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「第二の家」ブログ|藤沢市の個別指導塾のお話

クラスメイツを読みました【考察から中学受験のコツも学べる】大人の読書感想文

2017.06.01 15:00



昨年度、最も中学受験の問題に使われた題材本ということで、

直木賞受賞作家、森絵都さんの『クラスメイツ』を読みました。



森絵都さん、『カラフル』が大好きだったんですよねー。

『風に舞いあがるビニールシート』も良かった。

他にも沢山いい本があるし、

『みかづき』(これに関しては後日感想を)も読むのが楽しみ。

そんな元々大好きな作家さんの、しかも中学受験にも活かせる本となれば、

読まないわけにはいかない!と、見つけて即購入しました。



それはもう予想通りの素晴らしさ。

この『クラスメイツ』はYA文庫ということで少年少女向けですが、

もちろん大人が読んでもやっぱりさすがの素敵さで、何度も感動してしまいました。

前期・後期と二冊に分かれていますが、それはもう驚くほどスムーズに読めます。



ちょっとあらすじを見てみましょう。偕成社さんHPから抜粋。

日本のYA文学をきりひらいてきた森絵都が、直木賞受賞後はじめて描く中学生群像。中学1年生24人のクラスメイトたち、その1人1人を主人公にした24のストーリーで思春期の1年間を描いた連作短編集。前期・後期の全2巻。 うれしい出会いや、ささいなきっかけの仲違い、初めての恋のときめきや、仲間はずれの不安、自意識過剰の恥ずかしさや、通じあった気持ちのあたたかさ。子どもじゃないけど大人でもない、そんな特別な時間の中にいる中学生たちの1年間。だれもが身にしみるリアルさを、シリアスなのに笑えて、コミカルなのにしみじみとしたユーモアでくるんだ作品集。



色々謎や伏線もからみあって、

どんどん読み進めたいけれど、読み終わってしまうのは嫌な感じ。

そう、それはまるで、本編で描かれる青春のようなものでした。

大人の皆様はぜひそんな懐かしい感覚を、この本で思い出してみて下さいね。

青春真っ只中の生徒達は、「わかるわかる」と共感しながら成長の糧にしましょう。



以下、ネタバレ有の感想です。

今まで同様、読みたくなるような感想を書く腹づもりですが、

ここまでで興味が湧いたら、ぜひ先に読んでみて下さいね。語り合いましょう!

教室に置いておくので、読みたい生徒はお声掛けくださいね。



大人の感想文シリーズ

・映画『はじまりのうた〜BEGIN AGAIN〜』
・映画『美女と野獣』
・小説『よるのばけもの』





クラスの二十四人がひとことずつ自己紹介をした。
クラス委員長やほかの委員を決めた。
新しい教科書と体操服が配られた。
こうして、中学生活がスタートした。
授業がはじまり、給食がはじまり、日に日に教室にいる時間が長くなっていく。
みんなの顔と名前が少しずつ一致しはじめた。
セーラー服のスカーフを一度でむすべるようになった。
ポニーテールのえりあしがすうすうするのに慣れた。
教室の扉が軽くなった。
B組に彩菜を訪ねていく回数がへった。
「A組」を「一組」と言いちがえなくなった。
北小出身の子と原小出身の子の壁がうすれて、ゆるやかにまじりあってきた。
教室にこぼれる笑いの量が増えた。
日ごとに、教室が、千鶴の好きな色に変わっていく。
ひだまりみたいなともだちの色。



第一話『鈍行列車はゆく』からの抜粋です。

一話の主人公の千鶴が中学生になって、

抱える不安や希望やキラキラやドキドキワクワクが、

シンプルで、だけどどこかやさしい文章で、

巧みに表現されています。この部分だけでなくて、全編でね。



「なんでこんな風にリアルに子どもたちの世界を描けるんだろう」



読み終わって最初に出てきた感想がそれでした。

私がいつも塾で出会っている生徒達の多くが中学生で、

彼らと毎日話をしたり聞いたりしているはずなのに、

彼らの不安や希望やキラキラ、ドキドキワクワクを、

私はどれだけ掴めているんだろう、と少しだけ悔しくなりました。

それほど、この本の中には、魅力的な子ども達の世界が広がっていました。



大人から見れば「大したことじゃないよ」と思われる、

だけど子どもたち本人にとっては重く大きい悩みごと、挑戦、壁。

そのせいでモヤモヤして、時に誰かを傷つけて、

悔やんで、迷って、葛藤して、自暴自棄になって、

それでも、精一杯の勇気を振り絞ってそこを乗り越えようとする彼らの、

強さや友情や恋や感動や成長に満ち満ちた実はとびきり素敵な物語たちを、

私ももっと教えてもらって、一緒に喜んだり悩んだりできたらいいな。

生徒達がどんなことに迷って悩んで、どんな風に成長していくのか、

それをハラハラドキドキさせながら教えてくれる、

生徒達の世界を覗けるこの本は、私にとって最高の「参考書」になりそうです。



そして同時に、中学受験で多く設問される理由もなんとなくわかりました。

この本は大人たちにとっては「中学生の参考書」ですが、

多くの小学生たちにとっては、とびきりわかりやすい未来図になる。

そう、「中学生の教科書」になるのです。



「クラスに馴染めなかったらどうしよう」

「今までの自分から変わりたいんだけどどうすればいい」

「友達と喧嘩しちゃった」「なんだか胸がドキドキするけどこれなに」

「自分の居場所が見つからない」「自分のキャラがわからない」

「挫折した」「失敗した」「フラれた」「ひどいこと言っちゃった」

「合唱コンでなかなかクラスがまとまらない」「部活の先輩とうまくいかない」

「事件の犯人扱いされた」「何をやってもうまくいかない」「あの子に勝てない」

「身長伸びない」「言えないことがある」「なんだか恥ずかしい」「親がうるさい」「みんな嫌い」

でもね、大丈夫。



あなたが思い悩み苦しむその「何か」は、

もちろんあなた一人だけのものだけれど、

もしかしたらいつか誰かが抱えたものと似ているかもしれない。

いつだかそれを持った人が、どんな風にそれと向き合ったのか、

それを知るだけでさ、あなたの心が少し軽くなるかも。

もしかしたら、解決の糸口が見つかるかも。

この本は、そんな素晴らしい自分の救い方も教えてくれるのです。



どんな大人にもある、青春時代の思い出。

いいことも、悪いことも。

忘れていたとっても嬉しいことやガッツポーズや成功体験はもちろん、

友達を傷つけたこと、心に残る小さな傷、何かから逃げた日のこと、叶わなかった恋、

それに思い出すと超恥ずかしくなるような大失敗もそう。

一つ新しい扉を開ける時に持っていたあの緊張感や、怯えや、ドキドキ。

あの頃の私は、毎日何を考えていたんだろう、何をしていたんだろう、

もう思い出せないかもしれないけれど、その一日一日、一秒一秒は、今も私の中にあって、

頭の中のどこか片隅に置き去りにされて宝物みたいに輝いていなかったとしても、

ちゃんと、今を生きる糧になってくれている。はず。



忘れかけていたそんなことを思い出せる、

夏の午後の気持ちいい風のような、出会えて嬉しい素敵な本でした。



本日もHOMEにお越しいただき誠にありがとうございます。

そこに書いてあるのは大人の階段ののぼり方。