【報告】セミのぬけがらさがし2021
セミのぬけがらを調べることから地域の環境を知ろうと、今年初めてのセミのぬけがら調査を行いました。
■ぬけがらを探し集め、何種類のセミがどのくらいいるか調べています。
■セミは地域の環境を調べるモノサシ(指標生物)です。
■セミは環境変化の影響を受けやすく、また、種類によって好きな環境が違います。分布を調べることで自然環境の特徴が分かり、継続的に調査することで自然の変化も分かります。
全3回の調査を予定していましたが、新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、第1回調査(7/31)のみ行い、2回目は事務局と講師の山田先生の3名で行いました。
第1回目の調査報告はこちらのページをご覧ください。
2回の調査結果を下記の表にまとめました。
【講師の山田先生による考察】
今回の調査結果について
「明るい場所だったのにも関わらずヒグラシが多かったこと」が大発見である。経験上、ヒグラシはスギ・ヒノキなどの暗い林に多い。今回の調査地は針葉樹林がすぐ横にあるとはいえ、明るい林だった。
5種類のセミが見つかった。この調査地はセミにとって生息に適した典型的な場所である。大事にした方がいい。
今回の結果の性比は、アブラゼミ、ツクツクボウシ、ヒグラシは1:1とみなして良い。この結果は予想通りだ。一般的にはセミはオスが早い時期に羽化し、メスが遅れて羽化し、結果的に性比が1:1になる。
今後の調査の可能性について
今回の調査地には、標高・樹相的にハルゼミ、チッチゼミ、エゾゼミが生息している可能性がある。羽化の時期に調査することが望ましい。
ハルゼミは、下伊那から最初にいなくなるのではないかと考えている。
ハルゼミはアカマツに生息する。アカマツは近年松枯れ対策で薬剤処理や伐採されることが増えており、ハルゼミの生息数に影響が出てくると考えている。
浪合にはエゾハルゼミがいるはず。伍和と浪合を調査し、ハルゼミとエゾハルゼミの境界を探す調査をしたらおもしろいと思う。継続的かつ標高を加味した調査を行ってほしい。
飯田市美術博物館研究員・四方氏の報告によると、今年、飯田市内で行った調査でアブラゼミは果樹園で数が減り、山では変わらなかった。四方氏は果樹園で数が減ったのはネオニコチノイド系農薬の影響ではないか、と報告している。果樹園での調査も重要だ。
セミのぬけがら調査は継続が必要。自然は徐々に変化していくものであり、その変化にセミがどう対応していくかが見えてくる。
〈調査地:阿智村 伍和地区・大鹿〉