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スポーツちょっといい話 ~ 還暦野球オヤジのスポーツ・コラム~

首長のリーダーシップ~阿南市に学ぶ~

2017.04.16 05:28

 日本一の野球の町・阿南市(徳島県)を訪問した。四国とはいえ寒さが残る2月10日(金)の事だった。「野球のまち推進課」なるものが存在し、モンゴルの野球場建設や東京六大学野球オールスター戦、あるいは還暦・古希野球大会など、青少年から中高年までの野球イベントを幅広く実施している姿を学ぼうと思ったのだった。

 阿南市出身の元巨人投手・水野氏(池田高校卒)のユニフォームなどが展示された廊下を通り推進課へ入ると4名の職員が快く迎えてくれた。初代の名物課長・田上重之さんの説明を受けた。

 岩浅市長は元軟式野球協会の会長。市長と二人三脚で「3年やってだめならやめればいいいや」と腹をくくって野球による町おこし、地域活性化に取り組んできたという。マスコミが注目し、多くの人たちが阿南を訪れることで市民の意識も変わってきた。旅館、ホテル、居酒屋まで潤う活性化事業。今では年間1億円の事業となっている。

 平成19年の5月には四国一の野球場、「アグリあなんスタジアム」(中堅122m両翼100m)を完成させ、2年前には屋内の多目的運動場「あななんアリーナ」を併設した。どちらも見学させていただいたが、立派な施設だった。

 各種野球大会実施の際にはチアリーディング・チーム「ABO60」が花を添えるという。それは何と年齢がオーバー60の女性たちのグループなのだ。「担当課の仕事だろう」いや「それは市民の一部が反対するから」と、おせおせになったりすべて平等にと考慮する中で事が進まないのが行政ではないのか。そう思っていたが、阿南市の首長をはじめ役所の皆さんのリーダーシップや協力が「日本一の野球のまち」を創りだした。

 廊下の階段に杉浦投手(元南海ホークス・殿堂入り)のパネルが飾られている。市との縁を聞くと何もない。大阪府堺市に住む杉浦選手のご遺族が自ら展示を願われたのだ。「私どもの所においているより野球のまち阿南市にお預けする方がお役に立てるでしょう」との意思だった。

 全国各地の行政関係者、元阪神監督・岡田氏の訪問など、阿南市を訪れる人たちは多い。推進課や廊下には、イチロー選手や合宿に訪れる高校野球部のユニフォームなど、貴重な品々が展示され、その場にたたずむだけで身が引き締まる思いになる。

 どの街、どこの市でも取り組めそうで出来ない壁、それは意を決する「首長のリーダーシップ」の差ではないのか。徳島大学横の古びた店で「釜揚げうどん」を食べながらそんなことを考えた。