20代で海外へとびだしシンガポールで起業。学歴や実績がなくても海外でキャリアを築く秘訣は、自分が評価される環境を見つけること~ヘアメイクアップアーティスト Mawakiさん~
「海外で働いてみたい」と考えたことはあるものの、今の環境から飛び出してまで海外へ行くべきなのかと葛藤する方もいるのではないでしょうか。
今回お話しを伺ったのは、WWD Beauty Japan にて次世代を担うメイクアップアーティストの1人として紹介されるなど、シンガポールをベースに、東南アジア、日本国内外でメイクアップアーティストとして活躍するMawakiさん。
英語をほとんど話せないまま20歳の時に初めて海外での仕事を経験。その後も、フランス、イタリアやモナコなどヨーロッパ各国にて、ヘアメイクとして経験を積み、誰一人知り合いのいないシンガポールで起業をしています。さらに、2020年には某海外トップブランドの外部トレーナー(アジア担当)も勤めています。
そんなMawakiさんに、海外での経験が自分のキャリアにどのように活きているのかPRライターのMina Nagashimaがお伺いしました。
年功序列に違和感を持ち、早く実践経験を積みたいという想いから海外へ
───海外へ行くことになった経緯について教えてください。
Mawaki:とにかく順番待ちをしたくなかった、という気持ちが強かったからですね。
20歳の時にはじめて行った海外はオーストラリアで、そこでメイクさんという仕事と出会い、それから帰国しメイクの専門学校へ通いました。そして、メイクの専門学校を卒業してから東京で1年ほど働かせてもらったのですが、年功序列であるとすごく感じたんです。
今は少し変化してきているかもしれないですが、当時は40代前半のメイクさんでも若手と言われるような時代でした。自分がメイクという仕事をこれから一生続けていきたいかわからない状態で、メイクさんになるためだけに何十年という自分の時間を使うことに違和感がありました。
また、当時活躍されていたメイクのプロの方たちも「成長するには現場に入り経験することが大切だ」と話されていたので、それで決心がつき海外に行くことにしました。
「海外に行ったら実践経験が積める!」というのは、僕の海外に対する単純なイメージでした。日本では、とにかく順番待ちをしなければいけない未来が見えていたけど、海外に行ったらどうなるか先が見えないからこそチャンスがあるのではないかと思ったんです。
───実際に海外へ行かれてどうでしたか。
Mawaki:想像と変わらなかったことは、海外は実力主義であることと、自分次第で実践経験をたくさん積むことができたことです。
ギャップを感じたこととして、当時フランスへの憧れからフランスで仕事をしようと思っていたのですが、実際に行ってみて合わないなと感じましたね。合わないと感じる理由はいろいろあったと思うのですが、僕の場合は、ここに長く住みたいとは感じなかったんです。
それから、ヨーロッパの他の国にも行き、最終的にシンガポールに行ったのですが、やはりアジア人同士だからなのか疎外感も感じずここでならやっていけると思いました。
やはり、想像と実際に行ってみるのでは感じ方が違うので、とにかく行ってみて自分で体験する、自分との相性を確かめるというのは大事だと感じます。
海外でも活躍する秘訣は、自分が評価されやすい環境を見つけること
───どうしてシンガポールで起業をすることになったのでしょうか。
Mawaki:ビザを取得するためにシンガポールで起業することになりました。
当時シンガポールでは海外から若い経営者を集めて自分の国の雇用を増やすための施策を考えていたんです。僕は中卒なので海外でビザを取得することが難しく、たまたまネットで調べていたところ起業家ビザを見つけ、ビザを取るために会社をシンガポールで設立することになりました。
もちろん日本で会社を設立するよりも大変でした。わからないことがあってもすぐに誰かを頼れるわけではなかったですし、書類も全て英語でやらなければならなかったため、本当に手間がかかりました。
それでも、当時は海外でやってみたいという気持ちが強かったので、好きなことをやるためには、その過程の苦手なこともやらなければという気持ちでいました。
なので、起業は海外で仕事をしたい、住みたいという目的を達成させるための手段でしたね。
───海外トップブランドの外部トレーナーを勤めたこともあるそうですが、どのようにしてこのようなキャリアを築いてこられたのでしょう。
Mawaki:これまでシンガポールでハリウッド女優さんのメイクも何件か担当させていただいたのですが、僕がここまでやらせていただけたのは自分がアメリカでも日本でもなく、シンガポールにいたからだと考えています。
1万人の中の1人を見つけてもらうってすごく難しいじゃないですか?でも、シンガポールの日本人のメイクさんというと今は100人程いますが、僕がシンガポールで起業をした当時は10人もいないぐらいだったんです。なので、自分に声がかかる確立が上がりますよね。
シンガポールで日本人メイクアップアーティストが必要になったときに見つけてもらいやすい。計算してこのようなキャリアを築いていたわけではないのですが、目の前の人にできることを精一杯やっていた結果、自分のポジションが確立していきました。
海外で実績や経験をつけたからこそ、日本で勝負できる自信がついた
───海外で実績をつまれたうえで日本に帰ってきたのはなぜでしょうか。
Mawaki:海外で自分なりの経歴や実績を積みあげてきたので、やっと日本でも勝負できる自信がついたからです。
「このメイクの仕方がいいよ」など、ほかのメイクさんに言われても揺るがない自分ができました。なので、自分が海外へ行く前にやりたいと思っていた日本の有名な方々のメイクの仕事をしようとしていました。
でも、結局その土俵に立つのではなく、現在興味を持っているのは一般の方向けのメイクです。有名な方であればきれいにするメイクの正解というものがすでに存在していることが多いです。一方、一般の方向けのメイクは正解が存在していないので「自分らしい美」に対して1人ひとりと向き合いながら模索していくのが難しくもあり、楽しいんです!
実績や経験があるからこそ、誰にも何も言われず自分の興味のあることを追求しながら仕事をしていけるのだと思います。海外10年間で積んできたものは、自分がやりたいと思うことを実現するためへの近道だったと、振り返って思いますね。
───最後に海外にこれから行こうとしている人へメッセージをお願いします。
Mawaki:海外に行きたいと思っているならば、ぜひ行くことをおすすめします!もちろん、明確に目標や目的を決めて行動をすることもすごく大事だと思いますが、「なんとなくやっちゃう」という精神も、人生において意外と重要なことだと思います。自分が経験したことは絶対に自分の中に蓄積されていきますが、お金で経験は買えないですからね。
また、今となっては笑いごとですが、僕は海外に行く前にメイクさんになったらやりたいことがいくつかって、海外の大学で講師をする、ハイブランドからお声がかかる、ハリウッド関係の人と仕事をする、日本のタレントさんのメイクをする……それだけは夢として持っていました。
当時から考えると、日本で中卒の人が何を言ってるんだ、と思われていたと思いますが、今では全部叶えました。
海外に行く前は、先が見えず本当にいいのだろうかと迷うこともあると思いますが、自分の心の中の野心に耳を傾けて素直に従ってみることも大切だと思いますよ。
インタビューを終えて
今回Mawakiさんのお話しを伺って、海外に行った理由やキャリアの築き方に対して自分なりに道をつくっていくことの大切さというのを改めて感じました。道が見えないからこその楽しさや不安を含めて楽しむことが大切であると感じます。1人でも多くの人が自分らしいキャリアを築けることを願っています。
(取材・執筆:PRライター Mina Nagashima / 編集:山崎春奈)