藤井道人、上田慎一郎、三島有紀子ら日本の注目株監督が、広島からの激励に大感激!広島国際映画祭2021 映画『DIVOC-12』特別招待上映
21日、広島県広島市のNTTクレドホールにて開催された広島国際映画祭2021にて映画『DIVOC-12』が上映され、上映後に作品を手掛けた藤井道人監督、上田慎一郎監督、三島有紀子監督が登壇。プロジェクト発足に至った経緯や作品作りのエピソードなどとともに、映画監督ならではの映画業界「あるある話」などで花を咲かせるなど、会場を盛り上げました。
映画『DIVOC-12』は新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けたクリエイターや制作スタッフ、俳優に向け継続的な創作活動を支援するために立ち上げられたプロジェクトにて製作された短編オムニバス作品。藤井監督、上田監督、三島監督らを中心とした12人の監督による12本の短編で構成されています。 さらにキャストには『青の帰り道』などの横浜流星、『君が世界のはじまり』などの松本穂香、『シグナル100』などの小関裕太をはじめ石橋静河、窪塚洋介、清野菜名、笠松将、前田敦子、仙波清彦、富司順子、藤原季節、中村ゆりなど、若手やベテランを織り交ぜバラエティ―に富んだメンツが名を連ねています。
広島国際映画祭の前身である「ダマー映画祭inヒロシマ」時代より映画祭にゆかりのある藤井監督と、今回この映画祭に初参加となった上田監督、三島監督。三人がつながりを持ったのは10年ほど前、かつてドイツのフランクフルトで行われた映画祭での出会いからでした。それ以前からもお互いの存在は知っていたものの、直接のコンタクトを持ったのはこの機会であり、ふと「映画監督って、映画祭で会う機会がないと顔を合わせる機会ってあまりないですよね」と上田監督。一線で活躍する監督が集うだけに、「あるある話」が盛り上がります。
一方、いきなり自分で映画制作をスタートさせた藤井監督、上田監督とは対照的に助監督時代を経験した三島監督が感じる映画業界の構成も興味深いところ。どちらかというと上下の関係がフワっとしたあいまいなものと感じているという前者に監督に対し、三島監督は「完全なタテ社会。でもそれはそれで面白いと思いました」と業界の印象を語り、そんな二人をはじめとした多くのクリエイターとともに進めた今回の制作も非常に新鮮に感じた旨を振り返ります。
また処女作は40分ほどの中編だったという三島監督に対し短編製作で映画製作の道をスタートした藤井監督、上田監督。短編/長編の違いについては「短編はいわばワンアイデアだけど、長編は自由な表現ができる。ただ、僕は(短編作りのように)制約がある中で作るというのも面白いと思うんです」とコメント、この思いに関しては上田、三島監督ともに同意見の様子。
そんな中、お互いに本作品群の印象に残ったポイントを語る一方で、このコロナ禍における製作への影響の変化。藤井監督はコロナ禍においても撮影を続けていた状況の中で「(コロナ対策を取り入れることに)慣れてきたこと」を印象なものとして上げ「一年前は撮影時にコロナ対策というととても困惑していたけど、今ではどうすれば安全にできるかということに対して慣れてきたように見えたのは驚きました」と、撮影に留まらず社会的な変化に対しての印象を語ります。
一方、そのような変化がある現状を考えつつ、上田監督は「個人的には“元に戻る”ということを期待はしているけど、戻るのかな?とも思うんです。でもそんな未来のことなんてわからない。だったら作るしかないでしょ?未来を自分の行動やエンタテイメントを使って提示していくしかない」と自分なりの思いを明かします。
この思いに三島監督は「例えば表現方法とかは変わっていくこともあるでしょう。でも人間を見つめて、それらの要素をどのように作品に落とし込むという仕事の根幹の部分は変わらないと思う。だから自分はそれを続けていくだけだと思うんです」と同意しつつ「このコロナ禍という今の状況こそ人間が見える瞬間ではないか、このきっかけだからこそ見えてくるものがあるんじゃないかとも思います」とクリエイターとしての前向きな気持ちを語ります。
今回のプロジェクトの続編はあるかという問いに対して藤井監督は「『DIVOC-12』の続編という話はありませんが、今回のように(新しい才能を)育てていくような機会を作っていくことは必要だと思います」と、直接観客と接するこの映画祭の大切さと同等なものとしてダブらせた自身の思いを語りました。
広島国際映画祭初参加の上田監督は「“この映画祭に出たいから”という思い出映画を作ることもある」と、映画祭の好印象とともに自身の思いを振り返ります。またこの日はサプライズで映画祭代表の部谷京子さんがサプライズで監督たちに花束を贈呈。「よう来たね!ありがとう!また(この映画祭に)帰ってきて!」と激励の言葉を浴びせると、三島監督は「早速明日、瀬戸内の島にロケハンをして帰ります」と新たな作品作りへの意欲とともに感激の思いを返答しました。
藤井道人 プロフィール
1986年生まれ。日本大学芸術学部映画学科卒業。大学卒業後、2010年に映像集団「BABEL LABEL」を設立。伊坂幸太郎原作『オー!ファーザー』(14年)でデビュー。以降『青の帰り道』(18年)、『デイアンドナイト』(19年)、『宇宙でいちばんあかるい屋根』(20年)、『ヤクザと家族 The Family』(21年)、など精力的に作品を発表しており、2019年に公開された映画『新聞記者』では、第43回日本アカデミー賞で最優秀作品賞含む6部門受賞、他にも映画賞を多数受賞。ドラマ「新聞記者」(Netflix)は、'21年に配信予定
上田慎一郎 プロフィール
1984年生まれ、滋賀県出身。中学生の頃から自主映画を撮りはじめ、高校卒業後も独学で映画を学ぶ。2009年、映画製作団体PANPOKOPINA(パンポコピーナ)を結成。 『お米とおっぱい。』『恋する小説家』『テイク8』等8本の映画を監督し、国内外の映画祭で20のグランプリを含む46冠を獲得する。
2017年、初の劇場用長編『カメラを止めるな!』が2館から350館へ拡大する異例の大ヒットを記録。三人共同監督作の『イソップの思うツボ』が2019年8月に公開、そして劇場用長編第二弾となる『スペシャルアクターズ』を同年10月に公開する。
2020年5月、監督・スタッフ・キャストが対面せず“完全リモート”で制作する作品『カメラを止めるな!リモート大作戦』をYouTubeにて無料公開。同年9月、新作映画『ポプラン』製作開始。2021年7月には妻のふくだみゆきと共同で監督・脚本を務めた『100日間生きたワニ』が公開。
三島有紀子 プロフィール
18歳からインディーズ映画を撮り始め、大学卒業後NHKに入局。「NHKスペシャル」「ETV特集」、震災特集など市井の人々を追う人間ドキュメンタリーを数多く企画・監督。03年に劇映画を撮るために独立し、東映京都撮影所などでフリーの助監督として活動、NYでHBスタジオ講師陣のサマーワークショップを受ける。監督作『幼な子われらに生まれ/ Dear Etranger』(17 年)で、第 41回モントリオール世界映画祭で審査員特別大賞、第 41 回山路ふみ子賞作品賞、第42 回報知映画賞では監督賞などを多数受賞。最新作は『Red/Shape of Red』(2020 年2月公開)。他の代表作として『しあわせのパン/ Bread of Happiness』(2012)、『繕い裁つ人/ A Stich of Life』(2015)、『少女/ Night's Tightrope』(2016)など。
映画『DIVOC-12』