170430(sun)BRADIO
❝自由❞を求める群れ
開場直前に沸く人波をすり抜け、列の最後尾を目指す。すれ違うカップル、友達、親子、そしてアフロヘア―! ソウルフルでファンクネス。言っときゃOK!ノッときゃOK! そんなパーティー感満載のロックバンドBRADIOが今年1月に送り出したニューアルバム『FREEDOM』は、人間の黒さをえぐり出すような意外性をも持ち合わせた1枚だった。暗闇から手を伸ばしたものだけが、真の自由へと飛び出せる。それを求めるFPP(※)たちが、口を大きく開けた今宵のショーフロアに続々と飲み込まれていく。
天井のミラーボールに高まる期待感。そして新米FPPの私にもうれしい❝ファンキーパーティーの心得❞なる影アナも流れ準備万端となる。メンバーが現れると総立ちのFPPで目の前が覆われ、あわてて席を立ちメンバーの姿を探す。スタート直後からレインボーのライトがマブシイ! 有希さん(Dr)、亮輔さん(Ba)、聡一さん(Gt)がそれぞれのカラースポットで照らされ、挨拶代わりのアプローチプレイ。そして貴秋さん(Vo)は左右中央の❝お立ち台❞から広い会場を見渡すと<彼女ハリケーン>の第一声を放った。2月のインストアイベントであんなに大きかったアフロヘアーが、今日のこの距離ではやけに小さく感じる(笑)。だがしかし、デカいソウルはそのままに2階席までガツンと殴り込んできた。なだれ込むように<Flyers>、<HOTELエイリアン>を繰り出し、目覚めたFPPたちが騒ぎ出す。勢いに乗った会場でコーラスはもはやFPPまかせ。まわり出したミラーボールの乱反射と貴秋さんの「ファンキーしてるかぁー!?」の問いに、歓声の応酬がやまない。パーティーの初動で感知したFPP波は、すでに最高到達点を記録しているようだ。
(※)Funky Party People。BRADIOファンの略称。
<Flyers>MV
ハピネスの裏側の感情
ホールワンマンが初めてだというBRADIO。どうしてもやりたかったことが…と話し亮輔さんがパチン!と指をはじくと、ひかえめだが美しい輝きを放つシャンデリアが降りてきた。ここからはFPPがBRADIOの部屋に招かれたという設定で❝ROOM BRADIO❞がスタート。「みなさんのいるところは玄関先ですけどね!」と聡一さんが笑い飛ばすと「なぜ中に入れない!?」とすかさず貴秋さんがツッコミを入れる。室内ではメンバーもいつもよりリラックスしているのか、軽快なテンポの会話でFPPを歓迎する愉快な一面も垣間見れてしまう。
ROOM BRADIOの窓の外はオレンジに染まる夕暮れ。ここではBRADIOのサウンドをしっとり聴かせるラインナップでFPPをもてなした。<You Make Me Feel Brand New>に始まり、先ほどまで大胆にグイグイと引っ張り上げた歌声とは裏腹、貴秋さんの繊細な想いと切ない表情に魅了されていく。アルバムの中で最もネガティブな<思い通りにならない世界>。渦巻く余計な思考に飲み込まれそうなことは誰にでもあるだろう。そんな想いに寄り沿い、時の波間で一呼吸を置かせてくれたのが<Ride On Time>のバラードアレンジ。沁み渡るファルセットが癒しと安らぎを与えてくれた。気づけば移りゆく空模様は青白い輝きを放つ夜明け。ささやかな幸福に浸れるかけがえのない一夜となった。
踊らせ上手のショーに身をまかせ
初めてといえば、私はBRADIOのライブを箱で体感するのは初めてである。驚いたのは見どころの豊富さ。バックバンドの面々にもそれはしっかり継がれており、ムーディーにコーラスソロをキメるエボニー&イマニー。そして東名阪会場のみメンバーに加わったホーンセクション隊(BRADIO3バカトリオと呼ばれていた)は、演奏のない場面でも楽器片手に踊り、ノリ、ステージに音色以外の華も添える活躍ぶり。
もちろんBRADIOメンバーのソロも素晴らしかった。土台として支えるのが常のベースだが、ルーパーを駆使したベースのみの楽曲づくりを展開し、見事に主役へと躍り出た亮輔さん。ライブ序盤で「俺のことももっと見ろ!」と吠えた聡一さんは待ってました!とばかりに手拍子を煽り、不敵な笑みでギターをかき鳴らす。有希さんのドラムソロは、光とリズムの攻防を見ているようだった。ステージ上で一心不乱に打ち込む彼を、無数のライトが狙い撃つ。それをはね返すようにスピードを増すスティック捌き。Winner有希! 激戦を制した黄色い戦士に、賞賛の拍手が浴びせられた。
