赤い額のサンプラー
赤い額のサンプラー(約31センチ四方)、イギリス1830〜40年頃。イギリス中流以上の家庭のお嬢さんが刺繍の練習の為に製作したこういった物をサンプラーと言います。イギリスのアンティークのジャンルでは可成りマニアックとでも言いますか、狭いものに入りますし結構高価な物です。昔はサンプラーを専門に扱うアンティークショップなんかも少しはありましたが、今はイギリスでもフェアーなどでサンプラー専門の年配のディーラーが出店してるのを極偶に見かける程度です。僕はイギリスを彷徨いているときに、ピンとくるサンプラーを見掛けると仕入れるようにしています。これは五年位前にイギリス北西部のカーライルで仕入れました。額に傷があったりしたのですが、額の色と全体の雰囲気に惹かれロンドンまで電車で持って帰りました。額の傷は補修しました、ご心配なく。
金沢には全国から美食を求めて色んな人がやって来ます。今は料亭よりもこじんまりとしたオーナーが直接包丁握る懐石料理屋や鮨屋が人気です。人気で予約が取れないところもありますし、銀座並みの料金のところも若干あります。そんなところに全身ヴィトンで身を包み、勿論靴もヴィトンで食べに来る輩がいると、聞きました。全身ヴィトンで美食三昧。変ですね、違和感あります。本当に料理、器を楽しむために来ていると言うより、ステータスの故、認証欲求の為に大金を使う。それはもう精魂込めて作られたお料理を楽しんで頂く、というところからは離れた別物でしょう。変です。
アンティーク、骨董もステータスの為に買う奴はいます。女性より男に多い気がします。本当に古い物が好きじゃないんですね。素敵なアンティークを有名なアンティークショップで買っている自分が好きなんです。とんだ勘違いの気持ち悪い世界です。そんな輩は目を見れば判りますよ大体、目が虚ろですから。ただ何の世界でもこの I love me な輩たちが一定数いてマーケットとして成立している。ハルキ文学もそれに近い匂いしますしね。オシャレ・アンティークなんかもそう、I love me なんです。僕の店が余り流行らないのはこのマーケットとは意識的に距離を置いてるから。だから流行らない。でもそれでいいんです本当に。虚ろな目で全身黒い服着て黒丸眼鏡掛けスリップウェアなどを求める男が来るくらいなら、鋭い目付きのタトゥーがバーンと入った男が変な指輪探しに来るほうが六百倍面白いです!