売れない芸人の売れない理由:水道橋博士のメルマ旬報る組vol.120
『テレビの果てはこの目の前に』/角田陽一郎
第11回“売れない芸人の売れない理由”
いろんなタレントさんがいますね。
タレントさんにも俳優や芸人さんや文化人、アーティスト等、いろんなジャンルがあります。
僕も24年テレビに携わってきたので、まさにいろんなタレントの方と仕事を一緒にしてきたのですが、その中で僕があるきっかけで確信した、“売れるタレントと売れないタレントの違い”という話をさせてもらおうと思います。
あくまで僕の感じた印象なので、「売れる・売れないなんて、そんなことじゃない!」って異論反論は全然ありな話ですが。
それは芸人さんの話です。
芸歴はそこそこありますが、まだそんなに売れていなくてこれから売れたいと思っている方です。
仮にYさんとしましょう。
僕がそのYさんと出会ったのは、芸人さんたちが出演するある舞台の演出をまかされた時でした。
その舞台にYさんも出演していたのです。芸人さん数人と3週間前くらいから、日夜集まって舞台の稽古を始めました。
その舞台は台本がおもしろく、また芸人さんもそれぞれの見せ場もたっぷりあって、稽古場はいつも楽しかったです。
稽古すればするほどおもしろくなり、みんな舞台の本番に向けてヒートアップしていきました。
しかし、チケットの売れ行きは芳しくありませんでした。
演劇チケットは各種プレイガイドで販売しているのと、関係者枠のチケットがあります。
いわゆる素人の方が演劇を公演するときには、その関係者枠のチケット分は、それぞれ手売りというノルマになって、「一人何枚売れ!」なんて興行もありますね。
この舞台は、一応出演者ノルマのないプロの興行でした。
なのでチケットなんて手売りする必要は全然ありません。
出演する芸人さんは、演者としてどれだけ舞台をおもしろくすれば良いかに集中していても良いわけです。
でもですね、チケットの売れ行きは芳しくありませんでした。
結局公演は7割くらいの売れ行きで終わったのですが、もっとお客さんに入って欲しかった舞台です。
舞台の公演のチケットが売れる・売れないは、その舞台の完成度の前に、どれだけ事前に耳目に触れるかにかかっています。
出演者の皆さんは自分のツイッターやフェイスブックを利用して告知したりしてPRにつとめます。
中にはそのSNSを利用して手売りをやっている芸人さんも多いですね。
この舞台も当然出演している芸人さんが手売りをしても良いわけです。
実際出演者の方々は何人か手売りをしている人もいました。
でもその稽古しているとき、その手売りを圧倒的な物量でやりきった男がいました。
キングコングの西野亮廣さんです。
西野さんは数年前自分の独演会のチケット2000枚を手売りで売り切った方です。
彼が自分のツイッターで日々の出没情報を告知し、その場で待ち合わせして、サイン入りのチケットを売って、一緒に写真を撮って・・・というのを地道に続けて2000枚も売ったのです。
それってものすごい労力です。
でも当日の会場に来たお客さんは、そういう意味でほとんど西野さんと直接会ったことのあるお客さんですから、普通の舞台よりもお客さんの空気が数段暖かく、“仲間な空気”になっていたのを覚えています。
直接本に人に会ったり話したりするとファンになっちゃいます。
そんなファンのお客さんが暖かいのは出演する方のテンションをさらに盛り上げます!
こうして西野さんのトークもさらにおもしろくなり、独演会は熱狂の中で超盛り上がったのでした。
そして2000枚手売りしたことはニュースにもなりました。
つまり2000枚売り切ったという西野さんの行為は、興行的な成功でけでなく、お客さんにとっても演者自身にとっても西野さんの芸人としての未来にとっても、すごく意味のある行為なのです。
そんな西野さんの独演会は、僕らが舞台をやっている時期と近くて、当然稽古中にも話題になりました。
僕はその西野さんの行為を話している稽古場で、Yさんを始め同業者の出演者の皆さんはどんな行動に出るんだろうって思っていました。
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