巻きひげ
http://www.higashiyama.city.nagoya.jp/blog/2020/07/post-4278.html 【巻きひげ】より
2020年07月30日(木) 植物園
皆さんは蔓植物(つるしょくぶつ)を知っていますか。
蔓植物とは、茎が細長く伸びてつる状になり、自力では直立できない形態の植物の総称。〈出典:花と緑の事典 六耀社〉です。
具体的にはフジのように茎で直接巻きつくもの、キュウリ、ゴーヤ、ヘチマ、カラスウリのように葉が変形した巻きひげによって支柱に巻きつくもの、カギカズラのように小枝が変形した鉤(かぎ)によってよじ登るもの、ヘデラのように吸着根によってよじ登るものなどがあります。
◆ところで、そんな蔓植物ですが、皆さんはじっくり観察したことがありますか。
例えば、つるの巻き方は、ほとんどの種では決まっていて、例えばアサガオ、ヤマノイモ、ヤマフジは右巻き(右肩上がり)、一方ノダフジ、ヘクソカズラは左巻き(左肩上がり)です。
そしてもう一つ、見逃せないのが巻きひげです。巻きひげは、先端が支柱などに巻き付いて両端が固定されると、その中間付近を起点に両端に向かってねじれが進行していきます。そして中途にバネの向きが逆転して、両側に逆向きのバネが同数つくられます。
❖それではヤブガラシ(ブドウ科)でその様子を観察してみましょう。
【巻きひげは最初、渦巻き状に巻いた状態になっています。】
写真①.jpg
【やがて巻きつく先を探して、先端がまっすぐ伸びます。】
写真②.jpg
【そして先端が何かにしっかり巻きついて両端が固定されると、その間の部分がらせん状に巻いていきます。】
写真③.jpg
◆たったこれだけのことですが、実はこれがすごいことなんです。もし両端が固定された状態で、その間の一部分が一方向だけにねじれた場合は、どこかで巻きひげがねじ切れてしまいます。そのため巻きひげは、中途で巻く方向を変えることで、一方向に巻くことによって生じる歪(ゆが)みを解消して、ねじ切れないようにしています。
(略)
❖植物は役に立つ。
実際に植物をよく観察することで、発明されたものもたくさんあります。例えば野生のゴボウの実をヒントに発明されたマジックテープ、ハスの葉の表面構造をヒントに発明された撥水性(ロータス効果)の構造などはよく知られています。
【ハス:ハス科】雨が水滴になっています。
写真⑬.jpg
もしかすると将来、植物をヒントに、すごい発明があるかもしれませんね。
植物園緑地造園係長 太田幹夫
http://noko.pinoko.jp/p/hige.html 【巻きひげの巻き方】より
友人たちと巻きひげについて考えました。 「ヘチマの巻きひげは途中で巻き方が逆になっている。ノブドウやヤブカラシ、カラスウリもそうなっている。
ひげが巻くのはひげの片側の細胞だけが生長(肥大)する事によるそうだが、中央で巻き方を反転させるのがエネルギー的に一番安定するのだろうか?」仮説を立て、調べてみました。
写真はカラスウリの巻きひげです。13回ずつ巻いて真ん中で方向が変わって居ます。枝分かれして上へ向かう方は10回ずつで向きを逆にしていました。
カラスウリの巻きひげ
カラスウリ
巻きひげは最初から巻きながら伸びるのではなく、真っ直ぐなまま螺旋状の旋回運動をしながら伸び何かに触れた時に先端がからみつく。
簡単に言うと、首をクルクル振り回しながら捕まる先を求めて伸びていくのです。
たしかにカラスノエンドウやウリ科の巻きひげは最初真っ直ぐです。ひげの先端をそっとこするとそれが刺激になって巻き始めます。
根本と先端が固定された状態で巻きひげは成長を続け少しずつ長くなる。
伸びる理由は、ひげを作っている細胞が一つずつ肥大するからです。このとき片側の方がより多く肥大するので回り始める。
長くなったひげが巻き始めると途中で向きが変わるのは物理的に理解できる(この点については後述します)
そうであれば右巻きと左巻きの数は同じになるはずだ。
螺旋状になっていれば、風が吹いて多少揺れても伸び縮みできるから巻きひげは切れずに植物体を支えることが出来る。
途中で反転しないで朝顔の蔓のように全部同じ方向に回っていたらひげが伸びたときに根元(茎側)に力が集中して切れやすくなる(これも後述します)
両端が固定されていたらどうして巻き方が途中で逆になるのか???
巻きひげに近づいてみましょう。赤く着色してある側が螺旋の外側です。
大縄飛びを思い出して下さい。左右の二人が縄を回します。このとき二人が勝手気ままに回せば縄は不規則にゆがみながら動くだけです。二人の方向が一致すればきれいに円を描きます。
巻きひげの場合は先端が刺激を受けてねじれが始まります。
巻きひげは細胞が肥大して伸びていきますが、縄跳びにたとえたら縄を持つ人が少しずつ近づいて行くのと同じことになります。
近づくときに少しずつ腕に縄を絡ませていきましょう。そうすると左右の人が握手できるまでにはそれぞれの腕に絡まる縄の絡み方は向きが反対になることが分かります。
ちょうど真ん中辺りです(矢印のところ)。これを螺旋の「反旋点」と呼びます。巻きひげの太さが均一であれば1本の巻きひげでは右巻きと左巻きが同じ回数になります(カラスウリはこのタイプです)。
ただ、実際には巻きひげも根元の方が太いものが多く、そういう場合は根元の方が巻き数が少なくなります。 反旋点
途中で巻き方が反転しているとどうして丈夫なのか?
反転しなかったら まず途中で反転しない場合です。実際には両端が固定されているときは上で説明したように、このようには巻けませんが比較のために考えてみましょう。
風などにより茎と捕まっているものが遠くなったとき(下図)根元に渦巻きがギュウーッと集まってしまいその力が強すぎれば切れてしまいます。二本取りの糸でボタン付けをする時に糸のヨリをただしておかないとこんぐらかってしまい苛々した経験はおありだと思いますがそれと同じことが起こります。
途中で反転したら 途中で反転している場合はどうなるでしょう。左右一つずつの回転がほどけることによりほぼ一直線(実際には少し上下左右の波は残るけれど)になるので根元への負担が少なく切れにくくなります。
補足
アサガオの茎などは伸びながら巻いていくので下から上まで全部同じ方向に渦巻きが出来ます。
「反旋点」があることによって巻きひげに生じた「ひずみ」の力が解消されている。
巻きひげも長い物では途中に「反旋点」がいくつか出来て右左右左・・・と向きを変えているそうです。
捕まる相手が居なかったときの巻きひげは「老衰巻き」と呼ばれるそうで、とてもややこしい形をしているそうです。