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ゆとりらYOGA

「アナザーラウンド」(映画感想)

2021.11.24 12:43

「デンマークの至宝」と言われているらしい、美しい俳優、マッツ・ミケルセンに魅かれて、劇場で観てきました。

これを観て初めて知ったのは、デンマークには違法飲酒の罰則がないということ。16歳未満はアルコールを購入してはいけない、という法律はあるけど、飲んではいけないという法はない。だから5歳で飲んだって本人も保護者も咎められない('Д')
この映画では高校生たちがパーティーでビールを煽って湖畔を1周するゲームをして、途中でオエってなったりしてるシーンから始まります。

4人の少々くたびれた高校教師達が、それぞれ悩みを抱えていて、ひょんなことから、体内のアルコール濃度を「常に」0.05%に保つことで、仕事も趣味もうまくいく、という論文を見つけて、我々で生体実験しよう!ということになって…というお話。


私は飲酒の習慣はないのですが、依存関係が深まっていく感覚は何となく想像がつくので、じわじわと手綱が自分の手からアルコールに移っていくその過程を観ていて「ああ…ここでその1杯ガマンできてたらねえ…」とハラハラしながら観てました。

だけど、この作品は、お酒ダメ、ゼッタイ!というストーリーでは全然なくて、かといって、お酒と上手に付き合っていこう、というお話ともちょっと違って、

「お酒によって炙り出される、自分が封じ込めていた(或いは今まで気づいてかなかった)感情にどう向き合うか」が描かれていると思いました。


4人の中には、きちんと向き合えて現状を打破できた人もいれば、そうでない人もいる。主人公のマーティン(マッツ)は夫婦関係の悪化から親子関係までぎくしゃくして、でもそれの原因はお酒ではない。お酒はその問題が表面化するきっかけに過ぎない。

お酒を単なる「悪しきもの」にしていないし、生徒達に、緊張してるならちょっと飲めよ、とか言っちゃう。

お酒のない世界に逃げることは出来ないのだから、とにかく手綱を自分の手に取り戻さないと!と煩悶する様子が随所に散らばっていて、エピソード毎にゆらゆらっと感情も揺れました。

お酒に限らず、対象が何であっても、それなしではいられない状態になったらそれはもう依存症。

でもそれを認めるのってすごく大変。自分自身を冷静に客観視しないと、認識に繋がらないから。

ラストのマッツ・ミケルセンの躍動感は泣けるほど美しかった。だけどここからまた立ち向かう人生が続くわけで、そこにまた傍にアルコールを置いてしまうと、立ち向かう対象が増えてしまう。

全然ハッピーエンドじゃないのにこの多幸感なに?って感じでした。不思議な美しさ。