#130.教則本という「道具」 その1
みなさんは教則本、使っていますか?
吹奏楽部の方は、いわゆる「バンド教本」と言われるものを使って「基礎合奏」をしているところが多いかと思います。3Dバンドブックとか、JBCバンドスタディとか、そうしたものです。
また、個人レッスンを受けている方や、音大を目指す方、音大生の方などはその楽器に特化した教則本を使用することも多いことでしょう。トランペットでは、やはり最初に思い浮かぶのは「アーバン金管教則本」でしょうか。それ以外にも国内外からとても多くの教則本が出版されています。
さて、この教則本ですが、みなさんはどのように使っていますか?
何気ない一言で気づかされた
ずっと昔、僕が確かまだ高校生だった頃だったと思います。耳にした一言で僕の教則本に対する考え方が変わる瞬間がありました。それは、
「〇〇教本?ああ、それだったらもう最初から最後まで全部音出したから次の教本に入ったよ」
という言葉です。
補足すると、レッスンなどで使ったのではなく、個人的に教則本を計算ドリルのように最初から順番にとにかく全部音出しした(だけ)、ということを得意げに話していて、しかもそれで終わりにしてしまい、次の教本をまた最初から順番に音出ししていたようですが、残念ながら教則本を使ったことによる成長は見られませんでした。通せていませんでしたし。
もはやこれは楽譜チェックをしたにすぎず、教則本の使い方としては完全に間違っています。
教則本は「道具」である
料理をしたり、何かを修理したり、そうした行為に道具は欠かせません。
音楽の場合「上達」における欠かせない道具とは教則本です。
教則本を使うにあたり、まず理解しておきたいのは、何かの道具を使い方を理解せずに用いても意味がないのと同様、「教則本を吹いただけでは上達などしない」ということです。
そして「上達」をさらに分けると、「できないことをできるようにする」行為と「クオリティを高める」ことの2つに分けられます。どちらであれ、あなたの今の目的を明確にした上で、それではどのような教則本のどの部分を「道具」として使用するかを決める必要があります。
ということは、それぞれの教則本がどのような趣旨で書かれているのか、作者の意図などを理解していなければ、どの部分を使えばいいのかも見当がつかないわけです。
道具の使い方を理解し、それを目的に応じて的確に使用する。これが重要なのです。
基礎練習というのはできないことをできるようにするとか、よりクオリティの高い演奏ができるようにするために行うものであり、そうした下準備から、どのような楽曲でも演奏できるようにすることが目的です。したがって、基礎練習→楽曲の構図が必ず繋がっているようにしましょう。基礎練習だけで満足したり完結しては大変もったいないのです。
ということで、今回はここまでとします。次回も教則本についてのお話をしますので、ぜひご覧ください。
それではまた来週!
荻原明(おぎわらあきら)
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