【働く天使ママインタビュー】#3 Kaoさん《前編》
様々な業界・職種で働く天使ママ達が、どんなことを感じ・悩み、気づきを得て歩んできたか、今まさに歩んでいるのか。働く天使ママの体験談をiKizukuがインタビューしてご紹介します。
《#3 Kaoさん/前編》
【プロフィール】
Kaoさん(40代)
・お仕事:製造業 会社員(人事)
・雇用形態:正社員
・ご経験:原因不明不育症。流産4回、死産1回をご経験。現在は2児の母。
・twitterアカウント:@Kao_fuiku_grief
1.現在のお仕事について教えてください
新卒入社した会社で働いていますが、途中企業合併や出向等があり、経理・総務・営業等、バックオフィス業務を転々としてきました。
現在は人事部で人事異動や人事制度運用など、社員のサポートに携わっています。
2.あなたのご経験について差支えない範囲で教えてください。
2008年に結婚し、2009年~2018年の間に流産4回、死産1回、出産2回を経験しています。
【2009年:28歳】 妊娠①→9週流産(双子)
初めての妊娠で双子が判明、喜んだのも束の間、心拍が止まってしまい2人とも稽留流産。「よくあることだから」と言われ、気が付いたら流産手術が終わった感じでした。
【2010年:29歳】 妊娠②→12週流産(男の子)
出血があり病院に行ったところ心拍が無く12週で流産。流産手術ができない週数の為、陣痛促進剤を使い出産。出生届は出せないのに、死産届と火葬が必要で戸惑ったのを覚えています。胎児絨毛染色体検査を受けましたが異常がなく原因不明でした。
【2011年:30歳】 不育症専門病院で検査①
2回流産したことで『不育症』という病気があることを知り、不育症専門病院(杉ウィメンズクリニック)で不育症検査を受けるものの、「全く異常なし」で「無治療」という診断になりました。
【2012年:31歳】 妊娠③→出産(女の子)
逆子の為、帝王切開でしたが、無事出産しました。
※2013年は復職したため、1年間は妊娠しないよう、仕事に集中しました。
【2015年:34歳】 妊娠④→31週死産(男の子)
妊娠中から成長が小さめでした。胎動を感じなくなり、すぐ病院へ行くものの心拍が止まっていました。死産は「分娩」が必要で、陣痛促進剤で4日かけ1285gの赤ちゃんを出産。胎児絨毛染色体検査も受けましたが、死産の原因は不明でした。死産届、火葬が必要な現実が辛かったです。
【2015年:34歳】 不育症専門病院で検査②
死産から2カ月後、再び不育症専門病院(杉ウィメンズクリニック)で再検査をしました。不育症検査・夫婦染色体検査も異常はなく、正式に「原因不明不育症」と診断されました。原因不明の場合、可能性がある治療を段階的踏んでいくしかなく、次の妊娠はアスピリンを服用する方針になりました。
【2016年:35歳】 妊娠⑤→11週で流産(男の子)
アスピリンを服用しながら、大学病院へ通院。11週の検診時に心拍が止まっていることがわかり、稽留流産となりました。この時も胎児絨毛染色体検査をしましたが、異常はなく原因不明でした。
【2017年:36歳】 妊娠⑥→胎嚢確認のみ流産
【2018年:37歳】 妊娠⑦→出産(男の子)
不育症治療はステップアップし、アスピリンを35週まで服用・ヘパリン自己注射1日2回(自費)、帝王切開の2日前まで打ちました。
順調に成長しているのか、とにかく怖くて検診のたびに泣いていました。そんな姿を見た看護師長さんが声をかけてくださり、1時間も話を聞いてくれたことが有難かったです。
お腹の中でずっと小さめだったこと、これまでの流死産経験があること、とにかく私の不安が大きいことから、37週0日、正産期すぐの帝王切開にて出産。2262gの男の子を無事出産しました。
3.ご経験後、仕事はどの程度お休みしましたか。
【2009年:妊娠①9週流産】 2・3日程度
土日もあったので、そんなに休まずにいたと思います。
【2010年:妊娠②12週流産】 2週間程度
2・3日で復帰できるほどすぐに立ち直れるわけではなかったことから、産婦人科で、2週間程度の安静指示の診断書を書いてもらいました。
【2015年:妊娠④31週死産】産休+休職1ヵ月。合計約3ヵ月。
産休入ってすぐの死産であり、妊娠が社内周知されている中で復職するという不安、そして何より子を亡くして2カ月で復帰するのは精神的にも無理でした。産婦人科で1ヵ月休職が必要と診断書を書いてもらい延長しました。
【2016年:妊娠⑤11週流産】2・3日程度
ある意味流産に慣れてしまった感覚と、これ以上職場に迷惑はかけられないという思いから、必要以上に休まなかったと思います。
これまでの全ての妊娠のマタニティマーク
4.ご経験後、職場復帰する際に考えたこと、感じたことを教えてください。
【2009年:妊娠① 9週流産】
