ガウディ建築「サクラダ・ファミリア」 バルセロナ編⑥
今回の旅で最終目的地にしていた「サクラダ・ファミリア」はバルセロナのシンボルでもあるカトリック教会です。1882年の着工からガウディ没後100年記念の2026年完成を目指して現在も建設しています。ガウディは後半生をサクラダ・ファミリアの建設と設計に取り組みますが73歳の時に路面電車の事故で亡くなり、その遺体は地下礼拝堂に眠っています。
サクラダ・ファミリアには3つの入り口があり、太陽の上る東側に作られたのが「誕生のファザード」で、聖母マリアの受胎告知からキリストの誕生を祝う内容の彫刻が施されています。
もやもやとした形のひとつひとつを丁寧に見て行くと人や植物の形をしていて、それが集合して大きな扉になっているのが分かります。
下の方に行くほど対象物が大きくなっています。
ふっくらとした鶏です。
羊飼いの礼拝。天使に神の子の誕生を知らされ、家畜小屋でイエスを発見する場面。
サクラダ・ファミリアの塔を眺めるわたしたちのようです。誕生のファサードは1930年に完成し、唯一ガウディが監修した部分になっています。
塔の上を見上げると先端の装飾を作っているのが見られます。
中心の緑色の部分は「生命の木」で、永遠の命・ハトは神の元に集まる信者と聖霊・木の下の白いペリカンは聖体の秘跡を表しているそう。宗教に基づいた沢山のエピソードが盛り込まれています。
ドアの部分には一面に緑と花、鳥や昆虫の彫刻が施されていました。これは日本人彫刻家の外尾悦郎さんによる最新の作品です。25歳の時にバルセロナに渡り35年以上にかけて建設に携わり、現在はサクラダ・ファミリアの主任彫刻家を勤められている方です。
非常に繊細で生命力に溢れた作品に感銘を受けました。
聖堂内部。ガウディは信者と神が一体となる、森のような空間を造ろうと構想しました。
天井に届く柱は枝分かれした樹木の形になっています。
壁一面のステンドグラスは美しいグラデーションを生み出します。
午前中に入場したので東側の光が強く差し込み、青々とした生命力を感じさせます。
西側は暖色になっていました。夕方になるとこちらの光が強くなるので、違った印象になるのではないでしょうか。何も考えずにただこの色の中で過ごしたいような気分でした。
入場券を買う時に事前に予約しておくと鐘楼を上る事ができます。
エレベーターで誕生のファザード側の鐘楼を登ると、生命の木のすぐ下までこられました。近くで見ると細かく作り込んであるのが見えます。
完成すると全部で18本の鐘楼と60個の鐘が取付けられるそうなので、もっと派手になっていくんですね。教科書で見たときはまだ飾りが付いていなかったので、実際に見てみたら予想以上にポップで可愛らしいなと思いました。
下りの階段は幅2mもなくて狭い空間です。人が多いとちょっと怖いくらい。
巻貝のように見えます。
鐘楼から戻って西側の「受難のファザード」へ。
ここはキリストの死をテーマに、最後の晩餐からキリストの磔刑、キリストの昇天までの有名な場面が彫刻されています。ガウディによる原画を元にカタルーニャ出身の建築家、スビラックスが担当しました。
柱の部分は人間の筋肉や骨の形をイメージしています。
十字架に磔にされたキリスト。誕生のファザードの優雅さとは対照的に要素をそぎ落としたシンプルな線で死の悲しみを表現しています。
イエスの使徒ペテロです。イエスを裏切った事を恥じ、悲しんでいます。
ペテロを包む布は「否定の比喩」だそう。
ローマのユダヤ総督ピラト。イエスの十字架による処刑を承認し、その決定の重さに困惑しています。現代的な彫刻はなんとも味がある顔をしています。形式にとらわれない表現はまた、長い年月をかけて沢山の人が携わってきた軌跡を物語っています。
サクラダ・ファミリアは訪れる者に生と死を感覚的に訴えかけます。天国があるならこういう所かもしれないですね。この幻想的な教会が完成する日を楽しみにしています。
ポルトガル・スペイン編 おわり