夢十夜
各夜テーマは夢十夜Twitterからお借りしています
「推しとおばけかぼちゃの夢」
灯よりも明滅するブルー
love or kiss or treat or
きみがくれた悪夢を三晩かけて食べるよ
おばけと花嫁はよく似ている
今夜からこの肌はカスタード
その一生で繋ぎ留めてよ
愛はいま焼き菓子の匂い
見慣れた心だから迷わなかった
リングキャンディだったもの
ブレックファスト・トリコロル
「水面と最初の夢」
フルーツポンチに立つ泡花
水平を保つための虹
月明に生ひ出づ
天使、天使、エンゼル、電車
アトランティス大字にわたずみ
ケセランパサラン製ハイウェイ
闘魚の尾ひれが暮れ泥む
窓枠の内は嘸かし鮮やか
息を吐くと水晶のつぶつぶ
ここではどんな彩度も生きられない
「空白と野晒の夢」
恋人と呼んだ雨跡
消え失せたら形が分かる
埃と涙とスパングル
チュチュの下、太陽を隠したまま
毎夜押し寄せる前世
氷の出来る音が嵐みたいで
銀色だった七色の靴
本当にレース柄の頬だと思ってた
歌詞カードにあるヘブン
海によく似た痣だった
「暮らすひととエンターの夢」
一度だけでは生まれられない
暗やみに明かりはふやけて
ゆうれいの足あとみたい
音を立てて組み上がるひみつ
ヘンゼルもグレーテルもいない家
刺繍糸の日付変更線
天秤に乗せるスピカ
瞬間ばかり光るわけじゃない
とげとげとハニーシロップ
踊れなくても眠っていいの
「博士と扉の夢」
押し花に使うファンタジー
実は生る、ツノが出る
花ばかり咲かせる蛇たち
まつげの隙間で朝を見ている
純白なんて迷信を信じているの
何を混ぜても鍵にはなれない
wisdom compote
瞼のことを夜空と呼ぶもの
目覚めても芽を摘まないで
ここはあしたのとおりみち
「異境と水にうかぶ月の夢」
水溶性の寝物語
ホログラムの汚れを払えば新月
夜の底を撫でるアンバーグリス
煙か霧か電気水母か
白夜の希釈
見上げれば一面のシロツメクサ
羽もつ羊が眠らなくとも
翡翠こぼれる更紗の上
砂原に木犀草の芳香
閉じた手にも乾いた風の気配