ちいさな苔の世界を旅しよう
https://www.vixen.co.jp/lp/moss_world/cnts/karada.html 【コケのからだ】より
コケ植物(蘚苔類)は蘚類・苔類・ツノゴケ類に分けられます(コケ観察ガイドでは蘚類とコケ類のみを取り上げています)。 いずれも水を吸い上げる根と植物体に水を運ぶ維管束を持ちません。全身で吸水し、光合成を行います。 コケの形状は、茎と葉が分かれる「茎葉体」タイプと分かれない「葉状体」タイプに大別されます。 「茎葉体」は直立または匍匐し、多くの蘚類・苔類がこのタイプに属します。 「葉状体」は平たく、地面や基部に張りつきます。 このタイプは苔類のみに限られます。これらの植物体は、いずれも吸水機能を持たない「仮根(かこん)」によって基物に着生しています。植物体は単相(n)の「配偶体」と、複相(2n)の「胞子体」からなっています。
蘚類
蘚類(せんるい)
全体に乾いた硬い感じで、しっかりと地上に根付いている印象があります。葉は茎に対し、主に螺旋状に配列されています。 多くは葉に中肋と呼ばれる脈を持っています。胞子体の蒴には蓋および蒴歯があります。また蒴の上に帽を持ちますが、古くなると脱落します。蒴の形状は多様で、蒴内に多数の胞子が形成されます。成熟すると蓋が外れ、蒴歯が開いて胞子が散布されます。 蒴の寿命は長く、柄は丈夫。ひとつの胞子が糸状の原糸体に発達し、分裂を繰り返して芽が形成され、そこから多数の配偶体が生じます。世界に約13,000種、日本には約1,100種が知られています。
コケ類
苔類(たいるい)
全体に柔らかい感じで、脆い印象があります。茎葉体と葉状体の2つのタイプがあり、一般にはゼニゴケに代表される葉状体タイプが広く知られています。細胞内に油滴状の構造(油体)を持つものが多く、蒴の形状は球体もしくは円筒形です。蒴歯は持っていません。蒴は熟すと4つに裂けて胞子を散布します。蒴内には胞子を弾き飛ばす役目を持つ糸状のバネ構造(弾糸)が形成されます。胞子体は短命で、柄も弱々しく、胞子の散布後はすぐに萎びて腐ってしまいます。原糸体は塊状で、ひとつの胞子からひとつの配偶体しかできません。世界に約5,000種、日本には約600種が知られています。
https://www.vixen.co.jp/lp/moss_world/cnts/kurashi.html 【コケのくらし】より
コケってこんな生きもの
コケは根を持たないため、水分は体全体から直に取り込みます。乾燥すると休眠状態となり、雨や霧、朝露などの水分で復活し、光合成をはじめます。繁殖パターンには「有性生殖」と「無性生殖(栄養繁殖)」があります。配偶体(n)は有性世代で雌株(造卵器)と雄株(造精器)があります。受精には水が必要で、精子(n)は泳いで卵(n)に達して受精します。受精卵(2n)は雌の配偶体上(造卵器)の中で成長し、胞子体(無性世代)となります。蒴の中で減数分裂が起こり、胞子(n)が作られ、散布後に発芽して原糸体(n)となります。やがて芽が生じ、配偶体(n)となります。一方、クローン繁殖である無性生殖では無性芽などの植物体の一部からまた、茎や葉の一部が脱落し、そこから新しい個体ができることもあります。
有性生殖
コケの芽
糸状の原糸体は枝分かれしながら発達し、ところどころに芽をつけます。
雄株・雌株
芽は成長をして雄株もしくは雌株に成長します。
受精
成長した雄株には造精器、雌株には造卵器ができます。雄株は造精器から精子を出し、雨などの水分の中を泳いで、造卵器に達します。
胞子体
雌株で受精した受精卵は成長をして胞子体をつくります。胞子体は帽をかぶった状態で、成長し、帽に包まれた蒴の中で胞子を成熟させます。
配偶体
胞子体は雌株の配偶体でしか育つことができません。
散布
胞子が熟すと胞子嚢(ほうしのう)の蓋が外れ、蒴歯(さくし)が開き、胞子が散布されます。
原糸体
適した環境に散布された胞子は原糸体となって、あたらしい芽をつけ成長します。
有性生殖
有性生殖は、種子植物の増え方と似ています。雄株・雌株をおしべとめしべに、精子は花粉といったように種子植物の繁殖パターンに置き換えると馴染みやすくなるでしょう。種子植物が風や昆虫を使って受粉をしますが、コケは受精に水分が必要不可欠です。雨や露など水分の中を泳いで雌株の造卵器に移動して、ちいさなコケのからだの中に、次の世代のコケの胞子を作るのです。
無性生殖
コケの芽
糸状の原糸体は枝分かれしながら発達し、ところどころに芽をつけます。
雄株・雌株
成長したコケの体の一部が地上に接したり、茎や葉の一部が取れて、そこから新しいコケが成長していきます。そこから新しい配偶体が出来ることもあります。
成長
コケはからだの一部からクローンを作ることが出来るのです。
無性生殖
コケは根を持たない植物で、からだから水分を吸収し、光合成します。コケはからだの一部が取れても、からだから必要な養分を吸収するので、そこからまた成長をして、新しい植物体に成長します。十分な水がなく、胞子で増えることができなくても、クローンで増やすことが出来るたくましい繁殖力を持っています。
https://www.vixen.co.jp/lp/moss_world/cnts/sumika.html 【コケのすみか】 より
コケは私たちの生活している身近な場所でも観察ができます。いつも通る路地や家の周りにある塀や庭の木の幹、公園の植え込みの中などあらゆる場所にひっそりと、たくましく生きています。
コケの種類によって、日当たりを好む種、乾燥に強い種、日陰を好む種などそれぞれ個性があります。身近な場所に生きているコケたちを知ることで、コケの森に生息するコケたちとの違いや環境によって異なる姿に変化するコケの不思議さや美しさを発見できるでしょう。
木の幹
半日陰に植えられている大きな木の幹を探してみましょう。
岩の上
公園の石畳や大きめの岩、日陰になっているところにコケが生息しています。
石垣
住宅街の石垣や塀でもコケを見つけることが出来ます。環境によって種類も様々です。
土の上
庭木などの植えられている土の上にもコケが生きています。日当たりの悪い裏庭なども探してみましょう。