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NPO法人YouToo

韓国のフェミニズム・発信のカタチ(後編)

2021.11.19 00:29

“タルリ・ボム”を運営したリュ・スヨンさんとジュ・スンリさんのインタビュー後編


「ハーストーリー」「タルリ、ボム」、2つとも本に関連するコンテンツですが、「本」を選択した理由はなんですか?

本を選んだ理由は、一番簡単に、専門家でなくても接することができる媒体が「本」であり、実際に独立出版という誰もが本を自分の文章や自分のコンテンツによって作ることができる、そういう文化たちが既にありましたし、私もとても関心がありました。他の媒体、例えば映像などは相当学ばなければいけないですが、本なら私でできそうだと思ったのもありました。そして、私達がはじめに“엄마라고 불리는 여성들”(邦題:お母さんと呼ばれる女性たち”)を作ったのですが。注目をされない、記録されなかった、女性たちの人生を記録することと適合した媒体だったと思いました。本はもともと、昔はエリート的な媒体であり、それと同時に持っているという所蔵価値があると思います。そしてだれに対しても「本を出した」というふうに、本にはいくつか象徴性があると思います。

例えば、映像で記録するとか、そういうのはとても限定された場所で上映された場合でしか見られないじゃないですか。けれども本は誰に対しても差し出すことができるし、本棚にしまって見ておくこともできる。特に年配の方にとってそのような意味合いが強いと思います。自分の記録が本として出たという意味があるのだと思います。

S: 本を作る人は、ある程度権威を持っているという側面があると思いますが、実際本を読む人たちは一般の人じゃないですか。“엄마라고 불리는 여성들”という本を実際一般の出版社で出版するのは難しいけれど、独立出版の本は本当に自分の名前でだして、それを誰かに対して簡単に見せることが出来るので、嬉しさ、幸せ、そして記録としてなど多くの面でとても大きな意味を得ることが出来ると思います。実際にこうして物語の主人公に私の物語があるということを、「物」として見せることができます。

でも、“엄마라고 불리는 여성들” という本が出版してから出版社ハーストリーを作ったのですか?それとも同時進行だったのですか?

R:いいえ同時進行でした。

I:タルリ、ボムもそうなのですが私にとっては大きな挑戦に思えました。出版社を作って、どうしてできるのだろう?怖くなかったのだろうかと思ってしまって。

それほど大きい挑戦だとは思っていなくて。そんな大きい挑戦だと思っていたらやっていなかったと思います。サラリーマンをしてたかもしれません。それよりも面白そうという思いが強かったのだと思います。とにかく私は会社に行きたくなかったです(笑)なので少し生活が余裕なくても仕事が少し多くても明日仕事をすることが、より幸せで、やりがいを感じ、そして社会に対して貢献できる仕事がしたいと思っていました。とにかく就職をしないでできる仕事を探している途中、ちょうど事業に対して援助金を支給する制度があることを知って、それで「一回やってみるか」という感じでした。もともと私がこういうこと好きでしたし 、個人の物語や女性の物語に関心もあって仕事にしてみたいと思っていたのですが、具体的にはなかったです。

ただ、その締め切りが一週間しかなかったのでまず事業計画書をつくって、その後具体的に形にしていきました。そしてその援助金も通過して。

そして出版社Herstoryを始めて1年後に“タルリ、ボム”がスタートしますが 、それはすぐ思いついたのですか?それとも少しずつしたのですか?

R: 漠然と本屋さんが出来たらいいなぁ、いつかしたいなぁというアイデアはあったんですが、そんなこんなで出版社を初めて、そんなに時間はたってなかったときだったと思うのですが、私は「少しずつやればいいでしょ、まだ出版社もきちんとしていないから」と思ってたんですが、スンリが「まずいったん早くやってみよう、書店も援助してくれる事業をさがしてみよう」というので、そんなこんなで予想以上に早めに始めることになりました。その時フェミニズムをテーマにした書店はあるにはあったのですがそんなに多くなかったんです。ソウルにはありませんでした。果川に「エコフェミニズム」という本屋 があって、今もあります。ブックカフェのDoingもあってソウルにフェミニズムを専門とした本屋はなかったので一番最初に始めたくて。

それでは、特別に準備をしたり、先程おっしゃったようなDoingのように参考にしたモデルのようなものはありましたか?

