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大腸憩室炎の症例

2021.11.06 02:55
症例

■患者 40歳代女性。

■主訴 右大腸憩室炎による腹痛。

■現病歴 一週間前のお昼過ぎにお腹が痛くなる。夕方にかけて痛みが強くなり病院へ。大腸憩室炎と診断。点滴と飲み薬を続けてずいぶん痛みは楽になったが、現在も右上行結腸部が歩いたり、重たいものを持ったり、寝返りを打つと痛む。

思い当たる原因がないかを尋ねると、痛む前日に暴飲暴食をしたらしく、暴飲暴食はストレスの形を変えたものだから、ストレスの有無をさらに尋ねると、仕事のことで心身共に疲れていたとのこと。

■愁訴 発病後から軟便。

診察診断

■腹診 肝腎虚、肺脾実、心平。

■脉診

●脉状診 やや浮・数・虚・細・弱。

●比較脉診 肝腎虚、肺脾実、心平。

■病症の経絡的弁別 大腸憩室炎は、素問・六節藏象論篇第九."脾胃大腸小腸三焦膀胱者.倉廩之本.營之居也.名曰器.能化糟粕.轉味而入出者也."より脾胃の変動。病因となった暴飲暴食は、難経・四十九難"飮食勞倦.則傷脾."より脾の変動であるが、その背景にある仕事による心身の疲弊は、素問・六節藏象論篇第九."肝者.罷極之本.魂之居也."により肝の変動、つまりは肝鬱気滞瘀血火化である。

■証決定 肝虚脾実証。

■適応側の判定 上行結腸部右大腸憩室炎で病症が右に偏っているため健康側の左を第一候補に日本はり医学会方式で検証確認して断を押した。

■用鍼の決定 気に敏感な患者であるため刺さない鍼を選択。

■選穴 炎症性疾患である。難経・六十八難"滎主身熱."より滎火穴を病症選穴。

治療

■本治法 中野てい鍼柳下モデル95㍉を用いて主たる変動経絡である肝経の左行間(滎火穴)を補う👉母経の腎も虚しているので左然谷(滎火穴)を補う👉相剋を検脉すると畏経の右手関上沈めて脾の脉位に邪が在るので患側の右脾経を切経して最も邪気実が客している右陰陵泉(合水穴)を柳下圓鍼に持ち替えて瀉法👉陽経を検脉すると左尺中浮かして膀胱の脉位が虚しているので左足通谷(滎水穴)を補う👉右手関上浮かして胃の脉位に邪が浮いてきたので患側の右胃経を切経して最も邪気実が客している右上巨虚(大腸経の下合穴)を瀉法👉検脉して、脉の和緩、寸関尺の伸び、胃神根の充実から生命力が強化されたことを確認して補助療法・標治法に移る。

■補助療法

宮脇奇経治療 宮脇奇経腹診™️より奇経八脉の陰蹻脉とニ経治療(海外では宮脇スーパー4)の足陽明脉と診断。患側の右照海ー健側の左列缺と患側の右陥谷ー右合谷に奇経テスターを貼って腹部が緩むのを確認し、主穴に5壮、従穴に3壮最適解知熱灸で奇経灸、施灸後、銅・亜鉛粒を貼付。

子午治療 痛む範囲がだいぶと小さく絞り込まれて、残るは脾経と胆経の間の箇所に圧痛と筋性の抵抗がある。

脾経と子午陰陽関係にある三焦経の外関と胆経と子午陰陽関係にある心経の通里に銅の奇経テスターを貼り、脾三焦と胆心のどちらの方が患部の痛みが取れるかを検証確認すると、外関で痛みが和らぐので、健側の左外関に最適解知熱灸7壮して、効果が持続するように銅粒を貼付。

■標治法

●最後のトドメとして、局所の最圧痛点を検出し、その一点に八卦皮内鍼法

経過 

鎮痛。

反省と考察
夏場の大腸憩室炎と冬場の大腸憩室炎では病因が違います。

夏場は湿熱、冬場は寒湿によって起こります。


内傷なければ外邪入らずの大原則に従い、五臓の生気の虚が大前提としてあります。

仕事の疲れ、生活の不摂生、月経などによる、気血の過不足に乗じて邪気の侵襲を受けます。

そのほとんどを肝鬱気滞瘀血で一括りできます。

つまりストレスです。


肝鬱気滞瘀血から火化します。

病的な陽気が体内で動くと内風を生じます。

風邪です。

この肝より生じた風邪が内動すると、体内から風穴を開けて、文字通り隙間風が吹きます。

ここから四時の邪気が入ってきて、生気を妨害し、さらに気血を蝕んでいきます。

本治法において主たる変動経絡を整脉力豊かに補うと、内陥した邪気が主訴愁訴に関連した相剋経や陽経に現れ浮いてきます。

大腸憩室炎を始め大腸の炎症性疾患のほとんどが、脾胃に現れ浮いてきます。

特に、胃経の邪の処理が大切で、虫垂炎と同じで腑の病ですから、下合穴の上巨虚や蘭尾などに実的所見が現れます。

脉状に応じた手技手法で瀉します。

大腸疾患の奇経は、陥谷ー合谷が中心となります。

臓病はこれに照海ー列缺を加えます。

子午治療もよく効きます。

痛みを訴える患部の流中さえ割り出せば、後は簡単です。

流中が複数にまたがっているようであれば、比較検討して、より鎮痛できる子午陰陽関係を用います。

今回は脾ー三焦で、絡穴の外関が奏効しましたが、郄穴の会宗が虫垂炎における「ツバクラの名灸穴」として知られています。

これなども脾ー三焦の子午治療の応用だと思われます。

絡穴に反応がなければ郄穴など、他の要穴を試してください。

そして最後にお奨めしたいのが、八卦皮内鍼法による局所の鎮痛です。

詳しくは動画をご視聴ください。