9週と初期であったこと、社内にもほとんど報告していなかったこともあり、割とすんなり復帰しました。初めての流産だったので「よくあること」という言葉を素直に受け取っていたこともあるかと思います。
【2010年:妊娠② 12週流産】
少し週数が進んでいたこともあり、2週間程度休むことにしましたが、復帰後「どうしたの?」とよく聞かれました。「急に入院と手術が必要になって…」とは伝えると「おめでたかと思っていたよ~」と言われることも度々あり、触れてほしくない気持ちとごまかしている自分が嫌で辛かったです。2回流産が続いたことで、仕事より妊娠を大切にしたいと感じることが増え、両立の難しさも感じ始めていました。
【2015年:妊娠④31週死産】
とにかく復帰が怖かったです。どんな顔をして戻ったら良いのか、普通に仕事をすることができるのか、人と会うこと・話すことができるのかなど。
産休入った後の死産だったことで妊娠が周知の事実であり、気を遣われるかもしれない「大丈夫?」と声をかけられて泣いてしまうかもしれない、かわいそうな人という腫物扱いも嫌だけど何もなかったようなのも辛い。そんなぐちゃぐちゃな感情でした。
不育症を抱えながら仕事との両立は会社に迷惑をかけるだろうと、何度も辞めようと思いました。ただ、既に1人上の子が居たこと、まだ妊娠をあきらめきれない、治療費にもお金がかかるといった経済的な観点もあり復職を決意しました。
【産休に加えて休職1ヶ月(計3ヶ月)休もうと決めた時の心境】
2カ月では全く回復していなかったからです。上司や一部の同僚は私のこれまでの流産を知っていたので「なんと声をかけていいか…。仕事のことは考えず、まずは産休をしっかり休んでほしい。復帰についてはしばらく考えなくていいから。」と言ってくれました。
2ヶ月目が終わる頃には、職場復帰しなければという焦りと怖さがでてくる一方、これまでのように仕事ができる自信がありませんでした。勿論、休んでいることへの罪悪感もありました。しかし、ふとしたことですぐ泣きだしてしまう、普通に会話ができる自信もなかったことから、もう少し休みたいと感じ、1ヶ月休みを延長しました。
3ヵ月目は、会社の合併を控えるタイミングでもあり、休職していると目立ってしまい、理由を説明することで、更に多くの人に死産したことを知られてしまう不安がありました。精神的な辛さより死産を知られたくない気持ちが大きかったことから、復職を決意しました。
【2016年:妊娠⑤11週流産】
悲しみや辛さよりも、こんなに休んで申し訳ない気持ちでいっぱいでした。本格的に辞めなくてはならないかも、と悩んでいたが、上司から「辞めることはいつでもできるから」と言ってもらえたことで続ける決意をしました。
5.職場復帰後はどのように働いていますか。
【2015年:妊娠④31週死産】
死産当時、上に1人子供が居たことから、時短勤務のまま働いていましたが、実際はフルタイムに近い状態でした。
産休に入る前、元の部署で少しトラブルを受けたこともあり、復帰と同時に異動させてもらいました。新しい仕事を覚えることで死産の悲しみを考えなくて良い一方「前と同じように仕事ができるでしょう」という当たり前に接してくる周囲との温度の差を感じることもよくありました。
子供を亡くし、以前と同じように仕事ができる精神状態ではなかったため、気持ちが追い付かず、ふとした時に子を亡くしたという現実に引き戻され、トイレや更衣室で良く泣いていました。特に復帰1年くらいは精神状態が不安定だったと思います。
余談ですが、上の子が居ての復職は子供を保育園に預けることになります。送迎でママ友に会う、赤ちゃんを抱っこする人を見る、死産の報告をせざるを得ない等、子供が居ながらの流死産&仕事復帰は仕事以外でも人への説明が避けて通れず辛かったです。
【2018年:妊娠⑧ 上の子への妊娠報告について】
妊娠が分かった時、上の子(娘)は5歳でした。娘は死産以降「赤ちゃんはいらない」と言い続けていましたが、妊娠報告をするととても喜んでくれ、我慢していたのだと小さい子供の痛みを感じました。
ただ、娘に話すことで保育園のお友達に伝わることが不安でした。できれば誰にも知られたくなかったからです。そこで「◯◯ちゃん(死産した子)がお腹の中で死んじゃった時、みんなすごく辛かったよね。だから無事に産まれるまでお友達には内緒にしてもらえないかな?」と正直にお願いをしてみました。「わかった!秘密ね!」と本当に最後までお友達には言わずにいてくれました。
無事に弟が産まれた時「お母さんもうお友達に言っていい?」と聞いてきて、如何に5歳の娘に我慢や負担を強いてしまったか、申し訳なさと優しさに感謝でいっぱいでした。
後編では経験後の働き方やキャリアについての思い、職場とのやり取り、働く天使ママへのメッセージなどについてご紹介します。