R: その前にも本屋を廻ることは好きでした。そのように見てきたものは決まったものでなくても想像していた空間はありましたし、Doingも一度行って社長さんとお話しもしました。しかし結局は私達が全て構成をしなければならないことじゃないですか。そして店を始めてから少しずつ修正していきました

そのとき동네책방(街の本屋)に関した本をたくさん読みました。そしてもう一つもともとここを本キュレーションでは本屋でもありますが私達が今までインタビューを通して聞いたりなどしてきて集めた女性たちの物語があるじゃないですか。その人々の話がここに詰まった空間であれば良いなと思ったのですが、それはまだ出来ていない状態です。もともと女性たちの話でいっぱいになった図書館のような場所を作りたいという思いを持って本屋を始めたんですが、その人々の話をこの空間にどのように見せていけばよいのか。それはまだ上手にできていません。最近はそれを視覚的に構成したりして考えています。

それでは「本屋」をするときに一番大事にしたことはなんですか?

R:とにかく「本」屋 なので新しい本をきちんと置いて、ちゃんと紹介するのが一番重要です。最初は少し不安が強かったです。そのフェミニズム書店だと言ってはいますが、私達が韓国でフェミニストを代表することも出来ないですし、このような本を置いたら人々がどのように思うか、 この本たちをどのように受け取られるか。そういう不安が大きかったんですが、本屋を始めて少し経ったら、私が好きなものを置いたとしても人々がそこまで気にしていないことがわかりました。

それではキュレーションをするときどのような基準をもってされているか教えていただけますか。

R: 継続しながら変わったといえば良いのかな。本当にきちんと決まったことはないですが。ただ人々に紹介したい本を、決まった基準はないですが多様な人々の生き方を見せることができる、このように多様な性別の人々、もしくは多様な年齢の女性たちがそれぞれ人生の物語が書かれているか、自身の人生について、きちんと表現されている、そのような本たちを紹介しようとしています。

この4年間本を選びながら感じた傾向の変化などはありましたか?

R:それは当然ずっと変化はしています。特に出版業界の動向に変化があると思います。そしてそれがフェミニズムと関連する大衆の変化をも反映をしています。初めて本屋を開いたときはフェミニズムに関する基本書を求めてくる方が多く、そのような本たちがたくさん出版されました。さっきお話しした“女嫌い”また、“フェミニズムの挑戦”という本をチョン・ヘジンという女性学の学者が書いた本は私が一番最初に読んだ本で、そのような本をたくさんおすすめしました。そして少しずつそのように本を推薦することも少しずつ減っていき、逆に人々の自身の生活に対してのエッセイなどを求めている人が増えました。理論より人々がどのように生きているかに対して気になっているのではないか?と思います。 多くの女性作家たちの作品活動がとても活発になり、そしてここ数年間は本当にその作品、文学作品、国内の文学作品の中でもフェミニズムを直接にも間接的にも扱った作品たちが本当に増えました。そしてそのような文学的な作品を探しに来る方が増えたので、それを受けて私達もそのような作品を置いたので、またそれを受けてより多くの人が訪れるようになりました。

本当に増えたなという特定な時期のようなものはありましたか?

R: 私が作品をたくさん読む方ではないためきちんと追うことは出来てないので私が変化を感じた時期が社会的に大きく変化した時期なのかはわからないですが、そうですね。一昨年ぐらいだと言っておきましょう 。大手の出版社で作家たちを選んで与える賞のようなのがあるじゃないですが。そのような受賞作品が纏められた受賞集のようなものが出版されたときに、それをとても感じました。扱っているテーマが完全に変わったと。最初にこの本屋を開いたときの短編小説集とは大きく変わって、“クィア、フェミニズム”のテーマ、題材 として使われる作品がとても多くなったように思います。

それでは本の配置で工夫していることなどはありますか?

