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yoyo

梅田

2021.10.23 13:51

紙マーケットへ行くのに梅田に降り立つ。久しぶりにグランフロントへ寄る。全面ガラス張りのビル群は梅田の代名詞だと思う。テナントとテナントのあいだ、細長く切り取られた窓から旧貨物駅跡地が見えた。開発は既に始まっているらしいけれども、ざらざらした土地に重機がいるだけだった。ガラスとガラスが反射して更地に光を注ぐのをその内側から見ていた。


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紙マーケットは予約制でゆったり見れてよかった。グッドモーニングペーパー20枚、薄ハトロン紙とハトロン紙100枚入りをそれぞれ買う。これでコピー本を作るのだ。今までこういう文具博的なものに行っても、あれこれ欲しくなって、でも使うこともないしな…と思い直し、気持ちが宙ぶらりんなまま帰っていたので、目的を持って買い物できたのがなんだか嬉しかった。まあなくても全然いいんだけど。いつか本を作りたいな〜と思っていたのが今現実になっていることが嬉しかったのかもしれない。かわいいフライヤーも沢山もらって帰る。


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帰りは梅田まで歩いて帰る。中津は学生時代にインターンシップで通っていた場所だ。社会人になってスタジオに入っていた中崎町も遠くに見えた。久しぶりに降りてみようと御堂筋線の中津駅へ下ると構内は綺麗になっていて、前はどうだったか思い出せなかった。しかし更地になっても思い出は地層になって私の目の前に立ち上がる。ここに通っていた頃、聴いていた音楽をすぐに取り出せてしまうこと自体に時の隔たりを感じつつ、汽空域を流す。


地上は更地になっても、記憶は化石になって土地に眠っていて、上空を全面ガラス張りのビルたちが合わせ鏡になって光を反射している。その光が再開発地を照らしている様はとても梅田的だったなと、久しぶりに詠みたい、詠めそうだなと思ったけれども、整わなかった。


“悩んで、僕らはまた知らない場所を知らないようになる、疲れを忘れて”。


整わなくても、なんならこんな風に言葉にしなくても、私たちの日常はそれだけで十分なものなのだと、化石であればそれでいいのだということを噛み締めながら、地下鉄から阪急まで人と人のあいだをかい潜りながら梅田の地下を早足で歩いた。