「MOTHER GOOSE」ARTHUR RACKHAM
本日はアーサー・ラッカムによるマザー・グース本が入荷しております。
ラッカムの名前はこちらでももう何度も挙げておりますが、20世紀初頭の英国における挿絵絵本の黄金時代を代表する作家で、今なおたくさんの作家に影響を与え続けています。
絵本、と言ってもラッカムの美しい妖艶さは暗かったり怖かったりと、子どもにはあまり好まれないかもしれません。しかし、先日のイベントでもお子さんがトロルが好きだとお話ししてくださった方がおりましたので、かえって怖いもの、不気味なものだからこそ惹かれるということもあるのでしょうね。
ラッカムの影響を色濃く受けた現代のオーストリアの作家リスベート・ツヴェルガー(以前ピノッキオをご紹介しましたね)も、自身の絵に行き詰まったときにラッカムの絵を見て、大人に向けた絵本があってもいいんだとひとつの転機となったと記事で読んだことがあります。
ラッカムが挿絵を描いてきたシェイクスピア『夏の夜の夢』や例えばルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』であっても、限定はできませんが、どこか大人向きという印象が強いように思います。
しかし、もちろん絵本の挿絵画家ですので、子ども向けのお話にもたくさん絵を描いています。イソップ寓話やピーターパン、そしてこのマザー・グースなどがそうです。
ラッカム自身が、どれほど対象に向けての描き分けをしていたかは定かではありませんが、この本は明らかに子どもが手に取ることを意識しているように思います。それは、ページの節々に愛らしいシルエット(オンラインストアで写真をご覧になってください)が散りばめられており、すべてのページで彼の絵が楽しめるようになっていることからも伺えるのではないでしょうか?
美しいばかりに、子どもに見せて破られたくないと思ったり、まだ早いと遠ざけてしまうのは、子どもを持つ親にとって当然の心理だ思います。本が好きなら尚更です。けれど、始めから子どもの目の届かない場所へ置いてしまうのではなく、美しいもの、不気味なもの、怖いもの、どんな風に感じるのかを任せてみるのもいいのかもしれませんね。この本を見ると、ラッカムの子どもへ向けた眼差しが感じられ、そんな風に応えてみたくなるのです。
以前はこの本のペーパーバック版(英語)の在庫があったのですが、今回のものはハードカバー版(英語)と日本語版(訳はなんと寺山修司さんです!)もあわせて入荷しております。
ともに1980年代の刷の、比較的新しく状態の良いものですが、古本の趣きも出てきており、自分へのちょっとしたギフトになるような作りです。愛蔵版としてお手元に置いてみてはいかがでしょうか?
当店在庫はこちらです。
「MOTHER GOOSE」ARTHUR RACKHAM
「マザー・グース」アーサー・ラッカム 絵 寺山修司 訳