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新外交イニシアティブ(ND)

2015.10.15 08:37

さる9月26日。西南学院大学で行われた「戦後70年 日本の安全保障を考える」― 安保法制・沖縄米軍基地の議論を踏まえて ― の講演会に行ってきました。

司会兼コーディネータの猿田佐世さんは、ワシントンでロビー活動を行い、沖縄の基地問題にも深くかかわる女性です。

彼女の話しのなかで特に印象に残った部分を、トピックとしてあげたいと思います。


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※以下カギ括弧部分は、講演の際の話しと重なる箇所を、新外交イニシアティブ編「虚像の抑止力」より抜粋。

「米国は、日本に対して圧倒的影響力を有している。(中略)しかし、米側を見てみると、大半の米国人は日米関係に関心を有していないのが現実である。(中略)私(猿田さんのこと・筆者註)は、米連邦議会下院の外交委員会アジア太平洋環境小委員会の委員長と面会した。沖縄の問題を管轄する委員会である」

このとき、沖縄問題に係わる委員長は、沖縄の人口は「2,000人くらいか?」と訊ねて、猿田さんを唖然とさせたそうです。

「憤りを感じるとはいえ、今までだれもこの委員長にこの問題を知らせてこなかったのであれば、彼の認識がこの程度でもやむおえないのかもしれない。この六〇年の日米間のチャンネルは、沖縄の声が届くようにはできていないのである」

ワシントンで日米関係に影響力を与えうる人々には、大きく三層あるそうで、「米政府」、「連邦議会関係者」、「シンクタンクなどの研究員」など。

「いずれをとっても、米国で対日政策に関心をもち日本に影響力を及ぼしているのは、じつに限られた数の人々にすぎない。これらの限られた日本専門家は『知日派』とよばれ、つねに日本のメディアに登場し、日米関係についてはもちろんのこと、日本の国内政策について大きな影響力を及ぼしている」

猿田さんがワシントンでいろいろとリサーチするかぎりでは、こうした「知日派」の数は少なく見積もると5~6人程度。多く換算しても30人は越えないのではないか、とのこと。

「数限られた『知日派』に、次々日本の政治家が面談を申し込む。日本のメディアも同様でで、ワシントン発のコメントが必要な際、米政権内部の人物に比して接触しやすいシンクタンクの研究員から取ることも多いが、『知日派』が多くないため、コメントする顔ぶれは限られる。これによって、数少ない『知日派』の影響力はさらに増す」

猿田さんは「ワシントン拡声器効果」と言っていましたが、シンクタンクでの発表物も含め、ワシントンでの出来事は、日本のメディアがかなり大きく取り扱うため、一部の限られた訪米政治家の意図や、また限られた『知日派』声が拡大されて、それが日本に跳ね返ってきます。

「すなわち、限られた日本の情報のみが限られた米国の相手に届いているにすぎないのが現状である。逆方向の米国から日本への情報の流れも同様で、限られたワシントンの情報のみが日本に届いている」


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沖縄問題に対して重要なポストの委員長ですら、沖縄の人口は「2,000人くらいか?」と訊ねる(その後彼はちゃんと勉強してくれたそうですが)、その程度の認識しか米議会に与えていない対米外交を垣間見る機会となりました。

はたして日本政府(および本土の有権者)は、本当に沖縄の米軍基地を、または沖縄の現状を、日本国の問題として平等に扱ってきたのでしょうか。戦後七十年、沖縄に対する本土の責任という言葉から、目をそらさずに見つめ直す、そうした節目に立たされている思いがしました。

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