コマとフリースタイル ~フリースタイルコマの現状と今後を考える~
皆さんこんにちは。JTTFです。
いつもと違う、なんか硬めのタイトルでびっくりした方もいるかもしれません。
今回はちょっと真面目に(ちょっとだけですよ)、コマという競技とフリースタイルについて、ある動画を見ながら考えていきたいと思います。
では、早速こちらの動画を一度ご覧ください。
動画撮影:ソレイユ翼氏
使用ビート:DJ Fappo氏
こちらの動画は、我らがJTTF代表Jun Shimamuraが、東京で行われた「FREESTYLE SPACE」というイベントに出場した際のものです。
このイベントは、様々なジャンルの選手が音楽に合わせてバトルし、頂点を決めるというものです。イメージとしては、ダンスバトルの「何でもありver.」みたいな理解でいいと思います。
Junは、このイベントに、コマプレイヤーとして初めて出場しました。 出場するに至った経緯などについては、Jun本人のブログで詳しく紹介されています。気になる方はこちらをご覧ください。
さてそれでは今回の本題に入っていきます。 コマは他の競技と比べ、プレイヤー人口が少なく、技も成熟されていません。 今回は、Junの「FREESTYLE SPACE」出場動画を考察し、他の競技と比較したりして、今のコマがフリースタイルの世界でも通用するために必要なことについて考えます。
先程の動画の先攻・Junの相手は、ディアボロプレイヤー「青空ノート」さん。 スピーディーさとアクロバティックな魅力たっぷりのディアボロパフォーマーです。
そして、このバトルは、Junは負けました。
記事作成者のなおなりが動画を見てまず思ったことは「おっ、Jun、結構会場盛り上げてるじゃん」ということでした。 コマは本体も動きも小さいため、見た目が地味になりがちですが、観客に技の難易度の高さが伝わっているように感じました。
そして、強風の中でもJunはきっちり技を、”観客を意識しながら”決めています。これはJunのスキルの高さが現れていると言えるでしょう。
っと、ここまでJunを褒めてきました。 ただ、褒めっぱなしというわけにもいきません。まだまだコマには、そしてJunには改善できる要素がいっぱいあると思います。それについて、ワタクシなおなりの意見(あくまでなおなりの1意見です)を書いていきます。
(ここからは、Junの演技について、悪い言い方をすれば「ケチをつけて」いきます。しかし、Junは間違いなく日本のコマのトッププレイヤーのうちの一人であり、Junの演技に足りないものは、現在のコマ界に足りないものであると思います。これ以降の意見は、Jun個人の演技に対してではなく、現在のコマ界全体に対しての意見です。そして、この意見は記事作成者なおなりの個人的な見解です。この2点にご留意いただき、これ以降をお読みください)
①投げ出しのバリエーションが欲しい
突然ですが、皆さんは、コマの投げ出しのバリエーションをいくつ持っていますか? たくさん持っている人は少ないと思います。コマは、技はたくさんあるが、投げ出しの種類は少ないです。コマはディアボロと違い回転を長時間保てず、加速も難しいため、演技中に投げ出しを行うことになると思います。 Junの動画を見ると、2回のフローで、技は全く違うすごい技をやっているのですが、投げ出しは全く同じです。
ちなみにディアボロにはたくさんのスタート方法があり、大会では様々な方法でディアボロを始める選手を見ることが出来ます。(ただし、この動画の「青空ノート」さんはフロー中にディアボロをスタートさせることはありませんでした) 投げ出しのレパートリーや、投げ出し時の動きに工夫を加えることで、より変化に富んだ「面白い」演技が出来るのではないかと思います。
②難易度の高い技=盛り上がる技 ではないということ
Junのフローのうち、一番難易度の高い技はどれだったでしょうか? あくまでなおなりの私見ですが、強風であった当日のコンディションを考慮すると、ちょんがけルーティンでミスしたあとのゼロスタート(コマが止まった状態から手で回転をかけて紐でコマを回す技)だと思います。
では、Junのフローのうち、一番盛り上がった技はどれでしょうか。 これも動画を見たなおなりの私見ですが、二回目のフローの一番初めの「へび」だと思います。
この様に、技の難易度と、実際の盛り上がりは異なります。 「FREESTYLE SPACE」のようにコマをよく知らない人が見る演技では、単純な技の難易度だけでなく、観客ウケを気にして披露する技を考えなければいけないのだと感じます。
③スピード感をどうするか
現段階のコマでは、他の競技のようなスピート感を出すことは出来ません。コマで、ディアボロや、ヨーヨーや、けん玉のように、目が追いつかないくらいの早技で盛り上げるということは、現段階では不可能ではないかと思います(コマの技術が進化して、いずれ出来る時が来ると信じています)。
スピード感を出せないコマの特徴をどの様にフリースタイルに用いるか、難しいです。
動画を見ると、Junは、手のせコンボなどはできるだけ速い動きを行い、へびなどはゆったり行って、緩急をつけようとしていたように思います。
ただ、もともと速い動きの苦手なコマで緩急をつけても、他の競技と比べるとそこまで演技にメリハリが生まれないのではないかとも思います。
出来る限り緩急をつけて演技にメリハリを出す方法もありますし、あえてスローなペースを作り、そのペースを崩さずに演技を通すという方法もあります。 どちらがフリースタイル大会ウケするのかは、現段階ではなおなりも分からないです…。
④他の競技にある動き・似た動きを演技に取り入れるべきか否か
Junの演技では、ちょんがけのルーティンが入っていました。しかし、ディアボロやオフストリングスヨーヨーのプレイヤーからすると、ちょんがけは「リキャプチャー(技名)を繰り返しているだけ」と受け取られてしまうことが考えられます。 実際にはちょんがけは、回転をつけたり、角度を調節したりと、ディアボロのリキャプチャーより高い技術が必要になるのですが、動きが似ていると難易度が実際よりも低く受け取られてしまう可能性があります。
Junはコマで「かまいたち」の片側のみの動きを行っていたのですが、これもディアボロの「サン」という初級の技と動きが同じのため、難易度が伝わっていないように感じました。
もちろん、フリースタイルの大会では、難易度だけではなく、それを含めた「演技全体のすごさ」が問われるわけなのですが、コマがスキルトイである以上、難易度は「演技全体のすごさ」の重要な部分を占めていると思います。
コマにはコマ独自の動きも存在します(へびなど)。また、ディアボロやオフストリングスヨーヨーで行うと難しい技を比較的簡単に行うことも出来ます(よこむちなど)。観客がコマプレイヤーでない場合は、そのことを想定して、観客が盛り上がる・観客に難しさが伝わる技を披露すると良いのかなと思います。
ただし、これはコマが観客にあまり知られていないという現状を踏まえてのことです。フリースタイルコマがもっと普及して、観客がコマの動きを知るようになったら、コマ独自の動きばかり披露しても意味がありません。
っと、つらつらと書きたいことを書き連ねていったら、こんな分量になってしまいました。ここまでたどり着いた人、どれだけいるんだろう?
長くなってしまい、ごめんなさい。
とにかく、Junの「FREESTYLE SPACE」出場は、ストリートカルチャーにコマの存在を知ってもらえたという意味で大きな意味があると思います。
出場したJun、お疲れさまでした!
長々とフリースタイルコマについてお伝えしてきましたが、コマの楽しみ方はフリースタイルだけではなく、技の精度を高めたり、新技の開発をしたり、長回し競争をしたりと様々です。
フリースタイルだけではなく、多岐にわたってコマが楽しまれる様になると良いなと思っているなおなりなのでした。