R:一律的に本が置かれているような配置ではないといいなとは思いはありますが、特に決まった基準はありません。実際本たちを非効率的に陳列しています。いろいろ変えたいところはあるのですが、それも難しいじゃないですか。それでも変化に気づかないぐらい少しずつ変化しています。

一つ思い出したのですが私が初めてこちらを訪問したときに、フェミニズムではなく2016年に“ろうそくデモ”写真集を買ったんですね。そのときフェミニズムの本屋で、直接的にフェミニズムと関係していない本が置いてあったことがとても新鮮でした。

それでその時考えたことがビーガンに関連した本もあり、フェミニズムというテーマにこだわらず多様な本のジャンルがあるじゃないですか。最初からそうだったんですか?それとも少しずつ店をやりながら変わっていったのですか?

R: 最初はこういうことをどうするのがいいのかと思っていました。これは私が興味あるテーマだけど、置こうか?置かまいか?こういうふう悩みながら少しずつ置くようになったらお客さんが時々「あ、こんな本があるんですね」とおっしゃるので「はい、ありますよ」と答えていくうちに置くようになりました。

あ、そのろうそく集会の写真集の場合は、私達の知人が制作に参加した本で“入荷しないか?”というので“それなら”と置くようになりました。正直関連がないということはいえない本で、いずれにせよ市民たちの動きによっておこった変化についての本でもあり、そのろうそくデモは全国で、フェミニズムのイシューがあったじゃないですか。そのように関連することもできます。ビーガンのような場合は私達も少しずつ関心を持つようになって、ビーガンについて思って置くようになりました。しかしフェミニズムと関連がないとは思っていなくて 、多様な存在に対しての尊重などは、はじめはフェミニズムの話、つまり女性についての話は当然、他の少数者(マイノリティー)に拡張していかないといけないと思っていました。特に今の世の中で一番他者化された動物たちにも視線を移すことができると思っています。 そしてビーガンというテーマ 私達の本屋で取り扱うことは当然のことだったと思います。」

2020年に、昨年コロナは大きな変化があったと思いますが、その時変化もたくさんあったとおもうのですが。コロナと限定するわけではないのですが、昨年変化のようなものはありましたか?

R:出版されるジャンルは多様になったと思います。だけどもしそのような傾向があるとしたら、私たちがインタビューを作るじゃないですか、なのでインタビュー集が出版されていることが目につきました。インタビューを元にして書かれていたり、またはインタビューを中心にした本がたくさん出たように思います。

これは、少しタルリ、ボムというより個人的に気になることなのですが。

ここにもたくさんあるのですが、どうしてバージニアウルフについて本があるのか、もしくは本当に多くて新鮮でもありとても衝撃的でした。

R: そう言われてみればそうですね。これはある出版社から全集が出たんですよ。

だけどその指摘は合っていると思います。今の状況に特に“自分だけの部屋”というキーワード自体がよくあっているので。そして『自分だけの部屋』だけでなく他の本たちも多く出版されている状況のことを仰っeているのでしょう。最初は“自分だけの部屋”が本当によく読まれて、売れたのですが、今はそれを超えて『自分だけの部屋』の女性作家について人々が「もっと知りたい」という思いからなのでは?と思います。そして興味深い点がとても多いじゃないですか。クィアー的な側面もありますし、他の女性パートナーとの関係と、そのことについても人々が、この人がどのような生活をし、どのような考えを持っていたということについて興味を持ったためではないか。

ヴァージニア・ウルフは、あまり注目を受けていなかった女性作家たちを再発見する流れ、傾向にあるように思います。韓国でも画家でもあり文も書く 100年前の人物である、ナ・ヘソク作家に対する本や研究が何年も前にとても多く出版されたんですよ 。そのような流れたちがある中で、バージニア・ウルフは“再脚光された”というほど知られていなかった人ではありませんが、それでも、“この人達に対してもっと知りたい“という欲望があったのではないかと思いがします。

インタビューを読ませていただいたのですが、その中に「女性が声を出すことのできる安全な空間を作りたい」というそういうことを読みました。日本に今年フェミニズム専門書店が出来たのですが、インタビューで同じことを言っていたんです。4年をされていて、この目標、指針を達成するために、作るために今行っていること、悩んでいることはありますか?

