お昼寝しすぎて夜眠れなくなりそうな話
ロストークがちょっとだけモンジュニキを安らかに寝かします。
お世話になっている旅団にお邪魔してみたら、団長がぺったりと畳に寝そべっていた。彼が旅団で昼寝をしているのは、さして珍しいことでもない。いつもなら縁側で、庭を眺めつつといった様子だが、今日は少し冷えるからだろうか。座布団を枕にして、ゆるりと力の抜けた姿勢が、深い呼吸で規則的に揺れている。
いつかのようにうなされてもいないようで、僕は少し安心した。部屋の中は暖かいが、外を歩いてきてすぐの僕が暑いと思わない程度なので、眠っていたら体を冷やすかもしれない。ジャケットを脱いで、肩にかけてやる。
「台所を借りるよ」
起こすつもりもなく、小さく宣言してその場を離れた。
ほうじ茶を淹れて居間へ戻ってくると、昼寝する猫のように伸びていた体が、もそりと丸まっていた。ずれた上着は抱え込むように大部分が腹の方へ寄っている。
結局背中が冷えてしまうだろうと、やんわりゆっくり撫でてやるとまたもそもそ姿勢が変わる。
「んぁ……」
寝ぼけた声といっしょにうっすら目が開いて、どうやら彼は目を覚ましたらしかった。
「おはよう、モンジュさん」
「おう……」
モンジュさんはまだうとうとしていて、少しぐずるように片目を手で覆う。少し疲れているのだろうか、あからさまな睡眠不足などには見えないが、精彩を欠いた顔をしていた。
「喉は乾いていないかい?」
体を起こしたモンジュさんに問うと不明瞭ながらもうなずくので、淹れてきたほうじ茶を注いで湯呑を差し出した。熱いからね、と口をはさみつつ、自分の分も注いでふうふう吹きながらすする。徒歩の熱も引いてきたところで、室内の気温に慣れた体がさらに緩んだ。
隣を見れば、モンジュさんも少し頭がはっきりしたのか、ため息をついて湯呑で手を温めていた。
「お疲れみたいだねえ」
「あー……まあ、な」
なにに疲れているのかまでは、よくわからない。たぶん僕がうまくやれるのは、明確な原因の排除より、単に一息つける時間を作るくらいのことだろう。
ありがとな、と返されたジャケットを一度は受け取って、ぱさりと彼の肩にかけた。怪訝そうな顔をする彼に少しいたずらっぽく見えるように笑って見せて、中身が半分くらいまで減った湯呑を取り上げる。
「もう少し休んだらいいよ。邪魔じゃないなら、僕、そばにいるから」
肩に手をやって引き寄せる。とす、とす、とあやすように軽くたたいていると、ゆっくりと彼の力が抜けて、僕の肩に頭が預けられた。
「えらい甘やかしだな……」
「僕だからね」
なんだそりゃ、と言いながら軽く目を閉じた気配がして、ふ、と笑う。はらりと額に落ちたおくれ毛を払って、僕は自分の湯飲みにまた口を付けた。 僕が人を甘やかすのは習い性だ。それが子供や、疲れている人ならなおさら。
やがて肩からずり落ちてきたモンジュさんに胡坐の膝を貸して、僕は夕飯前まで本を読んで過ごすことにしたのだった。
友情出演:モンジュ・アカザネ(e04138)さん