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とある冒険者の手記

V.ヴァルの一日

2021.10.17 09:06

夜が明けようとしている頃、ヴァルはラベンダーベッドにあるガウラ宅の近くの木の上で目を覚ます。

軽く伸びをし、木の葉を擦る音をさせ、地面に着地する。

まっすぐハウスの玄関へ向かうと、合鍵を使って中に入る。

そのままキッチンへと向かい、朝食を作り始めた。

と言うのも、ガウラの食事バランスがどうにも気になってしまい、作ることを申し出たのが始まりだった。

自炊はする様だが、料理が苦手な様で、ヴァルの目に余ったのだ。

調理を終え、テーブルに出来たものを並べて居ると、寝癖で爆発している頭を掻き、欠伸をしながらガウラが起きてきた。


「おはよー…」

「おはよう…、相変わらず凄い寝癖だな…」


今日も凄い寝癖に呆気に取られるヴァル。

そんなことは気にせず席につくガウラ。


「いただきます。いつも悪いね」

「好きでやってるんだ、気にする事はない」

「そうかい」


今朝のメニューは、スクランブルエッグにウィンナー、サラダにオニオンスープ。きつね色に焼けたトーストに、飲み物にミルク。

それを美味しそうに食すガウラは、口を開いた。


「いつも思ってるんだが、ヴァルは食べないのかい?」

「この食材はガウラが買ったものだろう」

「こっちが作って貰ってるんだ、気にせず自分の分も作ってくれていい。次から一緒に食べよう」


ガウラの言葉に「了解した」と簡単に返すヴァル。

食事を終え、ガウラが食器を片そうとするより早く、ヴァルが片付けを始める。


「今のうちに支度をしてきな」

「…食器ぐらいは洗わせておくれよ」

「いいから支度してきな。髪を整えるのに時間がかかるんだから」

「…わかったよ」


ヴァルの引かない姿勢に、ガウラは溜息を吐き、自室へと戻っていく。

食器を洗い、シンクも綺麗に拭きあげをしたヴァルは、ガウラの自室へと向かい、ノックする。


「入って大丈夫だよ」


中から聞こえた言葉に、扉を開けて入室する。

そこには洗顔と歯磨き、着替えを終えたガウラの姿。

ヴァルは、ガウラをドレッサーの前に座るよう促し、ヘアメイク用の道具を広げる。

スプレーを髪に吹き掛け、髪を痛めないように丁寧にブラッシングをしていく。


「そのスプレー凄いよな。寝癖が簡単に治まるもんな」

「プロも使用してる奴だからな」

「プロ仕様かい?!」

「あぁ、ヘアメイクの道具も化粧道具も、全部プロ仕様だ」

「はぁ…」


驚きを隠せないガウラに、黙々と作業をするヴァル。


「髪型はいつものでいいのか?」

「あぁ」


髪型を確認し、いつものポニーテールヘアを作っていく。

髪をセットし終わり、道具を片付けていると、ガウラが席を立とうとしていた。


「まだ終わってないぞ」

「…やっぱり化粧もするのかい」

「当たり前だ、若いうちに日焼けなんかの対策をしないと、歳をとった時に悲惨だぞ」

「…別に歳をとった時の事なんて…」


化粧をされる事に若干の抵抗を見せるが、大人しく席に戻るガウラ。

化粧道具を広げ、ヴァルはガウラにナチュラルメイクを施していく。

メイクを終え、ガウラは鏡を見て驚く。


「いつも思うけど、凄いな。化粧してないみたいだ…」

「ナチュラルメイクだからな。普段化粧をしてなかった人間が、いきなり化粧をするようになったら、何かと詮索されて面倒だろ?」

「確かに…」


鏡をまじまじと見るガウラを尻目に、メイク道具を片付けるヴァル。

そして、ガウラは「よし!」と立ち上がった。


「じゃあ、そろそろ出るよ」

「ちょっと待て、スカーフがおかしい」


言って、スカーフを直し始めるヴァル。


「これぐらい、いいじゃないか…どうせ戦ってる間に形は崩れてくんだし」

「身だしなみはしっかりしろっ!」

「………」


何故かヴァルの言葉に逆らえず、押し黙るガウラ。


「よし、直ったぞ」

「…ありがとう」


ガウラは白金の弓を背負い、玄関へと向かう。

ヴァルもその後を追う。

庭に出た所でガウラはヴァルに向き直る。


「行ってくる…って言っても、ヴァルは影から見てるんだっけか」

「あぁ。お前を守るのが仕事だからな、今日も無茶はしてくれるなよ?」

「ははっ、肝に銘じておくよ」


そう言って、ガウラはその場を立ち去る。

ヴァルは忍び装束にミラプリを変え、ガウラの後を追う。

そして、ガウラが危険な時は周りに気付かれないように助けに入る。

ガウラが戦闘に加わる度にそれを繰り返し、あっという間に夜になる。

その日は外で夕飯を摂ったガウラが自宅に入るのを見届け、家の明かりが消えるまで木の上で辺りに神経を配る。

明かりが消えるのを確認すると、今日一日の報告書を書き、ハヤテの足に括り付け、里へと飛ばす。

そして、ヴァルは木の上で目を閉じ、眠りにつくのだった。