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離婚時の子の親権について(参議院浜田聡議員のお手伝い)

2021.11.18 03:19

 先週の水曜日はおったまげ~でした。NHK党党首の立花氏が数日前にNHK党の現職議員に議員辞職して参院選への出馬を迫り、現職議員の動揺を誘いました。しかし、党首がその意向を撤回。期せずして党の目標と党首への忠誠に対する踏み絵となったようです。これを茶番とみるかは人それぞれだけどトンデモな出来事ではありました。党首が世間の注目を得る為の話題作りをしただけだったとすればそれは悪い冗談。しかし、現職議員も一緒に団結して参院選の大勝負に望むと考えたのが本心なら信望に値するのでしょう。 

 数日前に参議院浜田聡議員のお手伝いに上がりました。衆議院選挙も終わり新しく発足した政権がそろそろ本格稼働し始める時期です。選挙では各政党が派手な公約を高らかに謳っていましたが、これからはその回収の段階に入ります。自民党では、積極財政、憲法改正、防衛費増額などです。公明党はキャッシュレス社会の推進などです。そんな中で社会問題になりながらも日本維新の会と共産党以外は目を背けてきた問題があります。離婚時の子供の親権の問題です。先日、卓球のメダリストである福原愛氏が離婚を発表した際に子供に関しては共同親権であることを明らかにしたことから共同親権という制度が注目されました。

画像:フォトACより

 親権とは,未成年者の養育監護(居所指定・懲戒・営業許可等)・財産管理(注意義務・法定代理)のために,法律上の父母に与えられた権利義務の総称です。日本の親権制度は,婚姻期間中は父母の共同親権(民法818条3項本文)としつつ,離婚時には単独親権(民法819条)を予定しています。離婚時に父母のどちらが親権を取得するかは,第1次的には協議で決めることになっており(民法819条1項),協議離婚の成立要件です(民法765条)。協議で決められない場合には,審判手続(民法819条4項)又は離婚訴訟に際して裁判所が職権で判断を下します(民法819条2項)。

 親権の一部には監護権が含まれます。監護権は身分上の養育保護、すなわち子供の心身の成長のための教育及び養育を中心とする権利です。通常、監護権が含まれる親権者が子供を引き取る権利を持っています。

 さて、現在の民法は、離婚後は父母のどちらかを親権者とする単独親権を採用しています。しかし、親権を失った親が養育に関わりにくくなり、子供との交流を絶たれることなどを根拠に離婚後の共同親権の立法化を訴える声がここ数年、政界でも国民の間でも盛んになりつつあります。

 2014年3月、超党派の「親子断絶防止議員連盟」が設立され、2018年2月に「共同養育支援議員連盟」に改称されました。こうした動きを受け、法務省は2019年9月に共同親権導入の是非などを議論する研究会を立ち上げているようです。2021年にも上川法相は法制委員会に共同親権の導入について諮問しています。

 一方で、離婚後の単独親権は法の下の平等を定めた憲法14条に違反するとして40代の男性が子どもの共同親権を求めた訴訟の上告審で最高裁は2019年2月28日に男性の上告を棄却する決定が出されています。

 これら単独親権や共同親権の議論には離婚によって生育環境の変化を強いられる子供の意見はほとんど盛り込まれることはありません。選挙によって立法府の議員が選定されるのですから、有権者の声は聞くが選挙権を持たない当事者である子供たちの意見は蔑ろにされがちです。両親の離婚はその子供にとってリスクを伴うことも多くあります。実際、全国の児童相談所に寄せられる虐待相談は1度も減ることはなく30年間も増え続け、2019年度の対応件数は19万3780件(厚労省発表)に達し、過去最多を更新しています。そのうち、警察を通じての児童相談所への通告が47%を占めています。子どもを虐待する親権者の問題は日々深刻化しています。

 15歳以上の子供や10歳以上の子供でも自分の意志の伝達能力が認められる場合は、裁判所は子供の意思の表明を取り入れることとされています。しかし、そのような子供の権利に関して当事者の子供たちのほとんどが認識できずにいます。つまり、子供が唯一もつ親権制限の権利については学校からも児童相談所からもほとんど教えられておらず行使する例は極めて少数に留まります。

 虐待の恐れがある親の離婚に際して、子供からすると現行では親権が両親のどちらか一方であることから、虐待リスクは両親の一方である1人からということになります。それが、共同親権になると両親共に2人からの虐待リスクを負うことになります。

 児童虐待の54%は実母からのものです。実父からは41%となっています。両親から、その他は5%ほどです。単独親権の場合は子を確保した方に親権が与えられるケースが多いのですが、その割合でも母親が親権を持つことが90%以上です。母親からの虐待の方が多いことから、考えようによっては父母の共同親権にした方が虐待リスクを軽減できると想定できるのかもしれません。両親が離婚したとしても、完全なる一人親家庭よりも、共同親権による個別に行き来できる共同親権によって虐待の抑止になるのかもしれません。

