Ameba Ownd

アプリで簡単、無料ホームページ作成

田丸雅智のショートショート即興ショー

「ナポレオン」w/ 角田陽一郎

2015.03.05 13:00

おれはP社に勤める開発者だ。

長年、ルンバを超えるお掃除ロボットの開発に携わってきた。

そして、ついにおれはやりとげた。

臭いに反応して自動で掃除をしてくれるロボット掃除機「ナポレオン」の開発に成功したのだ。

何か月も会社に泊まりこんだ甲斐があった。  

ナポレオンは発売一週間でたちまち大ヒット。

「余の辞書に不可能の文字はない」というキャッチコピーも功を奏したようだ。

実際、

「六畳間のたたみでも掃除できるの?」

とナポレオンに聞くと、

「余の辞書に不可能の文字はない」

と言って、がんがん掃除をしてくれる。  


ただ、一週間がたったころ、妙なことが起こりはじめた。

なぜだか、とても頑丈につくったはずなのに、ナポレオンの修理依頼が殺到しだしたのだ。

いろいろと原因を探ってみると、どうも蹴られたような跡がある。

こんな素晴らしい商品を蹴るだなんて、本当にありえない。どういう神経をしてるんだ…。  


腑に落ちないまま、おれは会社での缶詰め生活から解放されて、久しぶりに家へと帰った。

家につくと、我が家にもナポレオンが。どうやら妻が買ったらしい。  

すると突然、

「くさいもの発見!くさいもの発見!」

とナポレオンがこちらに寄ってきて、

「突撃!」

と言っておれの靴下を吸いはじめた。 

「このやろう!」  
思わずおれは踏みつぶし、妻に言った。 
「おい、これ、明日修理にだしといて!」