「ハムおじさん」大桃洋祐
大人も子供も楽しめる絵本って意外と少ないんですけれど、大桃洋祐さんの新刊「ハムおじさん」は本当に、子どもから大人まで楽しめる絵本だと、感嘆してしまいます。
大人が見ても、素敵だなオシャレだな、と感じる絵でありながら、子どもも楽しいと感じることの出来る絵。
イラストレーションが本当に素晴らしいんです。
色を多く使っていながらもそれが派手にけばけばしくはならずに、とても楽しく優しい画面になっています。
絵が、本当に何処をとっても『楽しい』のです。
人物の動き、そしてカメラの寄りや引きのリズム、場面の切り替え、巧みに計算されていながらも、とても肉体的に感じます。
しばしば思うのですけれど、ある種類の良い絵本って、すごく読者の身体に作用すると言いますか、読者の身体を動かすような感覚があるんですよね。これはきっと子どもも感じることのできることだと思いますね。
そして大桃さんの色彩で思い出すのは、自分は既存の絵本作家ではなく、アメリカ印象派の画家たちです。
マーサー・ウォルターや、フレデリック・チャイルド・ハッサムなど、この色の優しさはなんだろう、何処から来るのだろうと、不思議に感じる画家たち。
この「ハムおじさん」に限らず、大桃さんの作品からはいつも、この『色の優しさ』を感じます。
良いですよね。優しさのある絵本が、自分は好きだな。
そして、(たぶん)どうでもいい事ですが、この「ハムおじさん」の表紙のピンクのストライプは『ハム』の色かな?と普通は思うのですけれど、お話の中に出てくるお菓子屋さん(クッキーとジャムを買っているお店)の壁紙ですね。
(大桃さんの絵はいつもピンクがとっても良いなと思います)
そもそも主人公のハムおじさんは何故『ハム』なのかなど(『ハム』は肉の『ハム』ではないかもしれませんが、ハム→ピンクと特徴的に感じるピンク色に無意識に読者の注意を向けているのかもしれません)、巧みな誘導がそこここにある気がしています。
けれどそんなことも、いやいや、きっと考えすぎだな、と思える楽しさが絵本の全体を包んでいるのが、ほんとうに素晴らしいですね。
この徳間書店から発売された『ハムおじさん』、小学館から昨年出た「ぼくらのまちにおいでよ」(先日発表されたTSUTAYAえほん大賞新人賞受賞作品です!)の他に、作家さん自身で作られている作品集と絵本も当店には在庫しております。
私家版の本についてはすべてサイン入りでお届けしております。
ぜひ店頭でも、オンラインストアでも、ご覧いただけたら嬉しいです。
ちなみに「ハムおじさん」は自分は娘(3歳3ヶ月)にも読みましたが、とても気に入っていますのでお子さんには3歳くらいでも大丈夫ですよ。(帯には5さい〜と書いてありますが)
大桃洋祐さんの絵本はこちらから。