『とっととくたばれ』
ロシアの暴力映画の時間だよ!
ロシアの映画と言えば「とりあえず戦争がしたい」と「純粋無垢に暴力を振るう」の二択だと思っている俺だけれども(それはきみが好きなジャンルを食ってるだけでは? と言われたらそうですとしか言いようがないですが)。今回の映画は後者である。
彼女に父親を殺して欲しいとお願いされた主人公が金槌片手に殺しに行ったんだけど、親父は悪徳警官だったので返り討ちにあう。
殴って蹴って宙を舞い、金槌で後頭部をかち割り、キンタマを潰そうとする乱闘の結果主人公は負けるんだけど、この主人公……妙に……固いぞ……?
殴られても蹴られても宙を舞っても銃で撃たれても足をドリルで抉られても心臓が止まっても死なない。話のオチを見届けるまでは絶対に殺さないぞという監督の意志のもと全身血だらけサンドバッグになりながら、周りが勝手に死んでいく様を眺めていく、よくよく考えたらただただ妙に生命力があって頑丈な男が血みどろ家族模様になんか巻き込まれちゃった話。ちなみに悪徳警官も頑丈で後頭部に穴が空いても生きてるし、悪徳警官の友達もショットガンに撃たれて宙を舞い、腹から血と臓をべろべろ垂れ流しても生きてるよ(ちょっと経って死んだけど)。
なんまんだぶなんまんだぶ恐ろしや恐ろしや、やれやれ酷い目にあったぜと帰って行く主人公が一番死にかけている。でも死なないくたばらなーい。とっととくたばらないのは主人公だったのである。
読み味は平山夢明の短編。暴力と笑いと奇妙さが軽妙なノリで噛み合って、ひたすらに暴力に巻き込まれる。ロシア映画は音楽と「絵面の良さ」に執着している部分もあって、芸術的に見せてやろうという思惑が全体的にあって、この映画の絵の見せ方もかなりグッドだったよ。エンディングの曲も良いので聞いて帰ってください