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キリスト教で読む西洋史ー聖女・悪女・聖人・皇帝・市民

苦悩と歓喜6-ゴヤ「カルロス4世一家」

2021.11.16 09:01

ナポレオンは大陸封鎖令を完璧に実行しようとする。まだナポレオンに従っていない、スウェーデンにロシアを差し向け、ポルトガルに侵攻しようと計画した。当時のスペイン王カルロス4世は無能で、王妃マリア・ルイサと宰相マヌエル・デ・ゴドイに政治を一任していた。そしてゴドイは親仏路線をとった。

1801年に当時の宮廷画家フランシス・デ・ゴヤが描いた「カルロス4世一家の肖像」は、史上最も悲惨な集団肖像という評価を得ている。ゴヤは一同に会せなかったので、別々に描いてそれを絵の中で合わせたらしい。が、この集団の不調和さは異常である。主人公のはずの王は、まるで威厳がない。

そして中央に居るのが王妃マリア・ルイサ。いかにも強気で、口を真一文字に結んでいる。その背景の絵は「ロトとその娘達」旧約聖書では、ロトの娘2人は、父を酔わせて、性的関係を持つ。実は王妃には宰相ゴドイとの不倫が疑われ、王子はその子との噂もある。

左奥に画家を入れることでは、ヴェラスケスの傑作「ラスメニーナス」を意識しているのだが、何と違うことだろう。ナポレオンはゴドイとポルトガル3分割で合意して、スペインに兵を侵攻させるが、この半島戦争はゴドイと王の没落を導き、ナポレオンも泥沼に引き込まれることになる。