母の日

2017.05.14 14:04

和やかに夕食を終え、相棒の散歩から帰ってから、ぼんやりとテレビを見ていたときのことだ。


『あんなぁ。お父ちゃんのことで悩んどって、息子と口きかんようになっとって、ごめんなぁ』って、母が言うのよ。


『何それ?いつの話?』


『だいぶ前。脳梗塞になる前の話。切羽詰まって、首吊って死んだろかと思よったんじゃあ』


『そんなこと、今さら言いなんな』と、母の手を握って言うと、涙腺決壊。


母が、無口になって、引きこもりがちな暮らしぶりになっていたのは、もちろん気づいていた。


年に数回、精神科に通って、眠剤を処方してもらっていたことも。


しかし、母の口から、その当時のことを直接聞いたのは、初めてだった。


そんなに行き詰まってたのに、ボクにも話せなかったのか…。


お母ちゃん、ごめんなぁ。


生きててくれて、ありがとうなぁ。


ちょっとせつない、母の日だった。