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【私立TOSS大学】第4回講義 幼児教育学

2021.11.26 14:29
初めに

こんにちは。ドラムの新次です。

今回は幼児教育学と題して、幼児期の音楽体験について絶対音感に着目し、すこーしだけ深掘りしてみたいと思います。

今回から目次を試験的に追加してみます。

クリックしてもそのトピックに飛べる訳ではありませんが。


目次

・絶対音感について

      絶対音感のメリット、デメリット

・コラム〜相対音感について〜


絶対音感について

世の中「絶対音感はすごい」という感覚は根強いです。

ピアノをポンと弾かれると即座に「ド」とか「ファ♯」とか言い当てられるのは、普段音楽に触れていない方々からすると、さながら手品のように見えることでしょう。


そんなことから、「聞いた音の階名(ドレミ)が分かる能力」を絶対音感と捉えられがちです。

しかし、捉えられ「がち」と表現している通り、本質的にはそのような能力ではありません。


結論、絶対音感とは「周波数を聴き分ける能力」のことを指すのが現在の定説です。

※ なんだかふわっとした表現になってしまっていますが、実はこの言葉、まだ厳密な定義がなされていません。暫定的に、周波数を聴き分ける能力だと言われていて、正しいとされていますが、研究が進むにつれて説が覆る可能性もあると思います。


音とは波です。空気の振動として伝わる音の波を聴き分け、「(この波は)ド」とか「(この周波数は)ファ♯」と脳が判断しているという訳です。


多くの場合、A(ラ)の音を440Hzでとるのですが、絶対音感保持者が440Hzの周波数を聴くとA(ラ)と聴こえる、880Hzならそれが1オクターヴ上がり、220Hzなら1オクターヴ下がり、と言った具合です。


また、絶対音感には程度があります。

ピアノだったら分かるけど声だと分からないというものだったり、ファもファ♯も聴こえ方は「ファ」である、と言ったばらつきがあります。このばらつきは、絶対音感という言葉の定義の曖昧さによって引き起こされている面もありますが、裏を返せば、このようなばらつきによって定義しにくいとも言えるでしょう。


そして、この絶対音感は幼児期の教育によって後天的に得ることができます。

適正年齢は4歳から6歳で、この期間に絶対音感を得られなかったら、もうその後は厳しいだろうというのが定説です。

というのも、絶対音感の体得に不可欠なものは脳の記憶領域であるため、なんでも柔軟に記憶する幼児期の脳が最も効果的に絶対音感を体得できると言われています。

(ちなみに僕は4歳から音楽教室に通っていますが、完全な絶対音感は体得していません。)

絶対音感のメリット、デメリット

ここまで読んできて、絶対音感が一般にどういう能力で何が出来るかは分かるけど、やっぱり相変わらず凄いことには変わりないし、デメリットなんてあるのか?

とお考えの方も多いかと思います。


もちろん、メリットもあればデメリットもあります。ここは景気良く、メリットを2点お話ししましょう。



絶対音感のメリット1点目は、言わずもがな周囲のハーモニーや楽曲の調性を問わず、階名を判断できる点でしょう。周波数の聴き分けなので、曲の調性によって聴こえが変わらない固定ド(コラムで後述)で考えることができ、コラムで後述の相対音感との大きな差の一つとなっています。

メリット2点目は、音程に対して正確な聴き分けが出来る点でしょう。チューニングから曲中まで自分自身がチューナーとなって、ぴったり正確な音程で演奏することが容易になると言えます。


さて、肝心のデメリットですが、

1点目は、周波数を聴き分ける能力という特性ゆえ、(個人差はありますが)440Hzから少しでもズレると気持ち悪く感じる点でしょう。440Hzからズレるとはどういうことかというと、一般的に日本のオーケストラはA=440Hzでチューニングを行うのですが、海外のオケになるとその基準は変わってきます。気温や湿度によってチューニングを微妙に変えるオケもあるので、そういったオケを聴くと、演奏会中ずっと気持ち悪いという最悪の事態になりかねません。

2点目は、西洋音楽しか聴けない、という点でしょう。西洋音楽は、タイミング、音程などとにかくキッチリ揃えて統率を取った演奏することを目指したジャンルですが、反対にアジア圏の音楽は不確定要素の多い音楽が伝統的に受け継がれている傾向にあります。不確定なのはタイミング、音程はもちろん、音楽の基本的なルール自体も西洋音楽より緩めです。揺れやズレを楽しむ伝統音楽を「気持ち悪い」と思ってしまうことになるのです。


幼少から音楽の英才教育を受けてきた人間が、その音楽の恩恵を受けられないという悲しい矛盾が生じてしまう、諸刃の剣なのです。


コラム〜相対音感について〜

絶対音感の対義語として、相対音感というものがあります。

※ もうお分かりだと思いますが、絶対音感は音程を聴き分ける能力ではないので、「相対音感って階名は分からないの?」という疑問は出てこない筈ですね。


周波数を聴き分ける絶対音感に対して、相対音感とは「基準となる音との音程関係を相対的に感じ取る能力」です。

噛み砕いて説明すると、

基準となる音、例えばドの音を提示してもらった後に別の音を弾かれると、瞬時に基準ドとどれくらい音程が離れているかを判断して「ファ」と階名を言い当てられる能力

と言えます。

相対音感の人は、絶対音感には出来ない「移動ド」という考え方が可能です。

例えば、ソラシドレミファ♯ソと弾かれて音当てクイズをした場合

絶対音感の人は「ソラシドレミファ♯ソ」と答え、相対音感の人は「ドレファソラシド」と答える傾向があるのです。それは、相対音感の人が音を間違えている訳ではなく、ドレミファ、、、という音程間隔をソラシド、、、に適応させるという考え方を行なっているから、ドレミファに聴こえてくるという仕組みです。これが、移動ドの考え方です。

説明文で書いた「相対的」とは音程の間隔のことを指す訳ですね。


この能力は年齢に関係なく体得することが可能です。訓練次第で誰でも、です。

音楽の知識も併せ持つと、高度な相対音感を体得することが出来ます。この一連をまとめて「ソルフェージュ」と言い表すこともあります。



文章中でちょくちょく書いた「個人差」についてお話しすると、例えば、

自分語りですが、私は「絶対音感寄りの相対音感」を持っています。

ピアノをポンと弾かれてドとかソとかは分かるのですが、恐らくそれは私の中に440Hzの12音階が揃っていて、それを基準にどの音かを判別していると自己分析しています。


この特徴だけなら相対音感ですが、

絶対音感保持者のようにHzがズレていることは認識できる(440Hz以外の音楽は気持ち悪く感じる)し、絶対音感保持者と言われる人の大多数が持っている「共感覚」を色濃く持っているので、絶対音感のエッセンスも混じった相対音感、つまり「絶対音感寄りの相対音感」と言えるのではないかと思います。



最後に

皆さんはどの音感をお持ちでしょうか。

YouTubeに絶対音感・相対音感テストのようなものも沢山あるので、試してみては如何でしょうか。


それでは今回はこの辺で。

次回は「共感覚」についてお話しできればと思います。

よろしくお願いします。