小数は意外と難しい。
小数と分数の単元は、計算だけは大変シンプルで、あっという間に習得してしまうことができます。一方、この単元は単位量計算や割合計算と親和性が強く、曖昧な仕組みの理解で止まっていると、即座に応用問題でミスを頻発させ始めます。
「1.6は、6.4に対してどれくらいの割合(何倍・いくつ分)か。」
6年生にもなると、個数感覚で16個と64個を比べる。64を1(つ分)として捉え、それから見て比べると、16は64分の16(こ)の大きさになる。約分して、1/4。こんな発想に至れるけど、割り算の式で表そうとする時に問題が起こる。なぜ、1.6÷6.4なのかということだ。分数を割り算に直す、その方法は5年生で習得するから、その時点では無理やり理解したことにできるけれど、実際はどんなにできる生徒でも曖昧な場合が多いのです。その意味では、実際は割合は分数によって理解した方が理解しやすいことの方が多いです。
そもそも、0.1個分とか0.01個分という考え方が薄い、あるいは存在しない(!)上に、割り算自体がどういう意味合いのものであるのかが分かっていない。割り算っていうのは、0.1個分や0.01個分の単位まで含めて、相手を自分で分けていける演算なのです。
とか、いろいろ理屈をこねくり回しても生徒には通用しないから、どうにか毎年分かるように説明を試みるのですが、やはりなんとか文面を読み、字面の形でどっちからどっちを割るという感覚を無理やり作っているに止まってしまうことが多いのです。だから、割合を解かせてみると数問に1問くらいは逆に計算をしていることがあるのです。これでは、とても応用問題は解けません。
●●を1とする。この文言は嫌という程聞かされます。一方で、この1の扱いがよく分かっていないことが本当に多いから、とりあえず1としたもので割る、つまり、もとにする数でとにかく割れ!っていう乱暴な指導で良しとされてしまうきらいがあります。まあ、大抵は●●を1とする、がまず分かっていなくて、そこから指導をしないと本当はいけないのですが・・・。この指導もあと一歩なのですごく惜しい指導ですが、実際「く・も・わ」なんていう逃げ道に助けられて、本当に理解しなければいけないことをないがしろにしてしまっている生徒もいるようです。
割合指導は、その前提となる小数の仕組みや割り算の本質的な理解に頼るところがあります。毎年、完璧に、綺麗に理解されている様を見るのも稀です。最近は、低学年から継続して指導を受けている生徒が多いので、しっかり理解されているのを見てホッとすることも多いのですが・・
実際は、4年生で小数を含む倍数指導が行われ、5年の割合まで行かずとも小数の仕組みを習っている4年生でその準備ができています。中学受験の基本は4年生。そうやって言われるのは、小数と割り算の理解度によって、5年の領域の、そこに関わる理解が左右されるからでしょう。そして、6年生ともなると完全に抽象化されて、それは一つの”感覚として”当たり前のように内面化されていないと、算数をやっていて何らかのできている実感が欠けてしまうことでしょう。
4年生の授業で最も時間をかけるのは、まずは大きな数。次に概数。そして、小数です。数量感覚というのがとても大切なのです。特に小数は、積と商を扱うときに注意を払っていきます。私は、それくらいに4〜5年生にかけての小数理解に警戒をしているのです。