僕は原発反対です。
あの東日本大震災と津波、福島原発事故から6年余り。
再びいくつかの原発が稼働しようとしています。
昨日も玄海原発再稼働に関し、佐賀知事が同意表明したと報道がありました。
現在稼働中の原子力発電所は九州電力川内原発1,2号機と四国電力伊方原発3号機の3基。これに玄海原発が加わることになりそうです。
僕は、今の仕事を始める前、建設会社に勤務していました。
横浜で勤務していたころ、環境にかかわる取り組みを考える社内ワークンググループに加わったことがありました。
世の中で言うところの「環境」「エコ」とは何か、の理解から始まり、自分たち、自社にできる取組みを考えることがテーマでした。
建設会社ですから、日常の業務、すなわち施工中や業務内における省エネや廃棄物の削減、再利用の推進、などというところはもちろんのこと、建物などを建設するお客様に対し、より環境への影響が小さい仕組みなども併せて考える、というものでした。
衝撃を受けた動画
そのWGの最初のミーティングの際にある動画を見ました。
それは、1992年に行われたリオで行われた地球環境サミットでセヴァン・スズキ(カナダ生まれの日系4世)という女の子(当時12歳)が行ったスピーチでした。
その中で、僕の心に今も強烈に印象に残っている言葉があります。
「どうやって直すのかわからないものを壊し続けるのはもうやめてください。」という言葉です。
福島原発の今
今も多くの人が故郷に帰ることができずにいます。帰ることをあきらめた人もいます。
福島第一原発では今も、廃炉に向け、様々な活動が行われています。
私がもともと勤めていた会社の人たちもたくさんの人が働いています。
私がいた会社では原子力発電所を作る仕事もしていましたし、大手ならではの技術力で解体・廃炉に向けて今できる困難な作業を一つ一つ進めているほか、除染作業や原子炉建屋の防護などの作業も行っています。
原子力発電の根本的な問題
しかし、実際には原子力発電という事業は根本的な問題が解決していません。
1.あいまいな発電コスト
ひとつは何をもって「発電コスト」といっているのかの基準があいまいなことです。
6年前の事故から今に至るまでの間にいったい関連する費用としていくらかかったのでしょうか。これらは本来であれば発電事業者のリスク管理・コスト管理の中で行われるものであるといえます。しかしながら、実際にはこれまで「最も発電コストの安いエネルギー」「クリーンなエネルギー」といわれ続け、コストから除外されています。
2.処分場の問題
もうひとつ、大きな問題は「処分場がない」ということです。日本は地価のいたるところに地下水が流れる国であり、しかも地震国。プレートが動き、安定した岩盤の場所はとても少ないと思われます。しかも狭い国土で、何万年も地中保管する施設なんてできるのか!?
小泉純一郎氏が語る「原発ゼロ」への取り組み
小泉純一郎元総理が、最近こんなお話をされるようになりました。
総理大臣時代には原発を推進、あるいは承認していた小泉氏が今は原発ゼロを唱えている。福島原発の時にいち早く駆け付け助けてくれた米兵への感謝、現在の状況を知ってからの思いと合わせ、現役を退いた後、様々な本を読み、人の話を聞いてたどり着いた結論は、「総理大臣時代に聞いていた話は嘘だと気づいた」だそうです。
- 「過ちを正すのに憚ることなかれ」
- 「過ちを正さざるはこれを過ちという」
なかなかできることではないのかもしれません。しかし小泉氏の強い意志とエネルギーを感じるインタビューでした。
僕は原発再稼働に反対です。
原発を推進することにも様々な事情があるでしょう。
しかし、いったい廃炉にはいくらかかるのか、福島の損害賠償や補償にはいくらかかるのか。高速増殖炉もんじゅの開発には1兆1千億円もの税金を費やしながらも実現することはありませんでした。これから実現のめどもつかない廃棄物貯蔵施設を作ることはできるのか。それにはいくらかかるのか。これらも全部含めてコストのはずなのに何をもって「発電コスト」というのか。
そして、先に取り上げたセヴァン・スズキが1992年にリオで話した「直し方のわからないものを壊すのはやめてください」が正論であるように「壊し方がわからないものを作るのもやめるべき」だと思うのです。
核廃棄物はいまだに処理する施設がありません。
原発が稼働することで多くの核廃棄物ができていきます。
これは、間違いなく環境破壊でしょう。環境を破壊せずに俺らを処分する方法はいまだ作られていないのです。
小泉氏が言うように日本は6年間、原子力発電がなくても電力をやりくりし、停電することなく過ごしてきました。
原子力発電がない、となれば、省エネ技術を磨き、再生可能エネルギーの発電効率の向上や活用方法の広がりが否応なく求められ、それに応えるだけのポテンシャルが日本の技術にはあると信じています。
地球全体に負担の少ない取組みの推進に、この大事故を起こした日本だからこそ「わがこと」として取組むモチベーションがあるでしょう。
未来に負担を残さないことに積極的に取り組んでほしい、と切に願います。