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Unwinding INK (Currently reconstructing)

「こうたろうと左腕」

2021.11.01 13:47


もうだいぶ前の話しになってしまうが、新潟から富山へ抜けた後、初めてパンクした。

その日は朝、心地の良い海岸線を走っていて、日本海の水の透明さに驚き、思わず泳きたくなって自転車を止めた。天気予報では30度を越える暑さになるらしかった。

自転車を堤防の脇に停めてから、岩場の海岸へ降りて、小さな松の木の下に腰掛けた。ここなら誰からも見えないはず。

海に入る前に髭を切ってた。

すると、近くでガサガサと音がした。

誰もいないのを確認したはずなのに変だな。

立ち上がって覗いてみると、さっき自転車ですれ違った男性が、何やら流木を集めているのに気が付いた。 

僕の居るところからほんの5メートルぐらいのところにアジトを作り始めた。

何もこんな広い海岸で、わざわざ近くでやらなくても良いのにな😅

と、あの時は思ったのだが、今思えば、最初から彼は僕に話しかけたかったのではないか。

「彼」は、背丈こそ180cmを超えるものの、まだ中学三年生だった。

僕は、最初彼を見た時、折りたたみ自転車に乗っている大人だとてっきり思ったのだが、どうやら数年前に買った自転車は、その後グングン伸びる彼の身長のせいで不釣合いになってしまったらしい。

また、彼が中学一年の時には、自転車で中部一周をした話しなどもしてくれた。

なんせ旅に慣れていないものだから、えらい量の荷物を抱えて、自転車を漕いでたそうな。

しばし、海辺で立ち話しをしてからインスタを交換した。

名前は「こうたろう」と言った。

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彼と別れて自転車に戻ると、見事に前輪がぺっちゃんこになってて、彼に手伝ってもらって直した。

(本当は2人の手に負えず、通りすがりのおじさんが直してくれたんだけど)

まーとにかく直ったのだが、これが前日の山越えやトンネルの中だったら、と思うとゾッとした。

本当に僕はツイている。

その後、こうたろうは僕に、「後ろに点滅するライトがあった方がいい」とアドバイスしてくれたところから、彼の壮絶な体験談を聞かせてくれた。

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ある日、小学生のこうたろうは、自転車でトンネルを走っていたところ、後ろから来たトラックに突き飛ばされ、左腕をトラックに踏まれた。

左腕が砕けてしまったのだと。

あまりにも壮絶な体感談であり、一歩間違えれば、自分にも起こりえる可能性が十分にあったため、それを聞いたとき、言葉がでなかった。

彼との別れ側、何度も彼はこちらに手を振りながら「気をつけて!またいつかどこかで!」と大声を上げていて、でかいけど可愛いヤツだな、と思ったのは記憶に新しい。

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別れてから自転車を漕ぎ始め、15分くらい経ったところで、はっきりとした映像が頭に浮かんだ。

こうたろうの左腕の記憶だ。

後悔した。

なんで、オレは彼の腕を触らなかったのかと。

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そして今日、昼食を食べるために入ったお店のオーナーと、たまたま話す機会があり、腰が悪いことを知った。

また同じことをしてしまった。

できることをしなかった。