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【疾走コラム】走行距離約250km。世界で最も過酷なマラソン大会─サハラマラソン

2017.05.23 12:53

「サハラマラソン」は、総距離約250kmの寒暖差が激しいモロッコのサハラ砂漠を、7日間6ステージに渡り、食料や寝袋を自らで背負い、自給自足しながら進むアドベンチャーレースです。世界で最も過酷なマラソン大会と呼ばれる「サハラマラソン」。

本コラムでは、サハラマラソン2017に挑戦した、ランナーであり、モデルやリポーター・MCなど幅広い分野で活躍する矢原里夏さんに聞いた大会の様子を紹介します。

──サハラマラソンに挑戦することが決まった時の心境を教えてください


フルマラソンしか経験がなく、ウルトラやトレイル・アウトドアなども未経験の私にはサハラマラソンは未知の事がたくさんありすぎて、それが怖かったです。でも実際に出場してみたら「未知」は怖いものではなくて発見の連続でとても「楽しい」ものでした。

それに見飽きると言われていた砂漠の景色は、レース前の寝袋生活から含めて全く飽きる事なく感動し続けました。

−レースに向けて取り組んだことはありますか

サハラマラソンはレース期間中の食料・寝袋・緊急時用のサバイバルグッズなど、必要なもの全てを自らで背負いながら走るため、リュックの重さが12kgくらいになります(大会規定6.5~15kg)。それに大会から供給されるペットボトルの水を想定して、普段からリュックに15kgの重りを入れていました。

その重りの入ったリュックを背負って砂地を走る事に慣れるために海に行ってビーチを走ったり、寝袋で寝た事がなかったので自分の部屋でベッドを使わずに寝袋で寝たりしていました。


──レースでの目標について教えてください


まずは無事に帰ってきたいなと(笑)周りに私のサハラマラソン挑戦を面白がってくれる

ひとも沢山いましたが、わたしが無事に帰って来ないと笑えないので(笑)

その次が完走。それと写真を撮ることが好きなので、沢山写真を撮って「世界で最も過酷なマラソンを世界で最も楽しむ」ってずっと宣言していました。


──サハラマラソンを完走するポイントを教えてください


サハラマラソンの完走には三つの山があると思いました。

1つ目の山は「スタートラインに立つこと」。9割のひとがそれを越えられません。サハラマラソンというのを知っても出たいと思わないひとがほとんどです。「出てみたい」「いつか」と口で言っても本当に来るひとは少ない。色んな事情で諦めるひともいるし、実際にスタートラインに立つだけでもう最大の山は越えているのだと思います。

そして二つ目の山は「メンタル」、三つ目の山が「自己管理」です。

世界で最も過酷と呼ばれるこの環境をいかに楽しめるかがやはり重要なポイントだと思います。

自分の身体の声をきいてどう対応していくか。上は50度、下は8度と冷え込む砂漠で、自給自足をしながら250km7日間進み続けるためには、自分の身体と向き合い、コンディションを整えながら進むことが必要不可欠です。

山と言っても、逆にそれらができれば誰だって完走できるんだと思います。運動で一番走る事が苦手といってる私ができたんですから。



──サハラマラソンに出場して感じたことは?


ひとの可能性というか幅を感じました。

同じくらいだったペースで、毎日見かける両腕のない参加者の方がいて。3rdステージは山岳地帯だったので崖登りが多くて、手足を使ってよじ登らないと無理だったんです。でも彼は次の日もレースにいた。ということはあの崖を両腕使わずに登り切ったんだなと。

すごいな、どうやったんだろって驚いたし、まずこの大会に参加しようと思って実際に参加してること自体がスゴイ。

残念ながら彼は途中リタイアでしたが、彼の勇気や努力に比べたら私ったらなんて小さいんでしょうって。

世界には凄いひとが本当に沢山いるなって思いました。


──レース中“音楽”には触れていましたか?


スタート前日、レギュレーションの説明の前に音楽が流れ、出場者たちが輪になって皆で踊っていました。各ステージのスタート前にはかならず「Highway to Hell(AC/DC)」が流れ、初日は皆で歌いましたけど、二日目からは皆疲れて歌ってませんでした(笑)

個人としてはオーバーナイトステージと呼ばれる第4ステージ(約87km)で、持っていたiPhoneで音楽を聞きました。軽量化がシビアな大会なので充電器は持って行かず、このステージを乗り越えるための特効薬として持っていきました。真っ暗闇な砂漠で独りになってしまってすごく孤独だったので、音楽を聴いて「独りじゃない」と思える事ができて、本当にチカラになりました。イヤホンから流れる音楽で、未だかつてこれほど元気をもらったことがないくらい元気になりました。


──サハラマラソンのなかで音楽はどのような存在でしたか


音楽は走るパワーでした。

普段音楽を聴いて走る時は新譜を楽しんだり、LSDで飽きないように、といった理由でした。

でもサハラでは全然違った。パワーになった。音楽がこんなに走るガソリンになったことが今までなかったくらい。

歌詞の意味とか、いつも聞いていたのに、よりダイレクトに胸にきたし、何百回も聞いてるはずの曲なのに涙したり。真っ暗闇を泣きながら独りで進んでたオーバーナイトステージで、ただ「がんばれ」って言われるんだけじゃなくて、「そばにいるから。みてるから」って言ってくれたり、時に辛い気持ちを忘れて踊ってるように走らせてくれたり。

本当に独りぼっちになって前後数キロひとがいない真っ暗闇のオーバーナイトステージで「誰か」や応援してくれてる「あのひと」達をそばに連れてきてくれるのは音楽のパワーだなと思いました。



4月7日金曜日から17日月曜日にかけて、北アフリカのモロッコで開催された究極のウルトラマラソン。世界中から集まった挑戦者たちが、普段の生活から切り離されたサハラ砂漠で、1週間自給自足をしながら完走を目指しました。過酷な環境のなか、見事完走を果たした矢原里夏さんは、サハラマラソンで多くの発見や感動を得たと話してくれました。参加者にとって、サハラマラソンとは、単なるマラソンのレースを超え、自然のなかで自分を見直す貴重な体験であると言えるかもしれません。「音楽は走るパワーでした。」と自分の精神力が試される過酷な環境だからこそ、音楽に勇気づけられ、支えられ、楽しむことができたと語る矢原里夏さん。次回はサハラマラソンで彼女を支えた曲を集めたプレイリストを紹介します。


矢原里夏

第1回・学研FYTTE専属モデルオーディション・未来賞を受賞しOLからモデルへ転身。数多くのCMに出演すると同時に特技のスポーツを活かし、テレビやラジオなどのリポーター、MC・舞台などで幅広く活躍中。

[矢原里夏のサハラマラソン挑戦記]

http://fytte.jp/feature/series/cat370/

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