R: それは実は私達も店を開いていくうちに少しずつ複雑になっています。ここで意見をいう人達が安全ではなければならないことは当然のことだと思います。そしてここで集まって何かをするときも嫌悪発言のようなものは出ないように、もしそのようなことがあったら排除しなければならないですし、それが当然でなければならないと思いますし、その点ではずっと努力をしていています。

そして一方では安全だというイシューが実はフェミニズムについて話をすることを狭めてしまうと考えるようになりました 。ここが安全な空間にならなければならないのはもちろんですが、今安全を最優先事項に設定するとき、例を上げると淑明女子大学のトランスジェンダーの入学を拒否した時 にその学生たちが言った言葉が「安全」でしたよね。

私達の安全を害する存在。そして安全という基準が、基準になったら言葉自体が曖昧になるような結果、つまりもっと重要な、異なった価値を見えなくすることもあるかもしれないという考えを持つようになりました。私達と他所を分けてしまう口実になることもあると思うようになり安全という言葉を使うのがとても注意深くなりました。

そのような社会的なイシューたちがあったのでそれにもとにかくここのなかでは保護されなければならないのはそうなのですが、そのような前で人々が自分の話を心置きなく話すことができればよいと思っています。

今おふたりが一番注目しているフェミニズムと関連している、それだけでなくても大丈夫なのですが、関心がある、問題もしくはトピックのようなものがあれば

R:フェミニズムと関連した話かどうかはわからないのですが、ソウル市長選挙と関連した。

でも本当にもう一階考えてもムカついてくるんですよ。

与党でその男性候補が予備選にでている、一番注目を受けている人の1人が少し前になんだっけ?朴元淳をなんて言ったっけ?とにかく、変なことを言ったのですが、ずっと有力候補という状況がとても腹が立ちます 。ここで、フェミニストの候補たちが何らかの動きを作ってくれたらよいのに、という思いはあるんですが、正義党 が、進歩政党のなかに国会に入っている野党なんですが、今回候補を出さないことになって、その理由が正義党のなかでの性暴力事件 があって、こういう状況に憂鬱ではあるのですが関心を持っています。

S: 私も同じです。

私達が住んでいるソウルだから、そこで一番大きい決定権を持っている人なので、市長が変わればまた多くのことが変わるじゃないですか。しかしこのひとがこのような発言をしたのでとても暗澹としているというふうに思うし、すごく怒りを覚えますがどうやって変えることができる?と悩みます。しかし対応策がないという点がとても難しいと思います。

R: そして、 禹相虎という与党の男性の候補 、その人は586運動 を象徴する人物なのですが、朴元淳を継承しているその発言は矛盾的な部分をずっとあるのですが自身が弱者を代弁しているようにフレーミングしていることがとても問題だと思います。

出版社、そして書店をしながら感じる“面白さ”がなんですか?

S:人々と会うこと、そしてここで人の縁が出来ること。このような縁は本屋でなければ作ることが出来なかったと思います。そしてとても嫌な関係たちもここにいれば、作らなくてもいいし、避けることもできるし、そして喧嘩する事もできます。ここにいるから自分たちに合う人達ともたくさん会うことが出来ます。

R: 友達が増えました。

S:そういう人たちが増えていくのも大きな魅力だと思います。なのでそのような人たちと会いながら、また面白い出来事が起きます。この本 (下記:左側)も常連でいらっしゃった方が音楽をされていて、それで一緒に作業することになりました

そして今このような本 (下記:右側)が出版される瞬間、私達が作ったものが実際に世の中にでて人々がこれに対して感想や反応を送ってくれることがとても楽しいです。