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四国防災八十八話倶楽部

【コラム4】鮎喰川の堤防決壊を畳で防いだ!

2021.11.29 07:07

みなさんは,畳堤をご存じですか?

その名の通り,普通のコンクリートの堤防とはことなり,畳の堤防です.川が氾濫しそうになった緊急時に,各家の畳を持ち寄って川沿いに設置された枠にはめ込み水の侵入を防ぎます.


現在のところ,五ヶ瀬川,長良川,揖保川には現存しており,

特に,揖保川では平成30年7月豪雨で初めて畳堤が配置され,

降りしきる雨の中,住民らが畳を100枚差し込んだことが話題になっています.

https://www.mizu.gr.jp/kikanshi/no62/04.html


四国防災八十八話の第16話「百畳敷のお寺」のお話にも,この畳堤が登場します.

昔(江戸時代ごろ)は,大雨が降り,那賀川の水が堤防高の七分目くらいの水位になると,地域の人々がお寺の畳を堤防に運んで洪水に備えたそうです.


残念ながら,那賀川の畳堤は現存しないのですが,鮎喰川で畳を使って堤防決壊を防いだお話を地元の方にお聞きすることができたので紹介させていただきます!

お話を伺った方は,御年76歳(1945年生まれ)の谷川さんです.


鮎喰川で畳を使って堤防決壊を防いだお話は,谷川さんのお父様からの聞き伝えではありますが,当時の様子を語ってくださりました.


当時,消防団が鮎喰川周辺を見回りしていたところ,台風による増水で堤防が崩れかけている所を発見.崩れないようにするために,近隣の農家に畳の提供を呼びかけ,一家から4~10枚の畳を合計50~60枚集め,下のイラストのように畳を設置し,穴をふさいだそうです.穴が深い場合には,今でいう土嚢(ドンゴロス)を入れて埋めたあとに,その上から畳をのせてました.昔の畳はとても重く,がっちりしていたため,それを上にあてるだけで応急処置になったようです.

(上記イラストは,お話をきいていた学生がイメージ図として描いてくれたものです.)


設置の際には,命綱を付けた団員が腰まで水につかり,竹の杭を四隅にうって畳を固定するといったとても危険な作業だったようです.その後,畳の上を縄の紐でしばり,水かさが減ってくると畳の下に,また畳を差し込むといったようにして手当をしていたとのことでした.


吉野川の水位が高くなると,鮎喰川にその水が逆流してきます.満潮時を超えると水は引き,4時間くらいは絶えしのいだそうです.


堤防が切れかかかった場所は,JR徳島線の北西側で,丁度,水防竹林が植えられていた箇所との間に位置します.谷川さんの見解では,JRの橋脚の向きが川の流れと同じではなく,少し北西向きに造られており,吉野川から逆流してきた水が堤防にあたり,さらにその先には竹藪があったために,水の勢いが集中し,堰上げが起こったのではないかということでした.

現場に行ってみると,確かに橋脚が向いている方向に堤防がありました.


以上が,谷川さんのお父様から伝え聞いた,室戸台風時に畳で堤防決壊を防いだお話になります.

私は当初,お話を伺うまでは『畳で堤防決壊をふせいだ!?どうやって?』と信じられなかったのですが,お話を聞くと納得です.


『実務者のための 水防災・減災ハンドブック』をみると,現在でも畳や竹の代わりに,土嚢やブルーシート,木の杭を使った水防工法が紹介されています.

その水防法は重機やデジタル機器で防げることはなく,全て人力です!人の知恵とスキルでしか防ぐことはできません.


今回谷川さんからお話を聞けて,改めてそのようなことを思いました.