【働く天使ママインタビュー】#3 Kaoさん《後編》
様々な業界・職種で働く天使ママ達が、どんなことを感じ・悩み、気づきを得て歩んできたか、今まさに歩んでいるのか。働く天使ママの体験談をiKizukuがインタビューしてご紹介します。
Kaoさんのインタビュー、後編をお届けします。
(前編はコチラから)
《#3 Kaoさん/後編》
【プロフィール】
Kaoさん(40代)
・お仕事:製造業 会社員(人事)
・雇用形態:正社員
・ご経験:原因不明不育症。流産4回、死産1回をご経験。現在は2児の母。
・twitterアカウント:@Kao_fuiku_grief
6.ご経験後、働き方やキャリアについて考え方が変わったこと、感じることを教えてください。
元々バリバリなキャリア志向ではありませんが、働く以上、自分が役に立てていると思えるよう仕事をがんばりたい、という気持ちはありました。ただ、流産・死産を繰り返し、不育症がわかったことで、仕事を頑張りたいという気持ちよりも「妊娠・出産より大切なことはない」そう考えるようになり、仕事への気持ちは完全に後回しになりました。
仕事でチャンスが来ても、仕事の代わりは沢山いる。と、一歩引いた形でサポートメインの仕事を受けることが自分が仕事を続けるための精いっぱいでした。
ただし、こんなにも流死産していることで「きっと周りは迷惑と思っているだろう。辞めた方がいいのだろう(社会不適合者とさえ感じていた)」という申し訳ない気持ちでいっぱいでした。
一方で周りが何事もなく仕事ができ昇進していく姿、問題なく妊娠・出産・復職して仕事をしている同僚たちを見て、モヤモヤする気持ちがなかったわけではなく「なんで自分ばかり」という気持ちも抱えていました。
仕事から置いていかれる気持ち、きちんと仕事ができない悔しさはいつも持ち合わせていましたが、今一番大切なのは赤ちゃんを元気に産むこと。二兎を追う者は一兎をも得ずと考えるようにしてきました。
6年経った今は「妊娠・出産は何があるかわからない」ということをもっと社会に知ってもらいたいと感じています。共働きが当たり前の社会になり、女性が妊娠期間中でも同じように仕事ができると思われている風潮もあるように感じています。
何事もなくても妊娠・出産がどれだけ大変であるか、その理解が深まることで、流産や死産というケースへの理解も少しずつ繋がってくるのではないかと思っています。
7.職場へのご経験の伝え方やその後のやり取りについて、大変だったこと・自身で工夫したこと・改善してほしいことがあれば教えて下さい。
①職場とのやりとり
上司から「とても辛かったと思うし、安易に言葉はかけられない。まずはしっかり心身を休めること。復職時期はまた相談しましょう」とメールをくれました。こういった方々に恵まれ、産休中は時々メールで連絡を取っていました。
復職時期の相談や会社の状況を定期的に教えてくれ、復職を決めたときは家まで会いに来てくれました。「気にかけているよ」という気持ちが伝わり救われる思いでした。
※これは産休育休を当たり前にとれる恵まれた職場だったからだとも思っています。会社によって制度はあっても、妊娠判明と共に「育休は取れない」と退職勧告的なことを受けている人もいると聞きますので、まだまだ整えなくてはならない社会体制があるのだと感じています。
②工夫したこと
産休後の死産ということもあり、復帰への不安がとにかく大きかったです。部内には上司から死産し、復職することを伝えてもらい、個人的に産休の挨拶をした人に対しては「死産して仕事復帰するが、いつも通り接してください」と後輩から先に伝えてもらうようにしました。おかげで「あれ?復帰早くない?」「赤ちゃんどっちだった?」などはあまり聞かれずに済んだと思います。
③改善して欲しいこと
いくら事前に周知してもらっても、中には「なんでそうなったの?」と野次馬根性で話しかける人がいます。上司から伝えてもらう時には「流産・死産は大切な人を亡くしたことと同じである」ということを前提に伝えてもらえると少し自分に置き換えてもらえるのかなと思います。
④あるといいと思うこと
同じ力量で仕事をするのが難しいことを知ってほしいです。「もう大丈夫そうだね」と仕事を振られるのはとても辛かったです。
例えば、復帰して1ヵ月・3ヵ月・半年位と定期的に「仕事どう?体調は?」といったフォロー面談みたいなのがあっても良いかもしれないと思います。復職する人は「迷惑をかけたくない」と一生懸命仕事をし、更に精神的に追い込まれる人もいると思います。
