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北海道大学体育会サッカー部

2021.11.03 11:17

久しぶりに姉からLINEが届いた。

クレーンゲームでプレステ5が当たったとのことだ。

まじか。羨まし。

身近にゲーセンで高額商品をゲットした人をはじめて見た。

クレーンゲームって本当に当たるもんなんだ。

それにしても、人間はクレーンゲームなんて運ゲーをよくやるなとつくづく思う。

絶対に欲しい商品を買った方がコスパも良くリスクもないだろうに。

阿呆なのだろうか。

次の日、僕はゲーセンにいた。

不意にゲーセンに行きたくなる時って誰にでもあると思う。

別に触発された訳ではない。

店内を散策していると、たこ焼きキャッチャーというクレーンゲームの台を見つけた。

ルールは

1.クレーンでピンポン玉を掴む

2.たこ焼き器の上に玉を落とす

3.たこ焼き器の穴の中にひとつだけある当たり穴に玉を入れたら景品ゲット

というものだ。

景品を見る。プレステ5だ。

何としてでもゲットしたい。

とりあえず100円を投入。

ピンポン玉を1個キャッチ。たこ焼き器の上でリリース。玉はたこ焼き器の上を2、3度跳ねた後、枠外へ落下。

再び100円を投入。玉を2個キャッチ。共に枠外へ。

3度目。1個キャッチ。玉はたこ焼き器のハズレ穴に入った。

どうやら最低1個はクレーンでキャッチできるようだ。

全部の穴を埋めてしまえばいつかは当たり穴に入るだろう。

4度目、5度目、、、30度目。

ゲーセンのポップな音楽をBGMに、玉がたこ焼き器に弾かれる音が響く。

15個くらいあるたこ焼き器の穴のうち、3つが埋まったが、当たり穴に入る様子は全くない。

心が折れた。

なんて無駄なことをしたのだろう。

虚無感溢れるまま、帰り道スーパーで半額のたこ焼きを買って帰った。

僕は阿呆であった。

 

約2年ぶりにサッカー部に復帰してサッカーをした。

新しい後輩とサッカーするのも、見知った同期や後輩とサッカーするのも、どちらも刺激的で、とても楽しい。

やはりサッカー部でしか味わえないものはとても多いと感じた。

戻ってきてよかったと心から思う。

体は全然動かないけれど。

また、楽しいという気持ちとは別の気持ちもあった。

みんな変わっていた。

成長していた。

大人になっていた。

僕が知らない間に。

みんなといっても、以前の姿を知っている3、4年目(特に4年目)のことだが、サッカーも上手くなっていたし、人としても大人になっていた。

久しぶりに孫に会う祖父母はこんな気持ちなのだろうか。

具体的にこの人のこういうところが変わったなとか、すごいなとか思うことは多々あるけれど、それをここで書いたら彼らは調子に乗ってしまうので、明言は控えさせていただく。

みんないつ変わったのだろうか。

サッカーをしていたから立派になったのだろうか。

いや、それだけではないな。

サッカー部での活動を主とした、これまでの大学生活での経験すべてが糧となり、彼らは少しずつ成長していったのだろう。

僕も同期と4年間ずっとサッカーしていたかったという気持ちもないわけではない。

長く部を離れたという自分の選択に後悔はしないけれど。

ただ、果たして僕はその間、みんなと同じくらい成長していただろうか。

 

そんなことを考えていると、再びたこ焼きキャッチャーの台を見つけた。

景品を見る。

何としてでもゲットしたい。

僕の目の前のたこ焼き器の穴が埋まった記憶はまだない。

ただ、多くの人が景品を手にしている姿を横で見てきた。

たとえ当たり穴に入らなくても、とにかく玉を落として、穴の数を減らしていかなけばならない。

穴だらけのたこ焼き器なのだから。

それに、そもそもクレーンゲームは損得で考えるものではない。

夢を買っているのだ。

何かをして何も起こらなかった時、成功の可能性は上がっている。

100円を投入。

#89 小笠原 直希