ワイアット・アープ
「OK牧場の血闘」から17年。シアトル号で3人目の妻ジョージとともに
アラスカ鉱山へと向かう、西部開拓史・伝説のヒーローの晩年だった。
●今回紹介する船が出てくる映画
Wyatt Earp
1994年公開 アメリカ映画
●あらすじ
西部開拓史に残る有名な保安官ワイアット・アープ。数々の決闘で1回も拳銃の弾に当たらず、不死身を通した強運の持ち主だ。 1848年3月19日アメリカ・イリノイ州マンマスで生まれ、1929年1月13日カルフォルニアで80才で生涯を終える。この映画は、西部劇の伝説的ヒーロー、ワイアット・アープの生涯を一つずつ丁寧に描き、今までのアープものとは全く異なる人間ドラマとなっている。
物語は、ワイアップ・アープの家出から始まる。とうもろこし畑で逃げ隠れしているところを、父親に見つかり、家に連れ戻される。ワイアット・アープの父親は、「家族の血だけが頼りだ。家族はいつもいっしょだ」が口癖の弁護士だ。「世の中には悪いやつらがあふれているから、悪と戦うのなら、法律でもってするかそれとも殺すかだ、殺すなら必ず最初に撃ち、必ず殺せ」と息子たちに教えて育てた。
●ここに注目!
長い! 3時間10分。
不名誉! 第15回ゴールデン・ラズベリー賞受賞。
これは、毎年、アカデミー賞授賞式の前夜に「最低」の映画を選んで表彰されるもので、別名、ラジー賞。Razzieは「あざ笑う、やじる」の意のrazzをもとにした造語だ。
・・・と、色々と悪名(?)高いこの作品。ケビン・コスナー製作&主演で、よくわかんないけれど、ケビン・コスナーっぽいなーっと思わせてくれる。
「噂はあてにならない。真実と逆のこともある。それに美化されている場合も多い」みたいな意味のセリフがチョイチョイある。「80歳まで生きていたら」とアープが亡くなった年齢もチョイチョイとセリフに入る。伝記映画みたいな仕上がりは、伝説の正義のヒーローの、黒歴史も包み隠さず正直に描いてくれている。
真面目だけど、やんちゃで、女たらしなアープだったが、冒険する勇気がある女性ジョージーと出会ったことで、投資家として成功していく。彼女の素晴らしい手綱さばきがあったからこそ、現在のワイアット・アープ像があると言えるだろう。
ともあれ、西部開拓時代のワイアップ・アープの人生を丁寧に描き、3時間越えしてしまった。
以下に、ワイアップ・アープの人生を簡単に書き留めておく。参考になれば幸い。映画で描かれていないもの、描かれているけれど抜けているものなどもあるけど、そこはお許しを。
アメリカ・イリノイ州マンマスで生まれる
兵士に志願するが、弁護士の父親に止められる
カリフォルニアに家族一家で移住
ミズーリ州ラマールで法律を学ぶ
駅馬車の御者になる
鉄道工事現場で働く
賭けボクシングのレフリーになる
カンザス州ウイチタで警察官になる
妊娠中の婚約者ウリラが腸チフスで死去
金銭問題で2回訴えられる
逮捕され44ドルの罰金を払う
アーカンソー州で馬泥棒で逮捕される
死刑宣告が出る
父親の協力で脱獄
カンザス州でバッファローハンターになる
ギャンビラーにもなる
禁酒する
ウイチタで喧嘩を止め、保安官補になる
ダッジシティに引抜き、副保安官になる
兼業で、売春宿や酒場も経営する
娼婦マティと知り合う
取り締まりが厳しすぎて解任される
ドク・ホリディと知り合う
アリゾナ州トゥームストーンで保安官補に就任
踊り子ジョージーと知り合う
OKコラルの決闘(1881年10月26日)
17年後、妻ジョージーとシアトル号でアラスカへ向かう
不動産投資でホテルや酒場、賭博場経営など転々したアープは、晩年、ロスに移り住む。そして、当時トゥームストーンにいた知り合いのカウボーイ達に会いに、映画スタジオに遊びに行った。そこで出会ったのが、若き日のジョン・フォード監督。その頃は進行係助手で、仕事といえば、関係者のためにイスとコーヒーを運んだり、時には話し相手にもなったり。本物のガンマンの話は、西部劇映画作りにおいて、大いに役立ったことだろう。ジョン・フォード監督はアープから直接聞く当時の話に深く感銘。のちに映画「OK牧場の決闘」を製作し、ワイアット・アープの名を世界的に有名にしていった。米国にとって「OK牧場の決闘」の物語は、日本における「忠臣蔵」に相当する国民的ストーリーだという。
80歳で、妻ジョージーに看取られながら死去(1929年)。死因は膀胱炎だった。
おまけ話だが、
「ワイアット・アープ」の名前が使われているものを紹介しよう。
1919年進水、元ノルウェー木造貨物船、元オーストラリア海軍所属の船。
スマートフォン向けのゲームアプリ「モンスターストライク(モンスタ)」のキャラクター。
2000年2月14日生まれの競争馬。
●ここに船が登場!
映画のラスト・シーンは、アラスカに向かう船「シアトル号」の船上。ゴールドラッシュで金鉱を目指す人々の中で、身なりが整った熟年夫婦が仲良さそうに話している。彼らは、ワイアット・アープと妻ジョージーだった。彼は、鉱山を2つほど買い、一山当てようと考えていた。