだと思っています。
だから先駆者は常に芸術家なのです。
ムナーリは「本の約束事」を意識的に捉え、それを自らの感性を持って美的にも高いレベルを保ったまま拡張し続けた芸術家でした。
この絵本はミラノの霧を通り、サーカスへ辿り着き、そしてまた霧の中を通って家路につくまでの物語が「本」というもので表されています。
ミラノの霧というと、須賀敦子さんの美しいエッセイが思い浮かびますね。須賀さんは霧の匂いについて書いていました。
私はミラノに住んだことがないので、わかりませんが、ミラノ出身であるこのムナーリの絵本からも、その霧の匂いはするのでしょうか。
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「NELLA NEBBIA DI MILANO」Bruno Munari
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