夫婦間にズレのない治療をするために…③
京野アートクリニック高輪 京野 廣一理事長のお話
2017年1月発行『i-wish ママになりたい 男性不妊』
男性の妊娠に対する意識は?
男性の妊娠や不妊に対する意識は、以前よりも高くなってきています。
実際に、クリニックで毎月開催しているセミナーには夫婦で来られる方が大半で、男性の意識の高まりを肌で感じています。
もちろん、女性に比べれば知識差はありますが、良い傾向だと思います。
今でこそ、小中学校の性教育で男女を分けることはなくなってきましたが、「性病」と「避妊」、「望まない妊娠をしないために」が主な内容です。本当に大切な「妊娠すること」や「卵子が年齢を重ねること」「閉経があること」などについては、いまだ教育が足りていないのです。
ですから、大人になって「女性は年齢を重ねると妊娠が難しくなる」と言われても、女性は驚きますし、男性はピンとこないですし、結局、よくわからないのでしょう。
さまざまなメディアが取り上げることで、男性にも不妊原因があること、また検査などから、自分に不妊原因があるかもしれないと自覚する方が多くなってきました。
他のクリニックで無精子症といわれ、夫婦で治療を受けたいからと当院に来られる方も多くいらっしゃいます。また、初診から夫婦でこられ、男性も早い段階で検査を受けることも珍しくありません。
最近では、スマホで精液検査ができるようになってきました。先日も、この精液検査のアプリを使って「精子がみつからなかった」という男性が検査に訪れました。
検査結果は正常範囲でしたから、きっと方法を間違ったのでしょう。ただ、自分の精子に興味を持って調べていくことは、妊娠への知識を深めていく良いきっかけになると思います。
男性は精液検査が怖い?
男性は、精液検査の結果が出るまでは、とてもドキドキしています。問題がないとわかると、「よかった!」という表情をします。
精子の問題は、男性にとっては大問題なのですね。
ですから、奥さまには、ご主人を立ててとお話することもありますが、これまでの性教育からしても、妊娠や出産について、男性は多くの情報を持っていません。よくわからないけれど、自分の精子に問題があって妊娠できないのかもしれない。それが事実だったら? と思うと、オドオドしてしまうのでしょう。
一般的に、男性は論理的な思考を好むとされているため、「わからないことはやらない」ということも少なくありません。一方で、きちんと知識を身に着けることでとても積極的に取り組む方も多くいらっしゃいます。
男性の繊細な心理を考えながらも、夫婦での不妊治療がうまく進むきっかけになるように願いながら、毎月のセミナーをしています。
不妊治療は女性の負担が大きいもの
現実的なところ、不妊治療を受ける主体は女性で、その負担もとても大きいのです。男性に不妊原因がなくても、早い段階から不妊治療に積極的になってくれるようにご主人たちへのサポートも必要だと考えています。
夫婦のどちらに不妊原因があっても、そしてご主人に不妊原因があっても、私たちは、同じクリニック内で診療し、治療を進めることができるように、婦人科も泌尿器科も、それぞれ専門医が対応しています。
ご夫婦にとって、安心でストレスの少ない治療を受けていただけるよう十分な体制を整えています。