[2017.5.21]【提言】「シリア和平プロセスへの市民社会の参画に関する提言」
シリア和平ネットワークは、日本の市民社会からのイニシアティブとしてシリア和平のための環境醸成に向けて活動してきました。5月15日、私達は今月下旬にイタリアで開かれるG7サミットに参加する外務省に対し、「国際社会はシリア市民の声が和平や平和構築プロセスに反映されるようサポートせよ」との趣旨で提言書を提出しました。軍事や、政治取引や、大国間の利害調整のみで持続可能な平和は構築できません。本来主役であるべき市民の姿が尊重されるシリアの平和構築を私達は応援しています。誰も置き去りにされない世界が求められています。
外務審議官(経済担当)
G7 内閣総理大臣特別個人代表(シェルパ)
片上 慶一 様
シリア和平プロセスへの市民社会の参画に関する提言
2017年5月15日
シリア和平ネットワーク
移民・難民問題は、エルマウサミット、伊勢志摩サミットから継続して、G7の重要なアジェンダとなっています。その中でも特に、世界最大の人道危機と呼ばれるシリア問題は、発生以来7年目となりますが、益々混迷を極めています。根本原因の解決に向け、G7諸国のリーダーシップの発揮が期待されています。
シリア問題において、欧州諸国の関心が難民問題に集中する一方、米ロは対IS軍事作戦、トルコはクルド人問題と、それぞれの優先順位に基づいた対応を行っています。そのような中、ジュネーブやアスタナの和平協議の場においては、紛争の直接の当事者であり、受苦者でもあるシリアの市民の声が反映されることはありません。しかし、シリアの持続可能な和平と開発の在り方を考える上で、シリアの社会を構成する市民の役割を無視することはできません。たとえ、大国間の交渉や外部アクターの介入により、問題の政治的妥結や一定の軍事的解決が得られたとしても、シリアの市民による積極的な参画を求めなければ、同国における持続可能な和平は実現しません。
現在、国連機関やシリア内外のシンクタンク、NGOを中心に、将来のシリア像について研究・取り組みが進められています。ESCWA(国連西アジア社会経済委員会)は、シリア危機発生以前から現在までシリア政府の運営に携わってきたテクノクラートを集結させ、Future of Syriaと銘打った将来のシリアの国造りに関するプログラムの作成を進めています。シリアのシンクタンクであるシリア政策調査センター(SCPR)は、国際機関や専門家、NGO等、様々な関係者を集めて、シリアの今後の開発に関する対話の場を設けようとしています。
シリアにおける持続可能な和平を実現するためには、シリアの市民の声が同国の和平プロセスに反映されることが重要です。私たちシリア和平ネットワークは、日本政府に対し、現在進められているESCWAやSCPR等のイニシアチブを国際社会が支援するよう、G7の場において積極的に働きかけていただくよう求めます。
本年2月、東京にて開催したシリアの和平を模索する国際シンポジウムに登壇したSCPRを代表とするシリアの市民からも、このような国際社会の動きに対し賛同が示されています。
以 上