特に聡一さんのギターソロ後はロック臭がとてつもなく、後に続いた<KAMISAMA>、<Get Money>のギリギリの場面であがく人間模様が暑苦しいほどに伝わってきた。歌い終えた貴秋さんも「BRADIOがいまこの世でいちばんかっこいいと思っちゃった!」とはしゃぐほど。その貴秋さんはというと、メンバーが作りだした雰囲気をまるまると背負い、おなじみの<Golden Liar>を豪快に歌い上げる。そして<Revolution>では、ステージ上での着替え途中で消えたと見せかけ、客席から登場するマジックをやってのけた。ただ歌っているだけでも十分であるのに、大なり小なりのエンターテイメントを詰め込んでくるあたりが憎らしいほどに格好がよいのだ。
<Revolution>MV
❝自由❞へはばたくファンクネス
ラストダンスのナンバーはアルバムリード曲の<Back To The Funk>。80’sディスコミュージックのド真ン中を、2017年に生で感じて踊れちゃう。ただ手を振り上げたり、手拍子をするだけとは違うノリ方がクセになりそうだ。その世代の音楽に育てられたであろうFPPが多いのも頷ける。恥ずかしがるFPPのために、貴秋さんが何度も振り付けをレクチャー。ぎこちない動きが徐々に揃うその様子がまさにファンキー! なるほど。たしかに困った時に便利な言葉だ(笑)。
ファンキーという言葉には大っぴらなイメージがあるが、実は一種の照れ隠しとも言える気がする。勢いに任せたファンクネスを武器とする面々が、ストレートに感謝と愛情を伝える<All I Need Is You>がアンコールの1曲目。このギャップがまた心をくすぐる。<Colors>ではFPPのコーラスも相まって実にピュアな空間が描かれた。できれば悪に染まらず、潔く広い空を目指したいと思うのが人間なのだろう。ショーの間、幾度となく拳を突き上げて黒を叫んだのは、己の自由の為。真白に照らされた会場であるべき自由を手にしたFPPたちの姿は本当に清々しいものだった。
騒ぎ散らかした音の情景をとてもキレイにまとめあげたショーだったなぁ…と思いきや、ここで熱烈なFPP(!?)がステージ上のメンバーに花束を渡そうとするハプニング。警備員の制止を振り切り、花束と同時に大げさなくらい大きな赤いボタンも。騒ぐFPPに促され、訝しげにピコン!とボタンを押す貴秋さん。すると頭上のくす玉が割れ、そこには❝DVD発売決定!❞の文字が。そして同様の寸劇の末にメジャーデビュー決定の発表もなされた。やはり、ラストのラストまでFPPを沸かせる演出を怠らないこの精神に感服である。
終演間もなくして2つの大きなニュースとライブの感動でざわつく会場。流れてきたBGMは自身の1曲<Tonight!Tonight!Tonight!~決戦は今夜~>だった。冒頭の歌詞【夢を見ていた大人達に翼が生えてきた―】と聴こえた瞬間にゾクッと鳥肌が立った。より大きなステージへ、より多くのFPPたちと共に。出会って1年ほどだが、彼らが音楽でさらなるFREEDOMを掴むために飛び立つ場面に立ち会えたことは、本当に貴重な体験であった。
<Back To The Funk>MV
■ライブタイトル『BRADIO FREEDOM tour 2017』
■日時:2017年4月30日(日)17:30~
■会場:東京・中野サンプラザ
■SET LIST
1.彼女ハリケーン
2.flyers
3.HOTELエイリアン
4.super wonderful
5.-freedom-
6.Step In Time
7.Overnight Superstar
―亮輔さんベースソロ―
8.蝙蝠
―ROOM BRADIO―
9. You Make Me Feel Brand New
10.思い通りにならない世界
11.Ride On Time
―聡一さんギターソロ―
12.KAMISAMA
13.Get Money
14.ギフト
15.Play Back
―有希さんドラムソロ―
16.Golden Liar
17.Revolution
18.スパイシーマドンナ
19.Back To The Funk
―アンコール―
1. All I Need Is You
2. Colors