【Nolaノベル】絵の中の人々 1話
この度、Nolaノベルに小説を載せる事にいたしました!
『絵の中の人々』は元はPixivに載せていた作品なのですがNolaノベルに移動する事にしました。
内容を見直したので更に濃厚な内容になっていると思います。より一層、世界観を感じていただけたら幸いです。
そして、今までは屋号のシソイロハをペンネームとして使っていましたが、今回から遥々 岬(はるばる みさき)と名乗る事に致しました。
絵のサインにも度々使っていた名前です。どうぞ宜しくお願いいたします。
作品URL
https://story.nola-novel.com/episode/E-79624396-bed7-49b0-95e7-1dd85cb23873?utm_source=copy&utm_medium=none&utm_campaign=bookshare_both&utm_id=book_share
あらすじ
赤いナンテンの実を採って川に放り投げる。
小さな実が落ちる音は清澄な川の流れによって聞こえなかった。
家の脇を通るこの細流は足首までしか深さが無いが、随分と長い事で有名な川らしい。異国を通って流れくる川の旅路はどんなものだろう。俺が放り投げた赤い実は誰かの元に辿り着くのだろうか。川面はライトを当てたクラックビー玉のようにキラキラと輝き、その光が睫毛の根元にくっついているような気がして目を瞬かせて剥す。風を辿れば空には野ネズミでも探しているのかトンビが円を描く様に飛んでおり、鳥の羽ばたきを見ていると肌寒さを思い出して頬が突っ張った。
・ ・ ・
私たちは悲しんでいる人になんて言って寄り添う事が出来るのでしょうか。
そっとして置く事が良いのか、「がんばれ」と励ます事が良いのか。悲しみから目を背ける事で自衛する相手に「目を反らすな」と現実を知らしめる事が良いのでしょうか。
そのどれもが正しい筈なのに、どんな形の優しさや思いやりがその人に染み込んでいくのかが分からない。だから寄り添うというのは難しいのだと思います。
言葉選びを間違えれば相手を更に傷つけてしまうかもしれない。だから寄り添いたくても一線引いてしまう。悲しみは当事者だけではなく、まわりにも戸惑いと共に感染していくのかなと思います。
私たちは悲しみと共に生きて、そして悲しむ人に寄り添い続けます。
「辛かったらいつでも言ってね」「頼ってね」なんて伝えられたとしても、実際に「つらい」と言える人がどれ程いるのでしょうか。
私自身、辛い時にその言葉を零したとして「じゃあ(自分は)どうして欲しいんだよ」って、相手を困らせてしまうと思うのです。
しかし、勇気を出して悲しい出来事を伝えた時に泣いてくれた事や「大丈夫?」と何度も声を掛けてくれた事はいつまでも覚えています。
悲しい時、指先が凍えるように心は寒い。余裕がない人は「当事者にしか悲しさなんて分からないでしょ」って思うかもしれません。でも、泣いてくれた人は話してくれた人の気持ちを想って涙したのだと思うのです。それに気づけた時、思い出す度に胸が温かくなります。これが「貴方(の言葉)に救われた」というものなのかな、と。
この連載小説は、寄り添いたくても上手に出来ず、「つらい」と零したくても頼れなかった人々の気持ちを主人公の”筆”と共に掬う旅のお話です。
私が作る世界のお話ですから都合が良い事があると思いますが、少しでも胸に抱える重たいものを下ろせる言葉と出会っていただけたら幸いに存じます。