会社によっては産業医面談があるかと思いますので、それを活用するのも1つかもしれません。私の会社も産業医の先生はいましたが、これ以上死産を知られたくなかったこと、子を亡くす辛さはきっとわからないよね、というどこかで「わかってもらえない不安」というのが大きかったのだと思い、産業医面談は受けませんでした。
⑤自分の気持ちや体調の伝え方
もし自分の気持ちや体調などを伝える機会があれば伝えた方がよいと思います。
以前と同じモチベーションで仕事はできないと思いますし、一方で経験者でなければ辛さは想像しかできません。そこの相違から「もう大丈夫そうだね」等と言われ傷ついてしまうことがありました。『大丈夫なわけない!こっちは子供を亡くしているんだよ!』と心の中で勝手に怒り“察してほしい”という自分がいました。
素直に話すのはとても難しいことかもしれませんが、自分の状態を伝えることは、会社がその人に期待する部分や業務内容のすり合わせができ、結果的にお互いのためになると思っています。
人間関係・職場環境にもよりますが、「今はまだ辛いので、もうしばらく仕事をセーブさせてほしい」、「落ち着いたらまた妊娠を希望している」など、気持ちを知ってもらえているだけでも、ずいぶんと楽になるかと思います。
⑥最後の妊娠の社内報告
7回目の妊娠は必要最低限の人のみにして産まれるまで公表をしないで欲しいとお願いをしました。
例えば、会社で公表される業務分担表など、産休に入ると「産休」表記になるところ「休職」にしてもらい、無事に産まれたら「産休」書き換えてもらうようにするほど、自己防衛をしていました。そこまでお願いするに至った理由は、産休と公表した後に無事に産まれなかった時の報告の辛さを知っているからです。これは完全に私の我が儘でしたが、上司や人事が全面的に受け入れてくれたので、本当に感謝しかないし、恵まれていた職場と思っています。
娘さんが3歳の時に描いてくれた死産した弟の似顔絵
8.職場の人との関係について、辛かった・嬉しかった・助かった声掛けや対応、経験前後の変化などがあれば教えて下さい。
敢えてこの件に触れず、いつも通り声をかけてくれることが一番有難かった。特に復職後1・2ヶ月目頃が一番つらかったです。雑談・日常会話もままならず、コミュニケーションをとることが苦痛でした。
3ヶ月目頃から「もう元気そうだね」「大丈夫そうだね」と言われるようになり「身体は大丈夫なんですけどね~」と返事をしていた記憶があります。人に話しかけられることが怖く、復帰半年くらいは違うフロアのトイレに行ったりもしていました。
そんな中、女性の先輩(既婚・選択子なし)が気にかけてくれ、2人でお昼に行ってくれるなど、気持ちの面でとても助けられました。
「それだけの経験をしているから無理することはない」「自分を守ることを優先しなさい」と言ってもらえたことは今でも忘れられません。
9.同じ働く天使ママ、これから職場復帰する働く天使ママさんへ伝えたいメッセージがありましたらお願いします。
決して無理しないでほしいです。
仕事に復帰することで強制的に「日常に戻らされる感覚」になります。当事者は前と同じではないけど、周りは前と同じように接してきます。
休んだこと・迷惑をかけたという思いから「仕事をがんばらないといけない」と思ってしまいがちです。もちろん「がんばりたい」と思う気持ちは良いことだとも思います。でも必要以上に無理して頑張ることは自分を追い込むことになります。
もし、可能であれば、自分の気持ち・状態を上司に伝えること、その中で今後どう仕事をしていきたいかを上司や同僚と話せるといいと思います。
流死産は子供を亡くす、という経験でメンタル疾患にもつながるくらい、大きな大きな出来事です。決して簡単なことではありませんが、それを上司や同僚に知ってもらうことが働く天使ママにとって自分を守ることにもなるし、流死産という出来事を知ってもらう機会になると思います。
働く女性が増える中、流死産を経験している女性も多いと思います。働きたくても働くことが難しくなったり、諦めてしまう女性も多いかと思うと、我慢するのはやはり女性です。流死産した時は、きちんと休め、落ち着いたら復帰できる、そんな働き方や環境があることで、働く女性の選択肢は広がるのはないでしょうか。
私は今人事にいますが、自分の経験を活かしたフォローや体制が作っていけたらいいなと思っています。
Kaoさん、沢山のご経験、そこからの働く天使ママさんへの大切なメッセージを聞かせてくださりありがとうございました。
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