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ぶっけん FOCUS

沼垂西の長屋がリノベで再生!

2017.03.25 02:00

インターネットの大手賃貸情報サイトは、今や賃貸住宅を探している人にとって欠かせないものとなっています。家賃やエリアや諸条件を選べば、希望の条件の賃貸物件が簡単に一括検索できるからです。

しかし、そんな便利な大手賃貸情報サイトに欠けていることがあります。それは、その物件の面白さやユニークさがあまり伝わってこないことです。


沼垂西にある築48年のリノベーション長屋

今回、面白い賃貸住宅をきちんと詳しく紹介したい!と思い、新潟市中央区の歴史ある町、沼垂西へと足を運びました。

訪れたのは、築48年の木造の長屋。

大人気の回転寿司店「弁慶」があるピア万代までわずか300m、すぐ目の前の栗の木バイパスの向かい側には「とんかつ政ちゃん沼垂本店」があります。

万代エリアも徒歩15分程度と利便性が高く、信濃川も近いのでランニングやウォーキングを習慣にする人にとってもかなり便利な場所と言えます。

そんな長屋は、わずか3室のみのこぢんまりとした平屋の建物で、今年2017年の1月にリノベーション工事が完了したばかり。こちらの物件のリノベーションを手掛けた有限会社コーディネートの永井智貴さんにお話しをうかがいました。

「この長屋は5年もの間、空き家になっていました。中はかなり荒廃していたんですが、構造部分の傷みが少なかったため、直して活用しようということになったんです」。

古い建物がどんどん建て替えられていく中、長屋はかつての沼垂の風景を今に伝える貴重な建物でもあります。


素朴さを生かした空間で、猫と一緒に暮らせる

では、さっそく中を見てみましょう。手前に並んでいる1号室と2号室は同じ間取りの29.81㎡の1Kの部屋。奥にある3号室は少し広い39.74㎡の2Kの部屋です。

↑外観。手前が1・2号室。正面奥に見えるのが3号室。建物前には玉砂利が敷かれている。

今回は2号室と3号室を見せて頂きました。

まず2号室です。以前4.5畳と6畳の2間続きだった場所は一体にしています。床は杉の無垢フローリング。荒々しい節ありの無垢材の感触が心地よく、賃貸住宅で使われることが多いツルツルの複合フローリングとは違い、温かみを感じさせます。

↑2号室の居室全景。建物密集地だが、南側に窓を広く設けているので部屋全体が柔らかい光で満たされる。

かつて窓だった場所は、あまり採光に役立っていなかったこともあり、塞いで造作の本棚にしています。備え付けの畳ベッドも空間の雰囲気になじんでいます。

↑奥に見える本棚は、窓を塞いで作ったもの。

↑左側に見えるのは冷蔵庫を置くスペース。その奥のキッチンと繋がっている。

窓に取り付けられているのは、カーテンではなく障子で、真壁造り(柱を表面に露出させる伝統的な和風建築の構法)の空間に調和しています。窓は既存のアルミサッシ+単板ガラスで断熱性能が弱いため、冬場は障子戸が断熱に役立ちます。

なんと言っても特徴的なのは、壁に設けられた猫用のステップ。TVボードの横の壁から上がり、部屋の中を一周できるようにキャットウォークが設けられています。

「この長屋は『猫と暮らすこと』をテーマの一つとしています。沼垂は猫が多い地域で、昼間歩いていると、よく道で猫が昼寝している風景が見られるんですよ」と永井さん。そんな沼垂の地域性を取り込んでいるのもこの長屋のユニークなところです。

↑今回撮影のために出演してくれたネコちゃん。緊張のあまりベッドの下で縮こまっている。

↑壁に付けられた収納棚はネコちゃんのステップも兼ねている。

古い建物と言うと、水回りを心配する人も少なくないと思いますが、こちらでは、浴室は小さいながらもきれいなユニットバスに入れ替えられており、トイレも新しいシャワートイレが設置されています。

↑築48年でも新しいユニットバスなので、快適なバスタイムが過ごせる。追い炊き機能付き。

1号室・2号室に設けられているキッチンは、一般的な家庭用キッチンではなく、業務用厨房機器メーカーのステンレスの流しと作業台が並んでいます。最近ではあえて扉のない無骨なフレームキッチンを選ぶ人も増えてきていますが、キッチンメーカーの廉価版のものよりも潔さが感じられるデザインです。

↑小さなキッチンに据えられた業務用のステンレスキッチン。

↑キッチンより玄関を見る。正面のドアの向こうはトイレ。

↑玄関には有効ボードが取り付けられている。カギや帽子などを掛けるのに便利。

次に3号室です。こちらは6畳と4.5畳の2部屋があるので、寝室と居室を分けて使うことができます。2号室と同様に床は無垢の杉材が中心。玄関ホールと居間を仕切るモールガラスの建具は中古品を取り寄せたものだそうですが、それ以外は基本的に元々あった建具を使用しています。今では珍しいレトロなすりガラスが味わい深いです。

↑3号室は漆喰の壁でしっとりとした雰囲気。

↑光を通すモールガラスの建具は、空間を広く感じさせる。

↑6畳の居室は真壁造りで味わい深い空間。

↑4.5畳の部屋は南向きなので光がよく入る。

↑障子戸には昔懐かしいネジ式のカギが。

↑4.5畳の部屋から6畳の部屋を見る。部屋を隔てるのは古い建具。

↑簡素なキッチンだが、2面に窓があるので明るい。

↑レトロな洗面台。最近の機能的な洗面台にはないミニマルなデザインが逆にかっこいい。

↑玄関ホールの柱には非常用の懐中電灯が。

↑腰壁が付いたトイレ。

近年全国的に空き家が増え続けているにも関わらず、投資目的や相続税対策などで賃貸住宅の建設が増えています。新築の賃貸住宅が増えて行く中で、内装や設備が老朽化した長屋やアパートは、家賃を下げても入居者が見つからず、空き家化が進行するというのが社会的な問題となっています。

しかし、そんな古い建物も、ちょっと見方を変えれば、新しい物件にはない価値を持っていることが分かります。長屋の味わいを生かしたこの建物は、手を加え過ぎることなく、リーズナブルな家賃で提供されています。(1号室・2号室は45,000円、3号室が55,000円)

一般的な賃貸住宅とは違う、昭和風情が味わえる長屋暮らしを楽しみたいという方は、問い合わせしてみてはいかがでしょうか?

↑クリックすると拡大します。

※2017年3月25日現在、空室はありません。

写真・文/鈴木亮平