「黒縁脳メガネ」w/ オジンオズボーン
偉人の脳みそをもとにした、脳にかぶせる黒縁脳メガネが開発された。
この黒縁脳メガネを簡単な手術によって脳みそにかぶせることで、脳のしわの形がその偉人のものに似はじめて、やがてその偉人の記憶やスペックを会得できるようになるという。
たとえば、エジソンの脳みそをもとにした「エジソンモデル」の脳メガネや、アインシュタインをもとにした「アインシュタインモデル」のものなどがあった。
最初のうちは少数限定生産だったが、メガネ開発のノウハウをもった鯖江市の全面協力によって、ついに量産化体制が整い、世の中に広く普及した。
学校などでも推奨され、世間は天才たちの脳を持った人々であふれかえり、いろいろな課題が次々に解決されていった。
そんな中、逆に、何でもない個人の脳の型に注目する動きがではじめて、特定の誰かの脳をもとにした黒縁脳メガネがオーダーメイドでつくれるようになった。
この新製品の発表を受けて、ぼくもオーダーメイドである人の脳メガネをつくろうと思った。
どうしても作りたかったのは、死んだ父の脳メガネだ。
じつは小さいころから、父との関係はあまりうまくいっていなかった。いつもケンカばかりしていたし、大きくなってからは、ろくに口もきいていなかった。
だからこそ、父が急病で亡くなったときに深い悲しみに陥ることもなかったのだけれど、自分も子供が生まれ父親になったこともあって、昔の父はどんなことを考えていたのだろうかと興味が湧いてきたのだった。
そして数か月後にできあがった父の脳メガネを、ぼくは手術でとりつけた。
手術が終わって目が覚めてしばらくすると、父の当時の記憶らしきものがぼんやりと少しずつ浮かびあがってきた。
最初、ぼくは頭の中に浮かんでくるその記憶がまったく理解できなかった。
なぜなら、想像とあまりにかけ離れたものだったからだ。
父の脳に刻まれていた記憶は、小さいころのぼくと楽しく遊んでいた記憶。
そして、温かく自分の成長を見守ってくれていたという記憶。
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