『ラストレースへの想い』神山幸成
10月28日(木)〜31日(日)にインカレ・全日本が開催されます。コロナウイルス感染拡大防止のため、無観客試合での開催となりますが、熱い応援を宜しくお願い致します。
そこで、レースへの想いを4年生に書いていただきました。
今回の担当は、神山幸成(先理・早大学院=東京)です。是非、ご一読ください。
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「感謝」
学院ボート部時代からの後輩に「ブログに何書いてほしい?」と訊いてみたら、「学院から7年間のボート生活を振り返ってみてほしいです」という答えが返ってきた。恐ろしく長くなりそうな気がするが、もう己の率直な気持ちをこのような形で表明することはないだろう。だから恥を忍んで思い切って書いてみることにする。
とにかく、早稲田で勝ちたい。これに執着した7年間であった。エンジに塗られたオールでゴールラインを一番に切ることをずっと夢見てきた。学院での3年間は漕手として、そして大学での4年間はマネージャーとして。でも、私がボートを続ける理由が「勝ちたい」の4文字だけではなくなってきていることに最近気づいた。
早稲田でボートに打ち込む仲間の「勝ちたい」という気持ちを叶えるために自分の力を使いたい。早稲田のボートを通じて出会いお世話になった人たちに行動で「感謝」を伝えたい、と。
正直、勝つことは容易なことじゃない。自分が幼かった頃、学校の先生はよく「努力は報われる」という言葉を使っていた。もしそれが正しければ、全てのクルーが1着でゴールしなければおかしいし、全員が金メダルを獲得していなければならないはずだ。でも実際にはそんなことはあり得ないとみんな知っている。そう、努力をしたところで、周りよりも弱ければ勝つことはできないのだ。だからレースで負けたり、思い通りの結果が出なかったりしたとき、それまでの努力は否定され、自分は相手よりも弱かったというストレートな現実を突き付けられる。学院時代に経験したレースで味わった自己嫌悪と無力感を今でも昨日のことのように思い出すことができる。そしてそれは、大学漕艇部に入ってからも同じだった。今までの努力が正しくなかったと思い知った回数は数えきれない。そしてそのたびに、何のためにボートを続けているのか分からなくなってしまった。
でも周りは決して、そんな私を見放したりはしなかった。どんなに腐っていても、どんなに弱音を吐き散らしても、「やっぱり早稲田で勝ちたいな」と思えるようになるまで私を支えてくれた。先輩、後輩、監督やコーチ、OBOG、高校時代のクラスメート、研究室の先生やメンバー、家族、そして同期。みんなの存在があって私は何度だって立ち直ることができたし、7年間早稲田でボートを続けることができた。そしてその過程で、自分ひとりの力で勝とうと思う必要はなくて、同じ「勝ちたい」という気持ちをもった仲間と力を合わせることが尊いのだと気づけた。大学受験をする必要がなく好きなことを好きなだけできる7年間が保証されていただけに、何もせずに空虚に過ごしてしまうこともあり得たはずだ。だからこそ、学院に入学してボートと出会えたこと、ボートを通じてここまで尊敬できる人たちと出会えたこと、そしてそんな人たちから支えてもらって貴重な学びを得られたことには「感謝」の念しかない。
今年こそは学院ボート部時代からの「勝ちたい」を成就させたい。でも、叶えたいことはそれだけではない。今まで早稲田でボートを通じて出会い、支えてくれた全ての人々の「勝ちたい」を叶えるために全力を尽くしたい。たくさんの人から支えられてきた分、今度は私がマネージャーとしてチームを支えて、お世話になった人々に「感謝」の気持ちを伝えたいと思います。