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関西女子とぴ

100年続く宝塚歌劇団 その魅力は、前田敦子的「シロウトの神格化」!?

2015.03.09 07:50



JCSIによる2014年度顧客満足度調査
エンタテインメント部門で、第3位に輝いた宝塚歌劇団。
未婚女性だけで構成された総勢400名の劇団である。
座付きの演出家が毎年新作を書き下ろしたり、
鉄道会社の一部門であったりと、他には例のない特徴が様々。
実際の舞台を観た経験がない人には、
女性が男性を演じることやファンの熱狂などが奇妙に感じられるかもしれない。

 

この不思議な世界、宝塚歌劇の魅力とは何なのだろう? 

『元・宝塚総支配人が語る「タカラヅカ」の経営戦略』
(森下信雄/KADOKAWA角川書店)から読み解いてみよう。



●トップへの険しい道のり~宝塚の基礎知識

 
現在、宝塚歌劇団は、花、星、月、雪、宙(そら)の5組に分かれている。
本拠地は兵庫県宝塚市の宝塚大劇場で、
同劇場と東京日比谷の東京宝塚劇場をメインに、
5組を効率よく回転させることで、年間を通しての公演を可能にしている。
公演の基本的な舞台構成は、前半が芝居またはミュージカル、
後半がショーという2本立て。配役は演出家や支配人などの
経営陣が決定し、怪我や病気でない限り劇団員の全員が出演する。

 

各組の中心に位置するのは、トップと呼ばれる男役である。
公演の主役を務め、後半のショーの最後に大きな羽飾りで舞台上の
大階段から降りてくる演出がお決まり。
最も観客の注目を集めるポジションだ。個々人の技量はもちろんのこと、
芝居全体の出来、組全体をまとめ上げるリーダーシップと、
求められる責務は重い。さらに、客入りによって
そのトップの価値が計られるというシビアな面もあり、
経営陣からはより多くの興行収益を期待される。

 

このような重責が課される一方で、トップとは、
歌劇団に在籍する者や宝塚を受験する少女たちが
「いつかは自分も」と憧れるポジションでもある。

 

このポジションに就くためには、踏まねばならない
決まったステップがある。出世競争は厳しく、ある組の中で
1人が新人公演の主役に決まると、その組の同期生は
トップになる道を絶たれると言っても過言ではない。
宝塚には毎年必ず新人が入ってくるので、
同じ学年の者でトップが続くと、後輩たちが
就任適齢期(入団12年ほど)を逃してしまうという事情があるからだ。
また、せっかくトップ路線に乗れても、途中で人気や
実力が振るわないと、路線から外されてしまうこともある。
宝塚総支配人という立場であった著者は、公演の配役が言い渡され、
団員たちのポジションが明確になる稽古初日の異様な緊張感を、
何度も目撃しているという。

 

そもそも、歌劇団員になるために必ず卒業しなければならない
宝塚音楽学校の入試倍率は20倍以上。
高い倍率を潜り抜けて入学し、その中からさらにトップに選ばれるとは、
世の中“すごい人”はいるものだ。

 

しかし、著者は言う。宝塚の魅力は「シロウトの神格化」であると。



●トップ=前田敦子!? AKB48との共通点とは?

 

「シロウト」とは、個々のスキルが低いという意味で
使われている語ではない。著者は、国民的アイドルグループ
AKB48の初代センター前田敦子を例に出して、次のように説明をしている。

 

プロデューサーの秋元康が、前田敦子を
AKB48のセンターに据えた理由は「一番センターに
向いてなさそうだったから」。“普通の女の子”が必死に
努力して成長していく姿に、観客は胸を熱くするはずだと
見込んだのだ。AKB48とは、未完成の女の子がプロに
近づこうと進化していく変化そのものを、観客に見せる企画なのである。
この未完成ゆえの魅力が宝塚にも共通する。

 

厳しいレッスンを受けているとはいえ、
宝塚の団員も入団の段階ではいわば“普通の女の子”である。
オーディションで役を射止めたわけではなく、
劇団の外でプロとして食べていけるかは不明瞭だからだ。
不明瞭にもかかわらず、劇団内では配役が割り当てられ、
彼女たちは自らのパフォーマンスを観客の前に
立てるだけのクオリティーに仕上げるべく必死に自分を追い込む。

 

年数を重ねていけば技術も磨かれるが、
組内での序列や配役は上層部から言い渡されることに変わりはなく、
トップに近づくほど理屈ではどうにもならない
オーラや人気が求められたりもする。

 

この理不尽な環境の中で己の限界に挑戦し成長していく姿は、
やはり魅力的と言わざるをえない。
常連のファンは「この子は光るものがある」と
お気に入りの子を見つけると、トップに昇りつめるまでの
ストーリーを共に追う。このような熱いファンの眼差しが、
“普通の女の子”に特別さを与え、それを受けた本人も
その期待に応えていくのだ。

 

宝塚でもAKB48でも、少女たちはファンとの共存関係によって、
少しずつ“すごい人”に育っていくのである。
これこそが「シロウトの神格化」だ。
追い詰められる女性の立場からすれば、恐ろしくも
感じられる仕組みだが、経営的には賢いシステムなのだろう。
この仕掛けでAKB48は国民的アイドルになり、
宝塚歌劇団は100年続いたのだから。

 努力している女性たちが
大人の経済システムに消耗しつくされないか心配しつつも、
筆者も限界に挑戦する姿に勇気をもらうべくまんまと
宝塚の公演に足を運んでしまうこと度々。
頑張れ、女の子! 頑張れ、かつて女の子だった女性たち! 

理不尽さも大人のシステムも越えて輝け!

引用「ダ・ヴィンチNEWS」

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