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kojinkai

置き換えのトレーニング。

2017.03.04 15:52

 「ひらめき脳」が今回の国語の文章題の題材でした。もちろん茂木健一郎さんの書籍です。その論説の設問の一つにこんな問題がありました。


 


 ”西田さんのいう「哲学の道」とはどのような道か。”


 


 本文を要約すると以下の通りです。


 


 普段通らない道を通ると、新しい情報が脳へたくさんいってしまう。しかし、普段歩きなれている道を歩くと、余計な情報が脳に入ってこないからリラックスできる。インスピレーションは、そんな「思考の空白」を埋める時に湧いてくる。


 


 で、生徒が書いた解答は以下のようなものでした。


 


 ”普段から歩きなれているリラックスできる道”


 


 しかし、解説はこうでした。


 


 ”歩くとインスピレーションが湧いてくる道”


 


 生徒はすぐに文句を言いました。「確かに、インスピレーションが湧く道って書いてあるけど、この場合リラックスできるっていう情報も必要じゃないかと思うんです。リラックスなしにインスピレーションは湧かないって筆者も言ってます。哲学の道にリラックスっていう要素は絶対必要だと思います。でも、それを入れようとすると文字数制限に引っかかって入らないんです。だから、色々迷ってリラックスできるっていう理由の方が大切だと思って自分はそういう解答にしました。確かに先生から言われてから改めて考えると、「哲学の道」の部分に”歩くとインスピレーションが湧いてくる道”を代入すると文の意味を変えずに読めますけど、自分は絶対にリラックスっていう言葉は必要だと思うんですが・・・。」


 


 確かに、リラックスをそのまま入れると字数がギリギリ足りない。だから、生徒たちには「じゃあさ、とりあえず設問の意図は置いていて、君たちの理想を満たす解答を字数制限の中に収めてみない?手始めに、リラックスってなんか別の言葉に置き換えてみよう。リラックスって同じ意味のもっと短い言葉にできないかな?」と投げます。「安心!」「ゆったり!」「ゆっくり!」「穏やか!」・・・色々出てきますが、今回は、安息っていう言葉で行こうってみんなで決めて説明スタート。


 


 ”歩き慣れ、安息の中でひらめきが湧く道。”


 


 でも、なんか変だな〜しっくりこない・・・やっぱり解答が一番いい説明なのかな・・・いや、でも・・・やっぱりリラックスは別の言葉にした方がいいかな・・でも分からない・・・と、ずっと文章とにらめっこしては記述に悩んでました。しかし、その時に生徒が言ってました。


 


 「先生、この問題に限らず結構熟語知ってないと抽象化したり置き換えたりできませんよね。俺、熟語に置き換えるっていう時になかなか言葉が浮かばなくて、改めて漢字をちゃんとやって言葉をもっと知らないといけないと思いました。」


 


 これ、4年生の言葉なんですよ。既存の解答にケチをつけたのも、この解答を作り出したのも、実は4年生です。今日もいい気付きがありました。もともと説明力については優れていた子でしたが、ここ最近読解授業を解説付きで行いながら、実に構造的に文を理解しようという努力が見られ、実力に理屈が伴ってきていることを感じます。


 


 そして、よくぞ気づきました。私がこれほど現在小学生相手に難度が高い熟語指導にこだわってやっているのも、こうやって文章の記述で問題が起こった時に類語を探し当てて置き換えられるからなのです。改めて、今後の漢字学習にさらに意味を持って取り組んでもらえるだろうと思います。


 


 私は国語指導が最も好きです。生徒の脳みその状況を最も精密にはかりとることができ、数値上に現れない力も多いのですが、ある文章から一体何をどの程度読み取れているのか、すごくよく分かるからです。どんなに伸びていても、国語が成らぬ子は実に微妙な成績帯に落ち着くことが多く、やはり国語科指導には目を離せないことを確信しています。