 逆に共同親権になると危惧されることがあります。子供に関する意見や方針が離婚した父と母で合致するかどうかです。親権者の義務は子供の身の回りの世話や教育、しつけだけでなく、子どもの居場所の指定、子どもの職業の許可・制限、子どもの財産の管理、子どもの法律行為への同意など多岐にわたります。離婚後も両親に親権があるようになれば、2人の許可を得なければ物事が進まず、離婚した両親が子どもの養育だけ意見が完全に合致することは期待できないと思います。両親が離婚し、夫婦関係を解消すること自体が子供にとっては悩ましいことですし、離婚後まで親権者が2人のままになれば、養育・教育の方針すら一本化されなくなり、将来設計の不安も高じてしまうのではないでしょうか。

 また、虐待が疑われる離婚した家庭の子供を児童相談所が保護しようとする場合は、親権を持つ親の合意が無くても家庭裁判所の許可を得て強制的に保護することが出来ます。共同親権となった場合の裁判所の判断は遅速化しないか危惧します。虐待があった場合は子供の生命も脅かされることがあります。児相の保護の可否は速やかに判断される必要があります。児相が家裁に訴える事件の9割以上が児童虐待です。児相と虐待親権者との戦いは日々繰り広げられています。共同親権のどちらか一方にでも虐待の可能性があれば速やかに保護できるように家裁の法(児童福祉法第28条1項)運用の余地を検討する必要があります。

 さて、政党の当該案件に関する政治的取り組みです。自民党、立憲民主党、国民民主党、れいわ新選組、社民党、NHK党は公約等では言及していません。日本共産党は「離婚後の共同親権を導入するのではなく、子供の権利擁護の立場から親権そのものを見直す民法改正を行うべき」としています。一方、日本維新の会では「共同親権・共同養育に関しては家庭内暴力被害等に十分に配慮しながら導入を推進するべき」だとしています。

 最後に私の緩やかな意見を申し上げますと、現段階で一気に共同親権に移行するのではなく、単独親権でのガイドラインの明示や法改正によって子供との面会交流や養育費支払いなどの不履行に関しての罰則の導入などをまずは進めるのが良いと思いました。確かに単独親権ですと連れ去りのような行為が発生することもあります。その上、親子の面会交流に関しても親権を持たない親は拒絶されたり無視されても打つ手がない状況です。それらを改善する法改正を行うことで対処することが現実的であり有効であろうかと思います。養育費や面会交流の取決めに反した場合の罰則を規定したり、離婚時の面会等の計画の明文化と義務化を規定したり、自治体が提供する面会交流支援施設の拡充を図ったりすることに早々に取り組むことで問題解決を前進させてはどうでしょうか。共同親権・共同監護には制度等の整備を深く慎重に進める必要があると思いますので時間が掛かるのではないかと思います。選択制共同親権と導入する場合は夫婦が離婚に際して子供の財産管理、法定代理、職業許可、居所指定、養育費、面談交流などに関して、父が権利を持つのか、母が権利を持つのか、共同で権利を持つのかをそれぞれについて合意する必要があると思いますが、それは容易なことではないと思います。もし離婚届にこれらの権利選択を記入しなければならない場合、離婚自体が困難なことになるのではないでしょうか。冷え切った夫婦がその子供の権利について互いの希望を譲歩することは稀だと思います。選択を保留して離婚することが可能だとしても、離婚後に延々と調停や裁判で争うような事態に陥るような気がします。では、のっけから離婚後も共同親権を継続するように法改正すると、それも選択制同様に、子供の教育、居住地、職業、面談機会、養育費などその都度に双方で合意する必要があり、その判断が遅れて子供に悪影響が及ぶことが頻繁に起こるかもしれません。一見、良さそうに思われる離婚後の共同親権は実際には父母間のトラブルの長期化を招くかもしれないと危惧します。ちなみに少し古いですが2011年の産経新聞のアンケート調査では共同親権に賛成する人は58%、反対は42%だということでした。このアンケートは離婚者を対象としたものではなく無条件でのネット調査です。他国では欧米諸国の多くは共同親権制度です。単独親権制度の国は日本の他、トルコやインドなどで多くはありません。

 総括として、子供の成長や子供の福祉を考えた場合に両方の親と会う(虐待やDVは例外とし)ことは重要であり有益だと思いますし異論のないことだと思います。単独親権ではあるけれども、一方の親が泣き寝入りにならないように養育費未払いの問題、面会交流の拒否の問題、児童の権利(1994年子供の権利条約)の徹底などの例外規定を盛り込みつつ、現状の民法の当該項の強化に取り組むことが先決だと思いました。

以上、最後までご拝読を賜りありがとうございました。

参考資料:ウィキペディア、親権

     https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A6%AA%E6%A8%A9